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何かあるなら…話して
夜。
食器を片づけていると、俊介が静かに口を開いた。
「葵……何かあるなら、話してほしい」
責める声じゃない。
ただ、不安を押し殺したような優しい響き。
その優しさが、逆に胸を締めつける。
「別に、何も……」
言いながら、目を合わせられなかった。
俊介は少しだけ息を吐く。
「この前さ、居酒屋「灯」の前にいたよな。
あの店……なんかあるの?」
心臓が跳ねた。
「昔、バイトしてただけだよ」
俊介の表情がわずかに揺れた。
「そっか……」
納得したような、していないような声。
沈黙が落ちる。
その沈黙が、今までで一番重かった。




