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リールの断片
料理を待っていると、スタッフの声が耳に入った。
「大和さんのリール見ました?
あの最後の笑顔、かわいくない?」
「わかる!あれ反則だよね」
俊介の箸が止まる。
……リール?
胸がざわつく。
一瞬だけ浮かぶ。
葵も……見てるのか?
すぐに否定する。
「いや、そんなわけない」
でも、胸の奥で別の声が囁く。
……最近、葵、スマホよく見てるよな。
浮かんだ影が、また胸に落ちる。
確認すればいい。
インスタを開けばいい。
大和の名前を検索すればいい。
でも——
そんなことしたら、終わる。
俊介はスマホを取り出さない。
見ないことで、まだ壊れていないことにしている。
帰り道、ふと思う。
葵のこと、俺はどれだけ知ってるんだろう。




