第十九話 「雷牛」
作品タイトルが『双極の花紋』に変更になりました。
どうぞよろしくお願いします。
あと、今回から投稿時間も変更になりました。
日水金曜日の19時40分です。
びみょーな変化ですが、何卒ッッッ!!
シグルドの機転により、なんとか土のドーム内に身を隠す事が出来た一行だが
現状は最悪だ。
撤退を決めたと同時に、帰還のスクロールを取り出していた副団長の2人。
——しかし
直後の雷撃で意識を失った2人はそのままスクロールを手放し
二撃目の雷撃により、スクロールは灰にされてしまった。
——そして
カルロスがシグルドたち3人を押し倒した事で落雷の直撃は受けなかったが
豪雨の影響で水たまりと化す地面に3人は触れていた為、感電してしまったのだ。
——つまり
現状動けるのは、カルロスだけである。
「クソッ。誰か……意識はあるか?」
「な、んとか……意識、は……あり、ます」
「僕、も」
「私も、です」
「良かったッッッ!!さすがSランクの3人だ!」
カルロスはドームの中で皆の安否を気遣い現状を考察する。
辛うじて意識があるのは試験官の3人だけで、エルもシグもティナも気絶している。運良く動けるのは俺だけだ。
ポーションは、毒なんかの状態異常には効かない。これは明らかに麻痺だ。
万能薬なんて存在しない。麻痺にも色々ある。どの麻痺薬が効くかなんて専門家しか分からない。
何より、間違った薬を片っ端から飲んで逆に死んだって話も聞く。
このドームだって、いつ破られるかも分からない。俺がなんとかしないと……
幸い入り口は目と鼻の先だ。スクロールが無くても帰還はなんとかなる筈だ。
だけど、この暗闇の中じゃ目が効かない。相手が見えないなら、先読みも何の効果もない。
何よりヤバいのは、方向が分からない事だ。
ドームから出た瞬間に敵に視認されたらこの人数を抱えてなんて動きようがない。
いや、そもそも全員を抱えるなんて出来ない。
クソッ、なんで俺はこんなに小柄で華奢なんだ。エルたち1人ずつ運ぶのでも難しいのに、大人を運べる気がしない。
——だけど、ただ隠れていたって殺されるだけだ。せめて誰かもう一人でも動けるなら……
本来乾いた土はほぼ絶縁体となり、電気を通さない。
だが、雨を吸収し続けているこの土のドームは乾いた土とは違い、電気を通しやすくなっている。それでも、分厚い土壁によって電撃は内部まで届きにくいのだが。
そんな科学知識を知るはずのないカルロスは、すぐ様退避する事を一番に考えてしまう。
幸いここは、階層の入り口にも近い。ゲートをくぐり、Cランクのエリアにさえ戻れたなら、カルロス1人でも守りながら戦えるだろう。
——やるしかない。
せめてエルだけは、死んでも護らないとならない。
「ダ、ダメ……だ」
辛うじて声を出したアシュリーが、カルロスを制する。
「少、しで、いい……時、間を……ちょう、だい」
水属性である為、相性の最悪な雷属性の相手はアシュリーにとって天敵と言っても良い。
だが、今の現状でなら、相手に出来ないという訳ではない。
彼女の水の探知魔法は、水の膜を張り、膜内の現状を探知するというもの。
幕の中には水がある訳ではない為、膜内の人間が雷撃で感電はしないが、彼女は別。
水の膜自体がアシュリーの意識化にある為、彼女だけは水の中にいるのと同義になり、感電してしまう。
——だが、土の中という現状では劣勢にはならない。
土で覆われている事で、電撃は外側の濡れた土へ逃げている。だから今はまだ中まで届いていない為、雷から守ってくれるのだ。
「水、を司る……精、霊……ルフ、よ。
我が、魔力、を……糧、に
青、き……水面、の……細、部……まで
我、に……叡智、の……波紋、を……顕現、せよ!
『リップル……ザーム』」
なんとか意識を集中させて、水の膜のフィールドを張り、ドームの周りを確認する。
「……い、る!!」
突如消えた獲物と突然現れた半円状の土の塊。さながら丘だろうそれは、当然だが、敵からすれば怪しさしかない。
今にも突進してきそうな勢いであるが、相手は慎重なようだ。
——ドカッ、ドカッ
前足でその不自然な丘を踏み、そして全身で乗り強度を確かめている。
状況を察したカルロスは、息を殺して様子を伺っている。
幸いにもシグルドの作ったドームの厚みはかなり分厚いらしく、踏み抜かれる事はない様だ。
そして、諦めたのか、牛は離れていった。
——牛が去って言った事で、なんとか現状と出口の方向をアシュリーから聞いたカルロスは、漸く少し安堵する事が出来た。
よし、一人ずつ出口に運ぶ!今しかない!
——だが、次の瞬間牛はドームに突進を開始したのだッ!!
角を突き刺しドームを破壊するが如く
顎を引き角を突き出し
猛スピードで駆けてきたッ!
奴には確信があるのだ!
普通なら、自分の力で押しても崩れないほどの土の丘に、角を突き刺すような真似はしない。
そんな事は考えずとも魔獣なら知っていて当然なのだ!
——しかし、奴は理解している。
その不自然な丘の中に隠れ、やり過ごそうとしている敵を
見逃しはしない!
「ダメ、だッッッ……来る……」
——その時
橙色の光がドーム内の暗闇を照らした。
「『ダ、ンス……サラス』」
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