121 ☆祝書籍発売記念更新3☆
「メイア、話がある。こっちへ来てくれ」
「……はい」
ゾディアット副官に呼ばれたわ。
私は念のため、イヤーカフにそっと触れて魔力を通し、副官と一緒に別の部屋へと移った。
「ゾディアット副官、話っていうのは……」
私は不安そうな表情を作り、副官に聞いてみた。
「先ほど、王太子殿下から注意を受けたんだ。『騎士としての品格・規律を守るように』と。何があったか詳しく話してほしい」
私は先ほどの出来事をゾディアット副官に話して聞かせた。彼は眉間に寄った皺を伸ばすようにしながら「そうか」とだけ口にした。
「あの、ゾディアット副官。私はどうなるのでしょうか?」
「……私から移動願を出しておくが、許可が下りるまでの間、君はここの所属だ。正直言うとだな、退団するか、他の団へ移動の許可が下りるまで君は実家に帰った方がいいと思っている」
「なぜですか? 私は何も悪いことなんてしていないんですよっ!?」
「君が黙っていたのは良かったんだが、リューム伯爵に助けられたのはまずかった。トリスタン団長の沽券に関わってくるから詳しくは言えないが、団長は王太子殿下からの注意を受けた。そのため、君はここでトリスタン団長の庇護下から外れることになる。つまりだな、君はこの団にとって好きにしてもいい存在となった」
「好きにしても、いい……? よくわかりません」
「この第四騎士団はだな、貴族と平民の混合団だ。彼らを纏めるにはそれなりに資金や物が必要になる」
資金や物……?
それはどこからだろうか?
ディーキン子爵家から出ている?
その辺りをもっと詳しく聞かないといけないわね。
私が不思議そうな顔をすると、彼はふうと一息ついて理解しろとばかりに口を開いた。
「つまりだな……。単刀直入に言うと、君は、女だ。団長の庇護下を外れるということは、下手をすれば娼館で見つかるかもしれないし、王都の街外れで見つかるかもしれない」
「えっ。それっておかしいですっ! 絶対変です! 他の団も同じなのですか!? なんで私が。私は何も悪いことなんてしていないのにっ」
私は反発するけれど、ゾディアット副官は相変わらず渋い顔をしている。
「このような話はどこの団でも多少はある」
「なぜ、王宮の寮ではなく、実家に帰った方がいいのですか?」
「安全ではないからだ」
どういうこと? 安全じゃないって。
女子寮は男子寮とは違って防犯面を強化した造りになっているはずなのに。
女子寮の中に仲間がいるということなの?
「トリスタン団長自ら手引きしているのですか?」
「いや、そうではないが、黙認はしている」
言質は取った。この話はきっとヘンドリックさん辺りが書き取ってくれているだろう。
声を聞き取って自動で書き留めるか、声を保存するような魔道具があればいいのだけれど、まだそういったものは開発されていない。
今はこうして使い勝手の悪いイヤーカフで声を聞き取ってもらうしかできないのが残念だわ。
「……わかりました。実家に帰れるかどうか聞いてみます」
「ああ、そうした方がいい。私としては退団した方がいいと思っている」
「理由を聞きたいです」
「外聞が悪いからな。どこの団でもそうしている」
「……」
「退団するか?」
私は困っていると、イヤーカフを通してジェニース団長から『このまま第四騎士団で調査を続けるんだ』と声が聞こえてきた。
やっぱりそうなるわよね!
「嫌です! せっかくここまで頑張って王宮騎士団になったのに!私、頑張りますからっ! 絶対辞めませんっ!」
「本当に辞めないのか? 後悔しても知らないぞ。私は忠告したからな」
ゾディアット副官は言い訳のようにそう言った。
私はどういった嫌がらせを受けることになるのだろうか。
「さて、あまりここで長居をしても意味がない。詰め所に戻る」
「はい」
私は詰め所に戻った。どうやら団長の部屋には行かなくていいらしい。
ホッとはしたものの、団員たちの視線が痛い。
私は視線を無視するように一人訓練場へと向かった。後ろから手袋を投げつけられたが、そんなことは問題ない。
『ロア、一旦魔力を切り、夜に報告をしてくれ。こちらも女子寮や訓練場に人を配置しておく』
『わかりました。このまま任務を遂行します』
私は呟きながら一人訓練場の端で訓練を始めた。
他の団の騎士は真面目に練習に取り組んでいる人も多いけれど、第四騎士団の騎士は数人程度だ。これで本当にいいのだろうか。
王宮の訓練終了の鐘が鳴り、私は一人片付けに入る。
「メイア、これも洗って全部片づけておけよ!」
「わかりました」
小道具や手袋、打ち合い用の人形などがバラバラに投げ捨てられている。どうしてこうも品がないのかしら。
トリスタン団長が殿下から注意をうけたときの彼らの反応を見る限り、トリスタン団長に深い信頼を寄せているとは思えないのよね。
私は黙々と散乱した小物を拾い、片付けを始めた。すると一人の騎士が近づいてきて後ろから私を蹴ってきた。
「おい、平民。お前もゴミなんじゃないか? ああ、娼婦なんだっけか。俺がお前の相手をしてやるよ」
「……」
「無視か。チッ」
黙って片付けている私に呆れたらしく、騎士はもう一度私を蹴ってから訓練場を出て行った。
「訓練場の片付けが終わりました。では失礼します」
私は詰め所に戻り、報告をした後、寮へと戻った。
さすがに今日一日でこんなに疲弊するとは思わなかったわ。
ぐったりしてベッドに座ってパンを齧り始めると、ふわりと一つの箱が送られてきた。
何だろう?
誰から来たのかわからない。
用心のため結界を張ろうとしたとき、ジェニース団長から伝言魔法が飛んできた。
『ロア、箱を送った。念のために持っておけ』
私は箱を開けてみると、小さな香水瓶が一つ入っていた。
『団長、これは?』
『特殊魔法薬だ。これを嗅げば数時間は夢現の状態になり、幻覚を見ることで抵抗できなくなる。近距離でしか使えないが、効果は抜群だ』
『わかりました』
……はあ。
疲れたし、このまま寝たいけれど、報告書が待っている。絶対今度の休暇は多く取ろう。目をしぱしぱさせながら報告書を書いていく。
明日からどうなるのかな。
皆様のおかげで書籍も発売できました!本当にありがとうございます!(´;ω;`)
このご時世、何があるかわかりません。あとは打ち切りにならないためにも…応援よろしくお願いします(*´ω`*)
私も皆様の応援に応えられるよう1日でも多く頑張って書き続けていきます!




