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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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優しさの空回り

葵の心が自分に向いていない——

その確信に近い感覚が胸に沈んでから、俊介の優しさは“形”を失い始めた。


帰り道、コンビニで葵の好きな飲み物を買おうとする。

でも、どれを選べばいいのか分からない。

前は迷わなかったのに。

結果、3種類全部買ってしまう。


夕食も、葵の好きなメニューを思い出そうとするが、

「これで合ってる?」という不安が先に立つ。

葵が「今日は簡単でいいよ」と言っても、

「いや、作るよ」と押し切ってしまう。


(どうしたら……正解なんだ)


優しくしたいわけじゃない。

繋ぎ止めたいわけでもない。

ただ、どう扱えばいいのか分からない。

葵の心がどこにあるのか分からない。


葵はその優しさに、少しだけ居心地の悪さを覚える。

俊介はそれに気づかず、さらに優しくしようとする。


優しさが、迷走していく。

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