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確かめる灯りの色
仕事帰り、気づいたら足が勝手に向かっていた。
葵が向かっていた場所へ。
「ただの居酒屋だろ。見れば安心できる」
そう自分に言い聞かせながら、
灯の前に立つと、胸がきゅっと縮んだ。
扉を開けると、温かい照明。
落ち着いた空気。
丁寧な接客。
どこか懐かしさを感じる店内。
「……葵、こんな店で働いてたんだ」
大学時代の葵を想像してしまう。
誰と働いて、どんな時間を過ごしていたのか。
知らない葵が、ここにいた気がした。
でも——
この訪問を葵に言う気にはなれなかった。
追い詰めたくない。
自分の勘違いかもしれない。
だから黙っておく。
それが正しいと思った。




