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夜のハグが消えていく
数日後。
帰宅が遅くなるのが当たり前になり、葵は先に寝ていることが増えた。
俺はそっと布団に入り、葵の背中に触れないように距離を取る。
触れたい。
抱きしめたい。
好きだから。
でも触れたら、また冷たさに気づいてしまう。
だから触れない。
触れられない。
気づけば、夜のハグは自然に消えていた。
葵は気づかない。
俺だけが、その消失の痛みに気づいている。
「好きなのに……なんで、こんなことになってるんだろう」
静かな夜の中で、俺の“好き”だけが、まだそこに残っていた。




