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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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葵の夜

俊介が寝室に入ったあと、

葵はひとりでリビングに残った。


ハグのときの強張りが、まだ身体に残っている。

触れられるたびに、心が逃げ場を失っていく。


スマホを開くと、店長のリールが浮かんだ。

再生はしない。

でも、声が頭の中でよみがえる。


「嫁さんに猛特訓してもらったっていう」


指輪は外していた。

理由は分からない。

でも、あの声には“奥さんを想っていた時間”が残っていた。


胸に手を当てる。


(店長の心には奥さんがいる。

 だったら……私が出ていっちゃいけない)


そう思うのに、涙がにじむ。

止めたいのに止められない揺れが、

静かに、深く、広がっていった。

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