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響かない提案
沈黙を破ったのは俊介だった。
「最近さ……俺ら、すれ違ってるよな」
明るく言おうとしているのに、声が少し震えている。
「夫婦ってさ、長くいるとマンネリとか、中だるみとかあるじゃん。
だから……ちょっと新婚気分に戻ってみない?」
俊介は笑ってみせる。
でも、その目はどこか必死だった。
“違う、そうじゃない”
喉まで出かかった言葉を、飲み込む。
俊介は続けた。
「朝と夜、一回ずつハグしようよ。
俺たち、もう一回ちゃんと向き合いたいんだ」
優しい。
優しいのに、胸が苦しくなる。
俊介は“灯に何かある”と気づいている。
だからこそ、焦っている。
その焦りが、余計に痛かった。




