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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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眠れない夜

布団に入る前、俊介はいつものように寝室の前で立ち止まった。

ドアノブに触れた指先が、ほんの少しだけ震える。

深呼吸をひとつ。

覚悟を決めるみたいに、そっと扉を開けた。


葵はもう寝ている。

背中を向けて、静かな寝息だけが部屋に落ちていた。


俊介はゆっくり布団に入る。

触れないように、でも離れすぎないように。

その“ちょうどいい距離”を探すのが、最近の習慣になっていた。


触れたい。

抱きしめたい。

好きだから。


でも触れたら、きっと分かってしまう。

葵の心が、もうここにはないことを。


だから触れられない。

触れたら壊れる。

触れないと、もっと苦しい。


天井を見つめながら、俊介はゆっくり息を吐いた。

葵の寝息と、自分の呼吸のリズムが合わない。

そのズレが、胸の奥にじわじわと広がっていく。


「……もう、無理かもしれない」


声にならない声が、喉の奥で消えた。


朝は誤魔化せる。

日中は忘れられる。

でも夜だけは、どうしても誤魔化せない。


隣にいるのに、いちばん遠い。

その距離が、静かに限界へ近づいていた。

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