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【9000PV感謝】双極の花紋〜転生しても、君を必ず護ってみせるから〜  作者: 赤嶺 利空
第四章 「仲間編」

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第二十三話 「弱さ」








 未だ宙に舞う円月輪は異様な回転と共に、漂う砂埃すらも消滅させる。





 ビィクは、その様をジッと観察し何かを考察している。





「ふーん。やっぱり、消えてるね。ここまでの研鑽って人の人生で到達出来るものじゃあないよね」





 考察するビィクは何かに気付いたのか、一瞬目を見開いた。





「あー。……君」






 ——そして、視線だけをリンリンに向けた。







「ノーブルか」






 その視線を受け、少しも目線を外さずエイシャリアに指示を出すリンリン。






「エイシャリア様。カルロス様を連れてお下がりを」






 辛うじて立っているカルロスへと駆け寄ったエイシャリア。





 ほんの僅かな時間で





 ここまで血に塗れ、変わり果てたカルロスの姿に言葉を失った——





 女である自身よりも小さな身体で





 この細腕で





 男らしく護ってくれたのだ






 しかし、止まっている訳にはいかず、念動力でカルロスを宙に持ち上げ、駆けていく。






 ——すると、こちらへ近付いてくる二つの丘に気付いた。




 いつの間にか、シグルドはティナにも『クィックサラス』を使用したのだろう。





 エイシャリアは、その二つの丘へと急ぐ。






「シグルド、ティナ、カルロがッッッ!!!」






 魔法の効果範囲まで入ると同時に再度『クィックサラス』を使用したシグルドは、エイシャリアたちを土のドームで囲み4人は1ヶ所に合流する事が出来た。






「カルロッッッ!!!」






 シグルドとティナは、至る所を負傷したカルロスへと駆け寄る。






 良かった。





 急所や、危険な場所には傷が無さそうだ。





 脇腹や肩など無数にある傷口。




 ただ、カルロスはきちんと致命傷になる様な箇所への攻撃は避け、取捨選択をしていた様だ。





 しかし、その傷口は、丸く、不思議なほど同じ大きさだった。





「これは、穴」





 指突、奴はそう言っていた。この無数の穴は、奴に刺された指の痕。




 奴は目に見えない速さで、リーンレパードの爪の斬撃波の様な、指から放つ衝撃波を飛ばしていたのか。






「これ、さっきの冒険者たちの傷に似てる」





 傷口へとポーションを掛けるティナが呟いた。






 確かにそうだ。あの冒険者たちの腹に空いた穴は、雷牛の角じゃあない。




 この傷は指を突き刺した様な穴。深さも傷口も違う。





 何よりあの雷牛なら、角で刺したその傷跡を雷で焼いたりするだろうからな。





 3人ともそんな傷も麻痺もなかった。





 ——つまり、冒険者たちは魔王十二将デュオデキムのビィクに遭遇したんだ。





 そして負傷し、偶然アシュリーの最上級魔法の影響で発生した水の中に命からがら逃げ延びたのか。





 ——その時





 強烈な閃光がドームの覗き穴から差し込んだ。




 そして直後に、けたたましい爆音が鳴り響く。






「グルルルルルルル」






 時間経過と共に角からの流血が癒えたのか、痛みで正気を失っていた雷牛が喉を鳴らし、威嚇を開始する。






 シグルドは、雷牛の動きを除き穴で確認しながら話し出した。







「ビィクの事はリンリンに任せるとしても、雷牛は俺たち3人でなんとかしないとな。『クィックサラス』」





「そうだね。カルロの意識がない今、ドーム内からでも私たちが魔法でなんとかするしかないね」





「大丈夫だ、ティナ。雷牛の突進は丘を移動させる事で対応出来るし、雷はこの中なら安全だからな『クィックサラス』」




「ところでシグって無詠唱で魔法が使えるのに、技名は言うよね?どうして?」





「ん?あー、確かに技名を言わなくても発動は出来るんだけどな。だけどたまに失敗するんだよな。だから、確実に使わないといけない時は技名を言ってる。『クィックサラス』」






 先程から何度も唱えている『クィックサラス』は揺動用と移動用である。





 よし、これで奴から見たらこのドームと合わせて4つの丘がある。





 全てを動かして、雷牛は翻弄する。





 せめて作戦は考えないとだからな。





「エイシャリア?」





 自身の膝の上で眠るカルロスの手を握り続けるエイシャリア。





「……本当に……カルロは、大丈夫なの……?こんなにぼろぼろになって……あんなに血も出ていたのよ……ポーションだって……効かないかも知れない……」




「……エイシャリア。よく見て?傷は塞がってるよ。大丈夫だよ、少し休めば目が覚めるよ」





「……本当に……目が覚める……?……こ、このまま……目が……覚めなかったら……」








 ——ポタポタ






 エイシャリアの瞳から落ちる雫がカルロスの頬を濡らす。






 エイシャリアが泣いてる——





 いつも毅然としたプライドの塊の様なエイシャリア。





 弱っている所を見せる事すらしない彼女が






 初めて年相応の12歳の少女に思える程に






 小さく映る。






「……分かるよ。俺も、人が傷付くのが嫌だ……。人が……死ぬのが……怖くてたまらない」





 初めて吐露する言葉に、言葉が詰まり





 声が震える。





「……俺……人に銃を向けるのが……怖いんだ……土魔法だから……攻撃力が弱い……土属性じゃなかったら……たぶん……魔法も……人には放てない……」





「……シグ」






 ハンドガンを握りしめ、震えるシグルドの手を、見つめるティナ。





 ……俺はさっき






 ……カルロがやられている






 あの状況ですら……






 ……銃を向けることが出来なかった






 俺は






 俺は、最低だ……






 目の前で……





 またあの虫人の様に死んでいくのが





 堪らなく怖い……






 5歳の時の方がまだ覚悟が出来ていたかも知れない。





 だけど——







 ——そして





 シグルドはその手を、強く握り締めた。






「……だけど、俺、お前たちの事は絶対に護りたいんだ!だから、俺は戦うッッッ!!!」






 強い意志のある眼差しで顔を上げるシグルド。





 その声や手は、震える事なく





 力強さすら感じる——








 ——その時






 カルロスがゆっくりと目を開けた。







「よく言ったぞ、シグ。さぁ、第二ラウンドと行こうか」






「カルロッッッ!!!」






 起き上がったカルロスは、そっとエイシャリアの涙を拭い、優しく微笑んだ。





「エル、俺はお前を置いて行かない」





 ——しかし






 涙は止めどなく溢れてくる。






「大丈夫。いつも一緒だ。そうだろ?」





 溢れる涙






 言葉が声にならない






 エイシャリアは、コクコクッと頭を上下に振った。






 そんなエイシャリアの頭を撫でた後、手を引き、二人は立ち上がる。








「お前たちはドーム内からの攻撃に専念してくれ。その前に、俺がこの現状を打開してやる」








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この物語は日・水・金の19時台に更新します。

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