前へ目次 次へ 355/515 スマホの光 食卓の上で、葵のスマホが光った。 通知音は鳴らない。 でも、画面の明かりだけで胸がざわつく。 葵は自然に画面を伏せた。 その仕草が、俺の心を静かに締めつける。 誰からだろう。 聞けない。 聞いたら壊れる。 でも、頭のどこかで“あの店の誰か”が浮かぶ。 「……またかよ」 心の中でつぶやいて、すぐに自己嫌悪が押し寄せる。 葵を疑いたいわけじゃない。 疑うような人じゃない。 それでも、影は勝手に形を持ってしまう。 俺の心の醜さだけが、静かに積もっていく。