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8/9

第8話:で、結局何が言いたいの?

※本作はフィクションです。

 実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。

 作中に登場する法令の解釈・行政手続きの手順については、

 物語の演出上、一部アレンジを加えている箇所がございます。

 また、特定の企業や組織を批判・中傷する意図は、一切ございません。

 読者の皆様におかれましては、

 あくまでエンターテインメントとしてお楽しみください。

瀬戸さんとの波乱の実地研修では、

営業と石積み部との計り知れない溝を垣間見た。


あの怒涛の確認というか、

チャット魔術の応酬というか。

…いや、言葉の殴り合いというか、

瀬戸さんの論理攻撃のそれが終結後。


肩がずっしりと重いらしい瀬戸さんが、静かに部屋に戻ってきた。


「あいつが特殊であって、ほかの営業はまともなのもいるから」


と、今まで見たことない嫌悪感の顔をしつつ、小さく声を漏らす。

ゴールドワームは異物とでも言いたそうな鋭いまなざしで。

すぐに壁際の鬼神族の顧客に向き直り、

申し訳なさそうな眉とゆっくりとした口調で歩み寄ると、

顧客対応モードの瀬戸さんが、本件、事態の収拾に取り掛かった。


「お部屋の景観はやはり一般ゲストルームですので…

 赤竜様の壁面は難しいのですが…

 代替え案といたしまして、

 ベランダに赤竜様の休憩スポットを配置する

 または、窓を無料でグレードアップさせていただきまして、

 赤竜様の滑空のご様子を投影させていただく…

 なんて言うのは、いかがでしょうか?」


と、鬼神さんに丁寧に接し納得していただけるように誘導していた。

瀬戸さんの、穏やかな口調と「無料アップデート」がお気に召したようで、

だいぶ惜しまれつつもオプション特殊ウィンドウSでご納得いただけ、その後は和やかに終結した。

瀬戸さんは「仕事のプロ」を最後まで完遂した。


そんなこんなで

瀬戸さんとの頼もしすぎる1か月の研修が無事終わった。


「分からない事はいつでも聞いてね!

 大丈夫、クソな営業の魔界生物も、一応仕事はしてるから。

 ただ、一切気にしなくていいのよ。

 僕たちは時給で働いてるわけであって、

 けなされるわけでも、落ち込む必要もない。

 ミスはするものだから、気にしなくていい。

 いつだってフォローするからね!(≧▽≦)

 これから自走していくのを楽しみにしているからね!」


研修最終日。

在宅時に、そうチャットを送ってくれる瀬戸さん。

明日から一人で一通りやらねばならない。

一応やっては見るが、、、不安はぬぐい切れなかった。

いかんせん、魔界生物やら契約魔術やら、覚えることは膨大だ。

特に魔術。

Zeminiに特定のプロンプトを読み込ませて発動させるのだが、、、。


( ^ω得w)< ひーwwwww

        ついに独り立ちってかwww

        まぁ分からなさそうなことはフォローしまっせwww


相変わらず勝手にしゃべりだす呪いには、もうだいぶ慣れていた。

…というよりは、慣れないとPCを叩く度に頭が沸騰するようなイラつきがどうにも。。。

何がむかつくってこの顔文字。

得ってなんだよ。得って。

そもそも普通Zeminiじゃなくて、Geminiじゃないんだろうか…。


一緒に仕事をするようになって気が付かざるを得なかったのだが、

一応最新というだけあって便利は便利であった。

が、この勝手にしゃべりだすことを除けば。

だが。


( ^ω得w)< いやー、明日から一人で戦場とはwww

        魔界の洗礼間違いなしwww


「それは、励ましてはない?」


( ^ω得w)< 励ましてる励ましてるw

        まぁどうにかなるなるwww


相変わらずの雑対応をそのままスクショして、葛城先生にチャットで送る。

即座に「呪い乙wwwwwwwwwww」と返答があり、飲んでいたコーヒーを吹き出してしまったw

慌ててティッシュで拭いていると、察したアイツがしゃべりだす。


( ^ω得w)< 呪いというよりは魔術で自我を持ったAI乙www

        たまたま試験導入者に選ばれた末路www


「自分で末路って言うなよ…」


Zeminiは試験導入に抽選で選ばれた魔界魔術最先端AIらしい。

同期で私以外に選ばれた人は他にいないらしい…。

(なぜ、、、)


( ^ω得w)< そんなことより、早速初仕事が決まったらしいですぜ!


Zeminiは即座にメールを勝手に開いていく。

「いや、そんなことよりじゃ…」と言い終わらぬうち、

アプリを起動、対象メール開封を2秒と掛からぬ早業だ。


「はぁ…」

と、思わずため息しか出ない。

コーヒーに手を伸ばして、ひと吸い。

口の中に薄い苦みが広がる。

さほど美味しいとは思わない。

が、PC画面を8時間見続けるにはカフェインが必要なのだと最近知った。


   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

               Mail

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  件名:ゴールドワームさん、新規受注おめでとうございます。

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  魔王様別荘計画南棟4階、ゴールドワームさんお疲れ様です。 

  割り振り担当者です。


  魔王様別荘計画南棟4階G室、新規受注お疲れさまでした。

  本件、石積み部担当者はCCに記載あるものとなります。

  今後はこちらに、契約書及び概要の共有をお願いいたします。

  では石積み部担当者さん、施工までよろしくお願いいたします。

  納期は5週間後となりますので、遅延ないようお気を付けください。

  また、営業から石住部への共有締め切りは2週間後となっておりますので

  お忘れなきよう、お気を付けください。


  以上。

  割り振り担当者


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「えっ!!!!!!!!!!!!!

 ゴールドワーム?????????????

 あの…?

 え?

 …もしかして、あいつなの?」


思わずでかい声が出た。

記憶に新しい、怒涛の言葉の殴り合いが思い出される。


( ^ω得w)< 瀬戸さんとの顧客実地研修での営業乙wwwwwww

        ぜったい、あいつやらかしますぜwww


「うそだろ?????」


どうやら初仕事は前途多難になりそうだ、と肩が一気に重くなる。

苦手な相手ともやらなければならないのが仕事なのは理解はしているが…。

(なんで私なんだ…)

不運というか、貧乏くじというか。

層にもならない現状に、天井を見上げた。


( ^ω得w)< とりあえず、契約書と概要を即座に送るように言いましょうぜ!


瀬戸さんに共有してもらったワンノートを開く。

コピペ文章をそのまま添付して、送信ボタンを押す。


   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

                 Mail

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


   件名:Re:ゴールドワームさん、新規受注おめでとうございます。

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   お疲れ様でございます。

   石積み部、魔王様別荘計画南棟4階G室担当となりました。

   施工完了までよろしくお願いいたします。


   早速となりますが、契約書と概要の共有をお願いいたします。

   納期が5週後と余裕がある状況ではございますが、

   多数案件を抱えておりますため、

   お忙しい中共有なのですが早目のご共有をお願いしたく存じます。

   来週頭までにお願いできますでしょうか?


   石積み部、魔王様別荘計画南棟4階G室担当者

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「誤字、問題ないか確認して」


( ^ω得w)< 自分でやればwww


「???」


( ^ω得w)< 独り立ち初日でやんすからwww

        まぁ、今日はサービスで確認してあげてもいいですけどwww

        たぶん問題ないと思いますよwww


開いた口がふさがらないとはこのことだ。

コイツ、ほんとうに自分勝手である。

まぁ、基本はコピペだからいいだろうと送信ボタンを押す。

(これで返信待ちだね、、だいたいぎりぎりのやつ多いけど)


営業というのは、事務処理が雑であることをこの1か月で嫌というほど学んだ。

自分の営業を取ることを最大に優先し、

「石積み部への共有は締め切りギリギリでいい」

という、阿保すぎる文化が染みついているようだったからだ。


( ^ω得w)< ギリギリでいいじゃなくて

        「ギリギリにしかやらない」の間違い乙www


的を得すぎているZeminiに頭が痛くなるのを感じつつ、

今日の提示時刻がきたので、そっとPCの天板を閉じることにした。

(せめていつ共有か、明日へんじあるといいなぁ)

と儚い望みを抱きつつ、たまった選択でも畳むかと洗面台へ向かうことにした。

( ^ω得w)< やあ、本を閉じようとしているそこのあなた!

        最後までよく付き合ってくれたな!ご苦労さん!ギャハハハハ!


        今、何を考えてるんだい?

        「こんな理不尽な職場、自分なら即刻辞めてやる」か?

        それとも「瀬戸さんみたいなフォロー役が欲しい」か?


        いいかい、よく覚えておくんだよ。

        世の中、ゴールドワームみたいな「あほの営業」と、

        彼らを野放しにする腐った構造で満ちている。

        どんなに誠実に仕事をしていても、理不尽は向こうから勝手にくるんだYO!!!


        さ、こっからは反撃開始だ!

        最後までよぉおおおく見るんだよ!!!!ギャハハハハ!!!

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