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しんどさの痛感
俊介がそっと手を伸ばしてきた。
触れられる直前、身体がわずかに強張る。
俊介は気づかない。
気づかないまま、優しく手を包んでくる。
その優しさが、つらい。
「……うん。やってみよう」
そう答えた瞬間、胸の奥がぎゅっと痛んだ。
嘘をついたわけじゃない。
ただ、気持ちが追いついていないだけ。
帰り道、胸に手を当てる。
“どうして私は、こんなに苦しいんだろう”
ふと、大和の声がよみがえる。
「嫁さんに猛特訓してもらったっていう」
指輪は外していた。
でも、心にはまだ奥さんがいる。
そう思った瞬間、またブレーキがかかった。
> 「だったら……私が出ていっちゃいけない」
19歳のときと同じ場所で、
また立ち止まってしまう自分がいた。




