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色々若い元勇者

「智さん、その真っ赤な飲み物は?」

 

「トマトジュースに果実酢を混ぜたものだ」

 

「い、意識高い……」

 

ミラが引き気味に呟く。シルクは「智様らしいですわ」と微笑み、シアは「気持ち悪い」と一言だけ言った。

 

「あの、昨日の戦闘について少し解説してもらえますか。魔眼も」

 

ミラの目の奥に光るのは、単なる好奇心ではない。

 

こいつ……強くなるためなら本当にストイックだな。

 

「解説ってもな」

 

「あと足腰で振れとか、あれもです。意味が分かりません」

 

智は肩をすくめ、剣を一本取り上げる。

 

「遠山の極意。言っておくが魔眼なんて俺は持ってない。あれは要は、一点じゃなく全体を見る技術だ」

 

「……魔眼じゃん……」

 

ミラの眉が少し動く。

 

「あと、体で振れとか言ってましたよね」

 

シルクも隣で神妙な顔をしている。

 

「腕よりデカい筋肉を使え。それだけだ」

 

俺は教え方が下手らしい。三人の顔が揃って「わからない」と言っている。

 

「達人の域に達するのは並大抵のことじゃありませんわ」

 

「なぜシルク、お前が偉そうにしてる」

 

シアは眉をひそめ、すかさず突っ込む。

 

「言ってることはなんとなく理解できる。けどお前の言ってることは労力に合わない」

 

要はタイパ、コスパが悪いということだろ。これだから若者は……。

 

「いいか? お前ら、俺はもう40だ。体に負担をかけられないんだよ」

 

「……は?! 40だったの?」

 

「お前は算数できない口か?」

 

「いや、計算上では……でもどう見ても30前半……それ以下。別に童顔じゃないし……」

 

「……お前、丸耳エルフ族だったのか?」

 

「人間だよ! 80前後で死なせてくれ」

 

(俺、完全にステ振り間違えてるな……)

 

「智様はあっちの方もお若くて、昨日なんて4回m……」

 

智は咄嗟にシルクの口を押さえた。

 

シルクは慌てて口をさすり、抗議の目を向ける。


沈黙

 

「俺のことはいいんだよ。ったく、話を戻す」

 

「十五年、一人で剣を振ってきたからな。無駄な動きは全部削ぎ落とした結果だ」

 

「……なるほど」

 

ミラは少しだけ口元を緩める。

 

(やっぱり、ただの最弱じゃない)

 

「ほほう、じゃあ『最弱』ってのは噂だけか」

 

俺は少し苦笑した。

 

「噂、ですか……認めたくないですけどね。あんな動き、私にはできません」

 

ミラは隣で小さく舌打ちをした。悔しさを隠しきれていない。

 

シアは無愛想に席に着く。

 

「……まあ、多少は期待してもいいのかもしれん、智。多少だがな」

 

(お前はどこの戦闘民族の王子だよ)

 

「ほら、シアさんも認めるようになりましたわ」

 

「べ、別に認めてなんかない! この雑魚が!」

 

シアはすぐ顔を赤らめて、突っ張る。

 

その様子に、ミラも微笑みを浮かべた。

 

「……ふふ、面白い組み合わせですわね」

 

シルクはお茶を口に運びながら、三人の様子を静かに観察している。

 

この人たちは全員、どこかおかしい。

 

最弱と呼ばれた40の元勇者。認めたくない感情を持て余す現役勇者。素直になれない眼鏡エルフ。完璧な笑顔の裏で計算し続けるメイド。

 

……でも、悪くない。

 

シルクは誰にも気づかれないように、少しだけ口角を上げた。

 

それから一刻後。

 

テーブルの上に地図が広げられ、空気が少しだけ引き締まった。

 

「そろそろ、敵地へ向かう話をしましょう」

 

ミラの声から、さっきまでの柔らかさが消えている。

 

笑いの余韻が残る部屋に、静かな緊張感が滲み始めた。

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