338/489
初対面
扉が開いた瞬間——
店の空気が、ふわりと変わった。
落ち着いた声。
歩き方に無駄がない。
スタッフが自然に笑顔になる。
店がその人の空気に馴染むように、柔らかく揺れた。
「あ、大和さん。お疲れさまです。本社帰りですか?」
スタッフの声に、俊介は反射的にそちらを見る。
45歳くらいだろうか。
落ち着いた雰囲気。
優しそうな笑顔。
“仕事帰りにふらっと寄っただけ”の自然体。
俊介は思った。
「……普通の人だ」
でも同時に、胸がきゅっと痛む。
“葵が見ていたかもしれない大人の男性”が、
今、目の前にいる。
大和はスタッフと軽く会話し、
「いや、ちょっと寄っただけだよ」と笑った。
その笑顔が、なぜか胸に刺さった。
俊介は、目をそらした。




