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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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崩れ落ちてしまう瞬間

寝室のドアが少し開いていて、

そこから漏れる柔らかな光が廊下に落ちていた。


俊介がそっと覗くと、

葵がベッドの上でスマホを見ていた。

画面の光が頬を照らし、

その瞬間——葵はふっと微笑んだ。


その笑顔は、

俊介が最近見ていない表情だった。


優しくて、柔らかくて、

どこか懐かしい光を帯びている。


でも、それは俊介に向けられたものではない。


胸の奥が、静かに崩れ落ちる。


(……ああ、もう……俺じゃないんだ)


葵は踏み出さない。

そんなことは分かっている。

でも——

心はもう、自分のところにはない。


俊介はドアを閉めた。

音を立てないように。

気づかれないように。


廊下の暗闇の中で、

ひとり、立ち尽くした。

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