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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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二色のだし巻き

休憩室で、なんとなくスマホを開いた。

何も考えたくなくて、ただ指を動かしていた。


ふと、画面が止まる。

大和のリールだった。


店のカウンターに立つ大和。

落ち着いた照明の下で、仕事の声で話し始める。


「今日は、東京の居酒屋「(あかり)」とのコラボメニューを一つご紹介します」


その声を聞いた瞬間、胸の奥がふっと軽くなった。


大和がカメラに寄せたのは、二色のだし巻き。

片方はしっかりとした黄色。

もう片方は、淡いクリーム色。


「こっちが東京の「(あかり)」の味。出汁をしっかり効かせた、昔ながらのだし巻きです」


大和の指が黄色い方を示す。


「で、こちらが北海道バターを少しだけ入れた、北海道の「(あかり)」の味。バターを入れると、こんなふうに色が柔らかくなるんですよ」


淡い色のだし巻きに、箸がそっと触れる。


「見た目は控えめですけど、香りがすごく良くて。僕、これ作るの好きなんです」


その言い方が、15年前の記憶を静かに揺らした。


(あ……)


会いに行くつもりなんてない。

連絡する気もない。

行動は絶対にしない。


でも——

大和の“仕事の声”が、沈んでいた心をそっと持ち上げてしまう。


俊介の優しさには反応できなかったのに、

大和の声には、自然に呼吸ができる。


その軽さが、

今の私には救いだった。


そして同時に、

いちばん怖かった。

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