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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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小さな影が膨らむ

「ちょっと買い物行ってくるね」

夜、葵が軽く言った。


俊介は止めない。

止められない。

止めたら、何かが壊れそうで。


10分、20分、30分……

時計の針がやけに大きく聞こえる。


帰ってきた葵は、少し息が上がっていた。

袋の中身は少ない。


「遅かったね」

言いかけて、飲み込む。


——聞いたら壊れる。


葵は「ごめんね」とだけ言って、

スマホを持ってソファに座る。


俊介は横目で見ながら、

胸の奥にまたひとつ影が落ちるのを感じた。


小さな違和感が積み重なっていく。

気のせいだと思いたいのに、

気のせいにできない。

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