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【1万PV感謝】双極の花紋〜転生しても、君を必ず護ってみせるから〜  作者: 赤嶺 利空
第四章 「仲間編」

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第三十三話 「ランクと報酬」

 無事、帰還したシグルドたち。


 麻痺で動けないアシュリーを背負うリンリンが、ギルドで事の顛末を伝えた。


「——ッッッ!? まさか、水槍王が……」


 口元を手で覆い、驚愕する受付嬢は、直ちに、ギルド長ガガントに報告し、アシュリーは医務室へと運ばれた。


 シグルドたちへの事情聴取も含まれるため、アシュリー以外の全員が応接室へと移動した。


「これが、聖獣を操っていた、針か?」


 カルロスがガガントに手渡したのは、細長く一直線に伸びた黒い針だった。


 これがウルを操ってた針か。


 でも、なんでだろ?


 見覚えがあるんだが——


 針をジッと見つめるシグルドは、あることに気が付いた。


「これ、針みたいに真っ直ぐ硬いけど、髪、じゃないか?」


 この世界だと、黒髪は珍しいから馴染みが薄いだろうけど、ロングの黒髪なんて俺は前世で散々見て来たからな!


 特に澄の髪はコシがあって、よく指に刺さって痛かったのを思い出す。


「髪……か。まだ断言は出来んが、調べてみよう。だが、つまり、花紋の仕業だと言いたいんだな」


 顕微鏡とかがあればなぁ。キューティクルで髪だってすぐ分かるのに。


 まぁ、髪を刺すことで、どうやって操っていたのかは全く分からないけどな。


 それに、DNA鑑定が出来れば、すぐに特定も出来るけど、こればっかりはな。


「もしかしたら、またダースの仕業かもしれないよね」


「ああ、ダースであるビィクが連れていた時点で、可能性はかなり高いだろうな」


「それにしても、まさかダースが現れるとはな。しかも仕留めてくるとはな。……うむ。朗報でしかない話なのだが……まさか剣豪王が……。倒した挙句、姿を消した……か。それでは、敵か味方の判断の付けようがない」


「ええ。帝国騎士団副団長である以上、皇女であるエイシャリア様の護衛放棄だけでも重罪の為、放っておいても帝国が動くでしょう。ギルド側は報告だけに留めておいた方が良さそうだけど、判断はお任せするわ」


 犬猿の仲であるギルドと帝国。あまり問題視した判断は控えた方が良い。


 ——そう、リンリンは告げた。


「ええ。白銀騎士団の話は、もちろん帝国で処理するわ。騒動の上にこの失態。落ち度はこちらにあるもの。ギルド側が気にすることではないわ」


「ああ。今回の件は俺からもきっちり報告させて貰う」


 副団長としての職務放棄、更には危険人物として、ラーハルトは帝国で重い処分を取られるだろうな。


 ただ——


 姿を見えなく出来るラーハルトを、見つけられれば、だが。


「そう、だな。本当に貴女にはなんとお礼を言えば良いか。帝級の貴女がいなかったらと思うと……」


 皇女にもしものことがあれば……いや、要人揃いのこのパーティだ。


 1人でも欠けていればギルドが傾きかねない。


 一瞬で、背筋がヒヤリとする思いをするガガント。


「いえ、私1人では負けていたわ。今回は1人でも欠けていれば危うかったでしょう」


「ほう。舞踏帝がそこまでの評価とはな。では、試験官として、彼らのランクは?」


 事情聴取の後、話を静かに聞いていたシグルドだったが、突然のランクの評価の話になり、互いに目配せをし合う。


 まぁ、リーンの単独撃破が出来たのはカルロだけだし、チームとしてもリーンの単体撃破が精一杯の評価だったからな。


 アシュリーにも、Cランクと告げられていたし。


「そうね。個人全員に対し、Bランクを。但し、チームとしてもBランクまでのクエストが上限かしらね」


 ——え?


「ほう? 水槍王の報告では、Cランクだとあったが、ダースと聖獣との戦いで評価が上がったと?」


「まぁ、不足要素はかなりあるのは事実ね。ただ、それは準備に関して。個人のポテンシャルというなら妥当な判断だと思うわ」


「おおー! ありがとうございます! リンリンさん!」


 口火を切ったカルロスの後に続き、口々に喜びを讃えあう一行。


「ただ、以前お話した準備不足に対しては、徹底的に指導するのでお忘れなく」


 ニコリと冷ややかな笑みを浮かべるリンリンに、喜びはスンッ、と一瞬で消えた。


「では、彼らにはBランクの称号を与えよう。本来チームとしてなら、1つ上のランクに行ける。だが、それには制限が付いたんだ。慢心せず、励むようにな」


 その言葉を受け、深く頷く一行。


「では、お話が終わった所でアツモリソウの納品クエストの受注の手続きとクリア報酬のお話を」


 話の区切りを伺いながら、ずっと待機していた受付嬢が、話を切り出した。


「——クリア報酬?? 俺たち、今ギルド登録が済んだ所なんだけど??」


 リンリンへと疑問を投げかけるシグルド。


「特例らしいですよ。それだけマジックバックの需要に対して供給が追いついていないんですよ。たしか、5年待ちです」


「「「「——えッッッッッッ!???」」」」


 ——嘘だろッッッ!?


 そんなに待たされたんじゃ……


 ……下手したら


 俺は死んでるじゃないか………


 あまりのシグルドの落胆に、リンリンがニコリと笑って告げる。


「報酬は、マジックバックの優先権らしいですよ」


「ええ。大量のアツモリソウを納品してくれたお礼なので、優先権というより、マジックバック自体が報酬ですね。お礼を言いたいので直接伺って欲しいと仰せです」


——————


 ——という事で、マジックバック屋にやって来た一行。


 超人気店と聞いていたが、あまりの賑わいに驚愕していたのだ。


「うわー。完全受注生産だろ? しかも5年待ちの。なのに、なんだこの行列は?」


「大方、おこぼれ狙いなんじゃないかしら。まぁ、利便性を考えれば分からなくはないわね」


 先頭を歩くカルロスと、エイシャリア。


 そこにシグルドと、ティナが続く。


「俺は『便利な袋』と書かれた看板が気になる」


 なんて、分かりやすい名前だ!


 一目でマジックバックってことが分かるのが良い!!


 シグルドが興奮していると、ティナが笑って答えてくれた。


「ふふ、コレットさんがマジックバックをそう呼んでたよ。でもやっぱり、名前は流行らなかったね」


「ティナは会ったことがあるんだったわね。何? センスがないの?」


「センスっていうか、機能重視な人、かな?」


「ああ、確かにな。こんな店の名前付けるくらいだ。うん。なんか、分かった気がするな」


「な、なんだよみんな! 分かりやすくて良いじゃないか!」


「ああ……確かシグルドは、茶毛の馬にチャゲと名付けていたわね」


「覚えてくれてたのか! 良い名前だろ? 大好きなんだ! チャゲ」


「ああ、うん。良い馬だよな」


「ふふッ、シグは変わらないね」


 ——なんだ? みんな暖かい目で見てくるんだが?? 何かおかしな事でも言ったか??


 首を傾げるシグルドに、笑顔を向ける一行。


 そのまま店に入ろうと進める足を、ティナが制止する。


「あ、お店は売り子さんしかいないから、裏の家屋に入ってって言ってたよ」


「ああ、それもそうか。制作者の、コレットさん? は、作るのに忙しいだろうから、本人が売ってるわけないよな」


 裏手の家屋の呼び鈴を鳴らすと、中から一人の女性が現れた。


「おお、お待ちしておりましたー。聖女様御一行さんですねー。ささ、どうぞー」


 通された家屋——と言ってもどう見ても作業場には、マジックバックが所狭しと散乱している。


「売り物……だよな? 整理とかしないの?」


「あー、本日の午後の受注分なので、もうすぐ取りに来るはずなんですがねー。椅子になら座れるでしょーし、ささ、どうぞー」


 なんか、ヤバそうだなこの人。見るからにフラフラで、生気がない!


 何より隈がひどい!!よく見たら、目の焦点も合ってないぞ?どう考えても、働き過ぎた!!


「あの、ちゃんと寝てますか?」


「——寝る? 睡眠の話をしてますか? 今、あたしの人生がかかった大勝負のこの時期に、あたしに眠れとあなたは言うのです? 開業してまだ2週間ですよ! 2週間! まだ、一月も経ってない! 今、あたしは求められてるのです!」


 ——ヤバい


 何かスイッチを押したぞ


「セピア色でしかなかった人生に、聖女さまが光を差して下さったんですよ! 分かりますか!? ずっと雨空だったのが突然晴れ渡り、光が差したんです! そう、今は虹がかかっている!! 美しいでしょう! ええ! 美しいんです! 今はねッッッ!!!」


 突然、捲し立てるように話し出したコレットは、


 また突然、事切れたかのようにテンションを落とす。


「消えない虹、フッ、そんなもの、ある訳ないですよー」


 ブツブツと、マジックバックの縫い目を触り、終いには数を数えだす始末。


「情緒不安定だわ。眠らないと、人はこうなるのね」


「あー、コレットさんはね、元々こんな感じ」


「そ、そう。何かしら、短時間に同じようなことがあると、調子が狂うわね。——ハッ——」


 エイシャリアはシグルドとコレットを見比べ、そっとティナへと微笑んだ。


「大丈夫よ、大丈夫」


「エル……さすがにそれは、友人として(酷いんじゃないか?)」


 ティナの婚約者であるシグルドの未来を案じ、微笑むエイシャリアを、なんとか制したいカルロスだが、コレットの考え方の超合理主義が、どうもシグルドと重なり、途中から自信をなくし蚊が鳴くほどの小さな声にまで尻すぼんだ。


「カルロ、最後まで言えないんだ」


 ——先読みでティナの表情が脳裏をよぎる。


 ほんの一瞬のその表情は、ティナが絶対にしないあまりにも冷たい表情だった。


 慌ててティナへと振り向くが、その表情はいつもの愛らしい笑顔だ。


 ——いや、本当にそうなのか?


 気になってじっくり表情を観察するが、


 目の奥すらもちゃんと笑顔だと分かり、


 ようやく安堵するカルロス。


 ——その時


 目の形や、奥の表情は何も変わらないのに、


 ティナの表情だけが——スッと溶けたのだ。


「婚約者のいる貴族令嬢の顔を、そんなに覗き見るなんて、失礼だよ」


 それは先程、先読みで脳裏によぎった表情と瓜二つだった。


 これが貴族令嬢!?


 貴族社会の恐怖を改めて感じたカルロスだった。

お読みいただきありがとうございます!

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評価★も励みになります!続きもぜひ読んでくださいね。

この物語は日・水・金の19時台に更新します。

次回もお読み頂けると嬉しいです!

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