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9/9

9話:魔界の朝と、ふかふかソファ

※本作はフィクションです。

 実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。

 作中に登場する法令の解釈・行政手続きの手順については、

 物語の演出上、一部アレンジを加えている箇所がございます。

 また、特定の企業や組織を批判・中傷する意図は、一切ございません。

 読者の皆様におかれましては、

 あくまでエンターテインメントとしてお楽しみください。

独り立ち初日。

PCの電源を入れ、3分ほど待つとウィイイイイインと悲鳴を上げて画面が光る。

そこからメールアプリを起動すれば、

例のゴールドワームからの返信が昨日20:10に受信していた。


「営業真っ黒じゃん」


受信時間にだいぶ引きつつ、

嫌な予感と共に、思わず顔が引きつる。

開封すれば後回しをするためにいつも使っているのであろうテンプレがあった。

今日は金曜日。

来週に先延ばしされた事実に、工程圧迫の未来がうっすらよぎる。


   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

                  Mail

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


   件名:Re:Re:ゴールドワームさん、新規受注おめでとうございます。

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   石積み部ご担当者様


   お疲れ様です、営業ゴールドワームと申します。

   施工完了までよろしくお願いいたします。


   共有の件承知しました。来週火曜までに共有いたしますのでよろしくお願いいたします。


   営業 ゴールドワーム

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


( ^ω得w)< ギャハハハハ!

        典型的な引き延ばしじゃねーか!www

        やる気ねーな!


「いや、ほんとそうね…

 …営業って、土日も仕事なんじゃないの?」


( ^ω得w)< ギャハハハハ!

        100点満点!大正解だぜぇ!!!

        5日も放置する気だぜ!


「あ、5日?

 契約書ともうすでに作成済みのはずの概要送るだけで?

 それ仕事先延ばしにしてるだけでは…?」


( ^ω得w)< 仕事ができない証拠だぜ!

        ちなみに、このゴールドワームは営業2課長だwww


…頭が痛い。

課長でこれか。

というか、瀬戸さんの言葉を思い出す。

「あいつが特殊であって、ほかの営業はまともなのもいるから」

いや、課長が特殊って…。


だいぶ大きめにため息をつきつつ、

右手をおでこに当て、文字通り頭を抱える。

その時、ピコンッとチャット音が遠慮がちになる。


(葛城)< 今日出社でしょ?

      社食いこー!


私が返信するよりも早く、アイツが2秒で返信した。

最近、同期や瀬戸さんのチャットに関して勝手に返信している。。。

しかも魔術チャットだから、異様に音量がでかい。

瀬戸さんとゴールドワームのやり取りを見て学習したらしい。

(頭に響くんだよなぁ…)


( ^ω得w)< もちろん行くに決まってんだろ、先生!


  (葛城) < うわっ!でたな呪い!


( ^ω得w)< ギャハハハハ!

        呪いだなんて恐悦至極!

        いつものラーメン食べてやるぜ!


「また勝手に返信…

 お前はラーメン食べないじゃん」

頭痛の種が増え続けると、絶望する。

何度アンインストールしようとしたか…。

削除ボタンを毎回押しても、『動作しないクソ仕様』のせいだ。

これが呪いと言わず、他に何と?


( ^ω得w)< 気持ちは、

        ニンニク少なめ、野菜マシマシ、アブラ、カラメwww


 (葛城) < 二郎じゃんwwwww

        どこから学ぶんだよwwwwwww

        じゃ、11時半に食堂でwww


けらけらと笑う先生と、2秒で返信するZemini。

それから、カレンダーの予定表に「先生とランチ」とまた勝手に予定を書き込んでいく。


「はぁ、いいだけどね

 先生とのランチは別にいいのよ

 …いいんだけどね、

 頼むから顧客と営業には勝手に送らないでよ」


( ^ω得w)< ( ^ω^)たぶん、


(たぶんて…)

一応、今まで仕事に直接関与はしていない。

チャチャはすごいけど…。

AIとして、たぶん秘書としての設定がされていると信じたい。

…削除できないので、信じざるを得ない。

というか、…信じるしかないのだが。


そんなこんなで、顧客にメールを返信したり、

午後の顧客への完成披露へのプレゼン資料を作成し終わればちょうど11時20分だった。

予定を確認し、デスクをかたす。

財布とスマホをポッケに突っ込み、3列離れた先生とアイコンタクトを取って席を立った。


(今日はラーメン以外を食べよう)

硬く決意し、先生に手を振ってエレベーター前で合流できるようと歩いていく。


「今日もラーメン?」

「いや、魔界オムライスにします!」


チンッと到着の合図と、人波に押されるように四角い箱に入っていく。

魔界エレベーターは、それ自体が魔物らしく、

中は非常に広々し30人ほどが座れるであろうふかふかのソファ席もある。


「なんでこのエレベーター、デスクより居心地いいんですか?」

「たまに魔王様の視察があるらしくて、

 魔王様が基本歩かなくていいようにできてるらしいわよ」

「忖度…」

「忖度ね」


ふかふかのソファは、どこかの猫型多足のやつを思い出してしまう。

ずっしりと受け止めてくれる背もたれに沈み込み、

しばし休息と思わず目を閉じるのであった。

( ^ω得w)< あんたは明日も「戦場」はだってかい?

        理不尽な営業や腐った上司は、

        あんたが食うか食われるかのエサに過ぎないってこと忘れるんじゃないよ!


        PCの天板を開くその指先に、

        あんた自身の「魔王の意志」を宿すこと!

        泣き言を言ってる暇はない。戦うんだよっ!!!!

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