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儀式の刃
1日2回のハグは、俺が言い出した。
触れれば距離が縮まると思っていた。
好きだから触れたかった。
葵を感じたかった。
でも今は、触れるたびに絶望する。
葵の身体は軽くて、温度が薄くて、呼吸が浅い。
抱きしめても、心がここにいない。
だから俺は、
シャワーを長く浴び、
歯磨きを長くし、
布団に入るタイミングをずらす。
ハグはする。
でも、一瞬だけ。
触れた瞬間、胸の奥が沈んでいく。
「好きなのに……触れるのがこんなに怖いなんて」
儀式は、いつの間にか俺を傷つける刃になっていた。




