前へ目次 次へ 361/489 静かな自由 葵は自分の部屋を整え、 俊介も静かに布団を移した。 たった数メートルの距離。 でも、その距離が“自由”を生む。 葵はひとりでスマホを見る時間が増えた。 画面の光が、部屋の静けさを照らす。 俊介は別室で天井を見つめる。 葵の気配は薄く、 呼吸の音も聞こえない。 「これでよかったんだよな」 そう思おうとして、思えない。 胸の奥が空洞みたいに冷えていく。 ふたりの間に生まれた“余白”。 その余白が、何かを静かに呼び込もうとしていた。