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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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次第に開く距離

その夜、俊介はもう限界に近かった。

寝室の前で立ち止まり、深呼吸をしても、

胸のざわつきは消えない。


扉を開けると、葵はベッドの上でスマホを見ていた。

柔らかい光が、葵の横顔を照らしている。


「……葵」


呼んだ声が、少し震えた。


「なに?」


「……別で寝ようか。しばらく」


葵の手が止まる。

驚いたように目を瞬かせて、

でも責めるような表情は一切なかった。


「……うん。そのほうが、いいかもね」


その返事が、俊介の胸に深く沈む。

壊れる音はしない。

でも、壊れたことだけが分かる。


優しさで決まった距離ほど、残酷なものはない。


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