第三十八話 「ポーションの効果」
初めてのドワーフとの出会い。
そして、相棒のハンドガンが進化したことを喜んだシグルド。
そのまま帰路に着くシグルドだったが
「約束があるので、チャゲをお借りします」
リオーネの別邸へと足を運んだ。そこは、医療従事者たちが日夜、技術を磨く場所でもある。
「遅くなって悪いね、ウォット。——あれ? リンリンも来てたのか? もう起きて大丈夫なの?」
ダンジョンからの帰国後——
魔力量を増やす特訓と、レベルキャップ解放のために、極級魔法の熟練度を上げる必要があったリンリン。
元々魔力量が極めて低い体質のため、せっかく覚えた極級魔法だが、1度使えば数日寝込むほどだったので、実践向きではないとなり、1000年間使用してこなかったのが仇となったらしい。
そこで、あれから定期的に
極級魔法を使い
マナ切れを起こし
数日間寝込む、という
鬼畜のルーティンをしているリンリン。
「ええ。また数日後によろしくお願いします」
背負って帰るのはシグルドの役目。
弟子だからか、何故かハンスには頼み辛いらしい。
だけど、その道中ビィク戦での会話を話してくれた。
——————
『お前に聞きたい事がある。ダースの中に屍使いはいる?』
『屍使い? あぁ、ボンのお気に入りか。ダースにはいないよ。いないけど、そいつを倒したいならダースを相手にしないといけないね。私怨かい? フッ、遊ばれたんだね。ボンは悪趣味だから』
——————
それ以上の情報は分からなかったそうだが
強さに貪欲になる理由としては
充分だ
だけど、マナ中毒にだけは気を付けて欲しいけどね。
「リンリンさんも今回の話が気になってるようで、お越しになられました。何かダンジョンで気になることが?」
シグルドは、魔獣の異様な人への執着、共喰い、奇行種について、医療従事者の観点からの意見も聞きたいとウォットを尋ねたのだ。
「——そしてこれが、研究のために預かった、奇行種リーンレパードの魔石だ」
シグルドは、通常のリーンレパードと、奇行種、二つの魔石を並べる。
カルロスが倒した後、奇行種になったリーンレパードに共喰いされたため、この通常のリーンレパードの魔石は、新たに入手したものだ。
「かなり大きさに違いがありますね。なにより、色が濃い」
「そう。だけど、共喰いで進化を繰り返したリーンスパイダーとは違う。リーンレパードは双頭に倍化した後、人を食らっても更なる進化をしなかった」
「そうですね。あの奇行種は異常でした」
「そうなんですね。うーん。確かにおかしいですね。通常、人の死体を食べた魔獣は進化をしますからね。では、観点を変えましょうか」
「——ん?」
「ポーションは、人だけじゃなく、魔獣や聖獣にも効果があった。しかし、動物には効かない。これ、マナが原因かなーと」
「マナ? ——そうかッ!! だからマナの無い動物には効果がないのか!!」
「えぇ。今回魔力も神聖力も燃料はマナだと教えて頂き、理屈が分かりました」
——そうか。神聖力を使う聖獣にもポーションの効果がある。
だからこそ、逆に魔力とは関係ないと思い、悩んでしまっていた。
そうか。マナに効果をもたらすなら——
「——だから、急にポーションが効かなくなる人が現れるのか!?」
「えぇ。それがおそらく正解でしょう。体内のマナに働きかけるポーション。つまり、マナ残量が不足し、ポーションの効果を発揮できなかったから、お亡くなりになられた。そして——その枯渇したマナ残量の遺体を食べても」
「進化は、出来ない……」
そういう事か……全てが繋がったぞ……
そうか……つまり——
「青の国での遺体の胸の穴……あれは——」
「えぇ。おそらく、マナを溜め込む為の臓器を持っていかれたのでしょうね」
——臓器を知ってる——?
解剖が禁忌とされるこの世界で、ウォットは臓器を知ってるんだな。
まぁ、ウォットの養父のオルタナが外科医療の専門家だったんだ。書物でも見たのか。
——あっ、そうか。よく考えたら、狩猟で狩ってきた動物の解体は普通に行われているんだ。
臓器くらい知っていて当然か。
そういえば、ナディに赤い光が降ってきた時にも、胸を抑えて痛がるナディにリンリンは、心臓が痛いのか聞いていたもんな。
俺の中で、前世の知識とこの世界の人たちの知識のズレが、変に、知らないだろうって考えを押し付けてしまってる部分がありそうだ。
それにしても、マナを溜め込む為の臓器か
確かに——
前世のラノベ知識でしかないけど、魔臓? とかって臓器があるから、魔力を貯められるとかって設定はよく目にした。
それなら、魔獣にもそういった臓器があるのかもしれないな。
「でも、なら、なんで、青刈りなんだ? 水属性には何か特別な効果があるのか……?」
「それはなんとも。ただ、今回の発見は大きな一歩なのは確かですよ!!」
「そう、ですね」
シグルドは、伏し目がちに返事を返すリンリンを見つめる。
リンリンにとっては余計に混乱するだろうな……。
青刈りについては、逆に疑問が強まったからな。
「そうだな。ポーションの効果を発揮させるためには、マナ残量が関係してると分かっただけでも、かなりデカい」
——————
——次の日の明け方。
いつものリオーネ城には似つかわしくない、緊迫した雰囲気に目を覚ましたシグルド。
——な、何事だッ!?やけに騒がしいぞ!?
「ハンス、どうしたんだ?」
気になったシグルドは、ベルを鳴らし護衛執事のハンスを呼んだ。
「おはようございます。昨晩はよくお眠りになられましたか?今朝はかなりお早いお目覚めですね」
いつも冷静なハンスだが、珍しく言い淀んでいる。
——なんだ?嫌な予感しかしない。
「いいから、何があったか答えてくれ」
「ッ……、……失礼ながら、落ち着いてお聞き下さいませ。……帝都が、花の国が、一晩にして陥落いたしました。帝国城は壊滅、現在帝都内の生存者は確認出来ておりません」
——ッッッ!!?
——なッッッ……なんだ……って?
「皇帝陛下は、エイシャリアは?!カルロはどうなったんだ!?生きているのか!?」
「……生存者は、誰一人……確認出来ておりません」
——……!?
……生存者が確認出来ていないのなら、目撃者も当然いない。
それはつまり——
襲撃されたのか、事故なのかさえ……
まったく分かっていないという事、か……
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