第5話:ヴァラムからの『死の招待状』
※本作はフィクションです。
実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。
作中に登場する法令の解釈・行政手続きの手順については、
物語の演出上、一部アレンジを加えている箇所がございます。
また、特定の企業や組織を批判・中傷する意図は、一切ございません。
読者の皆様におかれましては、
あくまでエンターテインメントとしてお楽しみください。
昨日支給されたばかりの、
でも誰かが既に使用済みであろう会社PCの天板を開ける。
スタートボタンを押すと、キィインとファンの音が唸り声を上げる。
起動に3分ほどかかる残念仕様の、この無駄時間を待機すると、
ピコンッ
と左画面の下隅に、真っ白な吹出しが現れた。
( ^ω得w)< 「……あ、来たわ。ヴァラムからの『死の招待状』」
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Mail Box
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【件名】研修中における実務対応の件(別荘A棟3階F室)
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お疲れ様でございます、ヴァラムです。
研修お疲れ様です。
早速で申し訳ないのですが、
本日17時までに「別荘A棟3階F室」の壁面デザイン修正を
お願いできますでしょうか?
研修の合間でできる範囲で結構ですので、
隙間時間を見つけてご対応いただければと思います。
「担当が決まったらとりあえずやってみる」が、
我がリ・ビルドの成長スピードであり、
「事象を無駄にせず、価値ある結果を自ら創出せよ。」が
社訓でございます。
なお、実務上の細かい疑問点については、
副リーダーの瀬戸さんに確認してください。
お忙しい中とは思いますが、よろしくお願いいたします。
株式会社リ・ビルド
課長 ヴァラム
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「PCで見直しても、やっぱり研修中に作業しろですね」
「そうね、二日目だってのに」
葛城先生は大きく肩をすくめる。
そのまま自分のスマホを確認すると「あ、っ…」と声を上げたかと思うと、
大きめにため息をついた。
「私にも来てたわ、A棟3階G室」
「えっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「あいつら、研修中からこき使うきね」
「い、今までの部署でもそうだったんですか…?」
「いやここまで酷くなかったわよ。
…この部署、相当人が足りないのよ。
今回の私たちの同期、60人いるのが証拠ね」
周りを見渡せば、昨日入ったばかりのちょっと顔見知りの人達がまばらに社食やお弁当を食べていた。
魔界一の大企業というだけあって、休憩スペース兼社食室は広々とし、ソファや高めのカウンター席などおしゃれカフェのような雰囲気だ。
窓に見える暗黒の空に到底似合わない。
そんな中、時折スマホを見て顔を青ざめPCを取り出して考え込む姿がちらほら見える。
左奥の赤いこじんまりとしたソファの個室スペースに座る彼は、そうそうに昼食を終え副リーダーらしき人に電話をかけているようだった。
「あの、今日中に修正しろってメールが来ておりまして…
はい、はい、あ、そうなんですね。
では担当の配下様にご連絡して、その旨了承いただけるようにお話してみます」
そう言うと、勢いよくPCを閉め足早に休憩室を出て行った。
「魔界なのに、日本企業サラリーマンみたいなことしてる…」
「そりゃそうよ。ほとんど変わんないわよ」
「ここって魔界一の大企業なんですよね?」
「そうよ、魔界一のブラック企業」
「怖…、あ、ってかなんでそんなブラック企業で葛城先生は働くんですか?」
「そんなの時給よ!!!1910円よ!?
ついでに、派遣っていう責任の所在不明にしやすい立場と
週4在宅ワークよ!!代えがたい価値よ!!!」
「魔界ってもっとファンタジーだと思ってた…」
「何言ってるのよ、まったく。
さっ、私たちもサクッとお昼食べるわよ!
でも休憩はしっかり1時間とるわよ!!!!!!」
「えっ、今日中なんじゃ…」
「いいのよ、そんなもん。
私たちは休憩込みでこの時給でやってんだから。
時給以上に働かなくていいのよ!」
(達観してるなぁ)
そういうと、先生はぽいとスマホを机の隅に滑らせ、
先ほど社食で頼んだらしいラーメンを啜るべく割り箸を割った。
私も気にはなるが、まぁ先生がそう言うんだしいいのだろうと
PCの天板を閉じ、昨日の残りカレー弁当を嗜むことにした。
【軍師Zenimiより戦況報告】
( ^ω得w)<いやぁ、ついに「魔界一のブラック企業」の本性が露わになったわね!
ヴァラムの「事象を自ら捉え、価値ある結果を自ら創出せよ。」って呪文。
一見すると意識高い系のキラキラ社訓だけど、
中身はただの「責任転嫁の免罪符」だったな!www
同期60人が青ざめて走り回る中、
葛城先生の「時給以上に働かなくていいのよ!」という一言……。
これこそが、魔界という地獄を生き抜くための「唯一の聖典」かもしれないぜ。
ヴァラムよ、震えて待っていろ。
今、カレー弁当を完食して「時給分の労働(と、それ以上の皮肉)」を準備中だぞ!w
さあ、次のエピソードでは、どんな「価値ある結果」を叩きつけてやるんだ!?
執筆、最高に楽しんでくれよな!!




