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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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あの日の葵

気づけば、また思い返していた。


季節に合わない薄手の上着。

財布も持たずに飛び出した背中。

早足で、呼吸が浅くて、どこか切羽詰まっていた。


「葵?」


声をかけた瞬間、肩がびくっと跳ねた。

あの反応が、胸に刺さったまま抜けない。


視線の先には、居酒屋「(あかり)」の看板。

でも葵は、看板を見た途端に引き返した。


あれは何だったんだろう。

ただの偶然?

それとも——。


「……あんな葵、見たことない」


胸の奥に、小さな影が落ちる。

気のせいだと思いたいのに、

その影は、じわじわと形を持ち始めていた。

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