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視界が揺れる
仕事中、ふとした瞬間に葵の顔が浮かぶ。
ハグの温度。
あの軽さ。
そして、伏せられたスマホ。
大和の残像がまだ消えない。
スタッフの「リールの最後の笑顔かわいくない?」が頭に残っている。
「疲れてる?」
同僚に声をかけられ、俊介は笑ってごまかす。
——俺、こんなに不安になるタイプじゃなかった。
自分で自分に驚く。
自負と不安が胸の中でぶつかり合う。
疑いたくない。
疑う夫にはなりたくない。
葵を信じたい。
でも、葵の小さな仕草ひとつで、
視界が揺れてしまう。
大和の影が、
俊介の心のどこかに居座っていた。




