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私はリディアさんに連れられ、訓練場へとやってきた。
「私たち魔力を持つ人間は何もしていなければ常に体から魔力が出ているの。マーロアは体内にしまう訓練をいつもしていたのでしょう?」
「はい」
「私やイェレは他の人より魔力が多いから、常に魔力が全身を厚く覆っている状態なのよね。魔力が厚く覆っているということは他の人よりも魔力攻撃を受けても防御する能力が高いの」
「攻撃魔法や精神魔法を含めた耐性が高いのですね」
「そうね。そして魔力はこの目にも影響するの」
「なるほど。魔力のフィルターを通して他人を見ることで相手の魔力量や形を見分けているのですね」
「そうなの。で、わかるわね?」
「体内の魔力を放出し、それを目に集める、ということですか?」
「正解よ。簡単、簡単。じゃ、頑張ってちょうだい」
リディアさんの言葉に私は遠い目になった。
「いやいやいや、リディアさん!? そんなに簡単にできるようなものじゃないですよ」
「これをあげるから。見えるようになったら教えてちょうだい」
リディアさんは有無を言わせない笑顔でどこからか小さな白い箱を取り出し、足元に置いて訓練場を出て行った。
何の変哲もないただの白い箱、に見える。絶対何もないわけがないよね。
「まずは王族が纏っているほどの魔力を放出し続ける練習よね」
目元に集めることが出来れば魔力の密度は濃くなり、体外に放出する量は減らせる。
すぐにできるようになるとは思えないけれど、やるしかないわよね。
大量の魔力を放出し続けながらに目に集める。これがなかなかに難しい。魔力を出すのはいいけれど、目に留まらせるのができない。
「イェレ先輩たちが見ている世界って一体どんな世界なのだろう。まさか魔力で服が透けて見える!? なんてことはないわよね?」
一人で冗談を言いながら訓練を始めた。
「今日はそろそろお終いにしよう。あの白い箱はどうすればいいんだろう?」
そう思っていると、箱は吸い付くように私の足にくっ付いてきた。
「ヒエッ! な、なにっ!?」
訓練をしている時、なんとなく警戒して白い箱を触ることはなかった。
箱が動いたことに驚いたけれど、ただくっ付いているだけのようだ。
どういう仕かけなの!?
不思議に思いながら箱を足に付けたまま、零師団の部屋に戻ると、箱はスッとリディアさんの机の上に戻っていく。不思議な箱よね。
私が箱を見ていると、ジェニース団長が声をかけてきた。
「ロア、ちょうどいいところに戻ってきた」
「ジェニース団長、仕事ですか?」
「ああ、今回のロアの任務は第四騎士団の内部調査だ」
「騎士団内の調査?」
「騎士団の内部で不正が行われていないかを確認するだけですよ。数日から二週間程度のものですから」
私は団長の横にいたヘンドリックさんから指示書と説明を受ける。
どうやら今回の任務は新人騎士という設定で行うようだ。不正はもちろん騎士たちはちゃんと訓練をしているか、言葉遣い、他者への態度などこと細かくチェック項目がある。
「どうしても内部の査定では甘くなってしまうからな。たまに我々が調査に入ることになっているんだ」
「承知しました」
期間はほとんどが一週間程度らしいけれど、不正が行われている可能性が疑われる場合は期間が延びるようだ。
第四騎士団は確か団長がトリスタン・ディーキン子爵子息。副団長はゾディアット・ジェルツ男爵子息。
第四騎士団は平民と貴族が混在しているため、平民として私は入り込むことになるようだ。
「明日から王宮騎士団女子寮の一〇三号室に住むように手配してある」
「では今から一旦家に戻って最低限の物を持って寮に入ればいいんですね」
「そうだね。ああ、ロア。君のその剣、とっても目立つから剣も平民の初心者の剣にしておくのを忘れずにね」
「はい」
私はすぐに帰宅し、準備をすることになった。
もちろん父には任務の内容は話せないけれど、任務の準備をしてしばらく別の場所に滞在することを伝える。
「では、お父様。行ってまいります」
「ああ、気を付けるんだぞ」
邸に戻った時には日が落ちかけていたけれど、邸を出ると辺りはすっかり暗くなっていた。このまま暗い中で移動し、身元をわからなくするためにあえてこの時間からの任務なのよね。
私は荷物を抱えて王宮騎士団の女子寮に入り、寮母さんから簡単な説明を受けて部屋に荷物を置いた。
「ようやく休める。今日は疲れたわ」
私は治癒魔法を自分にかけた後、ベッドに倒れ込むように眠りについた。
翌朝、王宮の朝を知らせる鐘がなり、私は目を覚ます。
「……もう朝か」
私は眠気眼で騎士服を着て準備をする。
えっと、今回はメイアというエルシュ村出身の女の子だっけ。
容姿は薄い青い髪、青緑に近い瞳の色で身長は私と変わらないくらいね。顔は、くるりと二重の大きな目にぷっくりとした唇。とっても可愛いわ。これなら騎士団でも上手くやっていけるんじゃないかな。
私はそう考えながらパンを齧り、準備も完了!
初心者用の剣を腰に携えて第四騎士団の詰め所がある場所へと向かった。
第四騎士団は五十三名からなる大所帯のため、詰め所は大きな部屋だ。
初めて大勢の騎士団員がいる詰め所に入ったけれど、訓練前ということもあり、騎士たちは仲のいいもの同士で雑談をしていた。だが、少し気になったのは彼らの立ち位置だ。
貴族と思われる騎士たちは椅子に座り、ゆったりと過ごしているが、平民と思われる騎士たちは部屋の隅で立ち話をしている。他の団も同じような感じなのだろうか。少し疑問に思いながらも新人なので声を張り上げて挨拶をする。
「おはようございます! 今日からここ第四師団に配属されましたメイアと言います! よろしくお願いします!」
4月17日「魔力無し判定の令嬢は冒険者を目指します!」発売します!!
発売日まであと10日!みなさまのおかげでここまでくることができました。本当に感謝しかありません。
もっともっと続きを書いていきたいです…(´;ω;`)




