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「おはようございます! 今日からここ第四師団に配属されましたメイアと言います! よろしくお願いします!」
私の声で騎士たちの会話は止まり、視線が集まった。
笑顔の人、嘲笑するような笑みを浮かべている人、無関心な人など瞬時に脳内でメモを取る。
一番奥にいた男の人が私を手招きして呼んだので、私は彼の前まで行く。
「ああ、君が連絡のあった新人か。私はここ第四師団の副官ゾディアット・ジェルツという。ゾディアット副官と呼んでくれ」
「ゾディアット副官、よろしくお願いします」
「可愛いね、君。いくつ? 婚約者はいないのか?」
一人の騎士が声をかけてきた。
「可愛いだなんてっ! 嬉しいです! 私は十六歳です。婚約者がいたら騎士なんてなっていませんよ!」
「ここなら選び放題だな」
「そうですねっ! 皆さんよろしくお願いします」
周囲を見渡して様子を見るけれど、第四騎士団には女性団員はいないようだ。
「メイア君、君の先輩を紹介する前に団長へ挨拶にいくぞ」
「はい!」
私は元気よく敬礼し、ゾディアット副官に付いて団長室に向かう。
ここの大部屋の隣に団長室があり、ディーキン団長は普段この部屋にいるらしい。
「トリスタン団長、失礼します」
「失礼します!」
「ゾディアット、どうした?」
「本日配属の新人騎士の挨拶に来ました。メイア、前へ」
「はい! 私、メイアと言います。本日から第四騎士団へお試し配属ということで配属されました。これからよろしくお願いします!」
私はトリスタン・ディーキン団長の顔を見て息を呑んだ。
彼は、ファルスと似ていたからだ。もしかして彼がファルスのお父さんなの? ファルスに聞いてみたいけれど、任務のことを漏らすわけにはいかない。
トリスタン・ディーキン団長は子爵子息だと資料には載っていた。ということは、彼は独身だよね。
私の父と年齢が近いはずだけど、独身というだけあって若く見える。三十代前半だと言われてもおかしくないわね。
「君がメイアか。私はトリスタン・ディーキンだ。よろしく頼む」
彼は私を見ると立ち上がり、手を伸ばし、握手を求めてきた。私は不思議に思いながらも団長と握手をする。
「ふむ。君は今どこに住んでいるんだ?」
「先日から王宮の女子寮に住んでいます。さすがにエルシュ村は遠いですから」
「そうだな。メイア、この第四騎士団は男しかいない。何か言われたら俺に言ってくれ」
「わかりました!」
トリスタン・ディーキン団長は私に優しく微笑んだ。
「ゾディアット、メイアの訓練が終われば声をかけてくれ」
「畏まりました。ではメイア、行こう」
「失礼しました!」
私は部屋を出てゾディアット副官とまた元の大部屋へ戻るとき、副官がぼそりと私に呟いた。
「メイア、君は……」
ゾディアット副官は何かを言いかけたようだが、思い出したように胸ポケットから一つのカフスを取り出した。
「これは……?」
「これは第四騎士団をモチーフにしたカフスだ。ここにいる間は付けるか、胸ポケットに入れておくんだ」
「はいっ!」
私は黒い鷲が描かれたカフスを受け取り、胸ポケットにしまった。
それにしてもゾディアット副官は何を言おうとしていたのかな? 先ほどの団長の行動も気になる。
副官は何かを知っている?
私が考えている間に大部屋へと戻り、副官は私の先輩にあたる騎士を呼んだ。
「カスト・ブリィーツォ、前へ」
副団長がそう言うと、一人の男の人が私の前へと立った。
「ここに慣れるまでの間、彼に聞くといい」
「ブリィーツォ先輩、よろしくお願いします」
「カストでいい。メイア、よろしくな」
カストと名乗ったこの人は長身で身体も大きいが、とても穏やかそうな人柄のようだ。
「メイア、では訓練場で訓練を行う」
「はい!」
カスト先輩は第四騎士団内の説明をした後、訓練を始めた。
私は新人ということもあって基礎訓練から始まった。
訓練場内を走っていると、他の騎士から「女のくせに」「デートしよう」「一緒に食事に行こう」「騎士を辞めて俺の嫁になれ」なんて様々な言葉がかけられる。
私は男の職場なんてこんなものだと思って曖昧な笑いをしてごまかしている。
女性騎士って大変なのね。
「メイア、お疲れ様。あとは片付けだ。今日は俺も手伝うからよく覚えておいてくれ」
どうやら騎士たちが訓練で使ったあとの片付けや訓練場の清掃があるようだ。
「わかりました」
カスト先輩は丁寧に仕事を教えてくれる。こういう先輩は素敵だなって思うわ。
私は訓練場の掃除を終えて詰め所に戻ろうとしていると、一人の騎士が私の前に立った。
「おい、新人。お前って平民なんだろう? 俺の相手をしろよ」
「先輩の相手ですか?」
何ことかと思ったけれど、剣の手合わせってことね。
私は剣に手をかけたが、騎士はクスクスと笑い始めた。
「そうじゃねえよ。なんだ、お子様か。大人の俺が夜の訓練をしてやるって言っているんだ」
「……結構です」
「おい、せっかくの新人なんだ。やめろ」
「チッ。カスト、煩いな」
カスト先輩が私と騎士の間に入り、彼を止めてくれる。
私の中ではカスト先輩の評価はうなぎのぼりよ!
それに比べて他の騎士は本当に酷い。訓練も適当だし。叩き直したい気分だわ。初日からこれは先が思いやられるわね。
私はカスト先輩と詰め所に戻り、ゾディアット副団長に話をすると、そのまま団長室に行って報告するように言われた。
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