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三度目の灯り
店に入った瞬間、いつもと違う空気を感じた。
ざわつきというより、どこかそわそわした雰囲気。
スタッフが俊介を見るなり、笑顔で言う。
「今日、大和さん来るんですよ。東京の本社に行ってたみたいで」
胸が跳ねた。
分かっていたはずなのに、心が追いつかない。
料理を頼んでも、味がよく分からない。
箸を持つ手が落ち着かず、店内をさりげなく見渡してしまう。
「来るなら早く来てくれ…」
そんな自分に気づいて、苦笑した。
別に会いたいわけじゃない。
ただ、確かめたいだけ。
それだけのはずなのに、胸の奥がざわつき続ける。
扉のほうをちらりと見る。
まだ来ない。
その“まだ”が、妙に長く感じた。




