第三十五話 「カルロスの苦悩」
《カルロス視点》
ひょんな事から寄り道をし、温泉街へと訪れた一向。
男女に分かれ、脱衣所で服を脱ぐシグルドたち。
「そう言えば、裸の付き合いなんて初めてだよな!」
「確かに。風呂に浸かれるのはありがたいな」
どんどん服を脱いでいくシグルドに、カルロスは、自身の身体と見比べる。
シグって改めて見たら、めちゃくちゃ筋肉あるよな。
肩幅も、胸板も、腕や脚にも、筋肉が付いてて太い。
よく考えたら、俺……
こんなヒョロ腕で、身長だって全然伸びないし
目線だって、シグの胸元くらいにしかないしな。
なんでこんなに身長も、筋肉も男らしくなれないんだ。
そう、悩んでいると、下着を下ろしたシグルドに驚くカルロス。
——ッッッ!?
「お、大人じゃねーか!シグ!いつからだよ!お前!大人じゃねーか!」
シグルドは、とっくに服を脱いでいたカルロスと見比べる。
「いや、成長期なんて個人差があって当然だろ?」
スタスタと脱衣所を後にするシグルドの背中を、悔しそうに見つめるカルロス。
「な、なんで、こうも違うんだよ……」
身体を洗ったあと、風呂に浸かる二人。
「あぁ〜」
互いに声にもならない声が漏れ、疲れが癒えていくのを実感する。
「でも、その腕で双剣を使いこなしてるのは、凄いと思うけどな。何より、スピード重視のカルロは、重い筋肉は極力少なくても良いんじゃないのか?」
「いや、俺はシグみたいに男らしくなりたいんだよ! 鍛えててもちっとも筋肉が付かないし」
シグルドは、カルロスの筋肉を見る。
「うーん。カルロは筋肉が細いだけで、ちゃんと鍛えられてるぞ? スレンダーってだけで。あぁ、剣を振う時に、腕じゃなくて主に広背筋や僧帽筋を使ってるんだな。肩甲骨周りにも程よい筋肉もあるし。腹斜筋や腹筋や背筋もが鍛えられてるから、攻撃時のブレもないのか。臀部や太腿、ふくらはぎも鍛えられてるな。だから速度もあれだけ速い。うんうん、良い筋肉だよ」
「——お、お前、筋肉について、かなり詳しいんだな」
だから、こんなに良い身体してやがるのかよ。
「まぁ、趣味だからな。俺たちは成長期なんだ、いずれカルロも勝手に成長するよ」
「お、俺もいずれ、シグみたいな、大っきな身体になれるんだな?」
「俺もまだまだ伸びるからな。さすがに大人程まだ成長はしてないし。今の俺くらいには絶対伸びるだろ。もしかしたら、大人になった俺より背が高いかもだぜ? 楽しみに待ってろよ」
「……分かった」
ぶくぶくと、湯船に顔を半分沈め、まだ納得のいかないカルロスへと、話題を変えるシグルド。
「そう言えば、残りの指輪ってシャルク皇子にちゃんと渡してるのかな?」
「ああ、ちゃんと指輪付けてたぜ? ステータスは見てないけど」
「まぁ、な。さすがにステータス見せてくれ、なんてカルロでも言いにくいよな」
星のカケラの最後の1つは、エイシャリアの兄であるシャルクに。
同じチームとして闘う訳じゃないにしろ、成長期の今しか効果のない指輪。
カルロスの双子の妹、ローサ嬢は戦闘訓練を受けていないらしい。
それなら、とシグルドは快くエイシャリアに渡したのだ。
それを思い出し、カルロスは物思いに耽る。
——————
——風呂を出てしばらくすると、女性陣が歩いて来た。
「お、やっと来たみたいだな」
何やら話し声が聞こえるので、カルロスは耳は澄ます。
——ハッ
俺としたことが失念していた!
ここは風呂だってのに、なんで女湯に行った二人のことが頭から抜けてたんだよ!!
——くそ……
まだだ……まだ……会話が残ってるぞ!
俺は耳が良いからな!
かなり遠くの会話でも、聞き逃しはしない!
きっと今なら、情報だけでも手に入るはずッ!!
「エイシャリアってほんと、綺麗な身体だよね!スレンダーで羨ましいよ」
「——なッッッ、ティナこそ、羨ましいわ……その、胸が……」
——ビンゴッッッ!!!
会話が聞こえたカルロスは、鼻の下が伸び、下卑た顔へと変化する。
さぁ……もっとだッ!
もっと、俺を楽しませてくれッッッ!!!
「——はッッッ、ダメよ、ティナ!カルロがいる!」
「えー?まだこんなに遠いよ?さすがに聞こえない——」
ティナが言い切るより先に、遠巻きながらも、カルロスの表情を見逃さないエイシャリアが、駆け出した。
「カルローーーーーッッッ!!!」
——ッッッ!!!
その鬼の形相を見たカルロスは、一瞬で表情を凍り付かせ、シグルドへと助けを求める。
「いや、何か分からないけど、取り敢えずお前が悪そう」
シグルドに肩を掴まれ、逃げることの出来ないカルロスは、走り抜けるエイシャリアのビンタを食らったのだった。
——————
——帰国後
会合の準備をするカルロス。
「お薬になります」
いつもの薬を服用し、一気に飲み干した。
「あ!あ!——うん、ちょっと高くなった気がする」
コルセットを着用し、ドレスアップをする。
指まで隠れる様に、手袋を忘れない。
準備は万端だ。
——ちょうどそこに、ノックの音が聞こえた。
「ローサ嬢、待ち切れず、お迎えに上がりました」
「まぁ、シャルク皇子、お会いしたかったですわ」
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