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【9000PV感謝】双極の花紋〜転生しても、君を必ず護ってみせるから〜  作者: 赤嶺 利空
第四章 「仲間編」

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第十七話 「死への耐性」










 倍化した奇行種リーンレパードは、瀕死の身体で逃げもせず






 同じく瀕死の冒険者に飛びかかり、腹の中に顔を埋めた。





「ッッッグフッッッ」




 ——警戒を怠っていた訳では






 まったくない。





 それ程





 まばたき程の一瞬のうちに





 瀕死の冒険者へと、飛びついたのだ






「なッッッ」






「くッッッ……油断を……」






 素早く剣を振り上げるラーハルト。






 ラーハルトの殺気を間近で浴びているはずが、それでもリーンレパードは腹に喰らいつき血飛沫を上げながら食い破り続けている。






「ぎぐぁあぁああああああああッッッ」






 瀕死の冒険者は、凄まじい勢いで容赦なく腹の中を喰い破られ、絶叫し





 大量の血を吐いて






 絶命した——







 ——そして、それと同時にラーハルトの剣は振り下ろされた。






「……離れて下さい。……警戒を」





 シグルドたちの前に立ち、初めて臨戦態勢を見せるリンリン。







 ——しかし






 リーンレパードの双頭の1つである、腹に頭を突っ込んだままの頭を





 ラーハルトは、呆気なく首から切り落とした






 油断なのか、瀕死だったからなのか






 そのまま、パタリと倒れるリーンレパード






「な、にも……おきない……???」





「まさか……死んでる……のか?」







「生命反応は……途絶えました……直接確認しましょう」





 アシュリーが探知の魔法で確認し、リーンレパードの亡骸を調べた。





「やはり、死んでいます」







 呆気ない印象……




 確かに首を刎ねられたんだ。死んで当然かもしれない。




 だが、二つの頭がある。通常双頭の魔獣は片方の頭を失っても死なない。




 何より、このリーンレパードは人を食べたんだ。




 この呆気なさは逆に不気味でしかない。







「どちらにしても、リーンレパードの死体もこの方の遺体もこのままにはしておけません。あなた方も辛いでしょうが、感傷に浸るのは後になさい。他の魔獣が来る前にまずは動かなくては。マジックバックはお持ちで?」





 瀕死だった仲間を今目の前で失い





 涙する冒険者へと問いかける。





 非情にも見える光景だが、これが一般的な冒険者の末路なのだ。





 覚悟を決めて挑んでいる。





 そうであっても、割り切れるものでは決してないのが心情である。





 だが、それを踏まえてなお





 リンリンは気丈に振る舞い続ける。






「……はい……この子は私たちで運びます……助けて頂きありがとうございました……」





「では、帰還のスクロールを。瀕死の状態で使わなかった所を見ると、持っていないのでしょう?」





 そう言って、巻物を渡すリンリン。




「……命を救って下さった上に、こんな高価なものまで……ありがとうございます……」





 マジックバックに遺体を収納し、何度も頭を下げながら、冒険者たちは帰還した。






「マ、マジックバックとかスクロールってどこで手に入れるんです?」





 カルロスが興奮気味にリンリンへと問いかける。





 確かに普段なら気になる。




 この世界には、マジックバックやスクロールがあるのかと驚きはした。




 でも、今のこの心境ではさすがにな。






 護る事を信条にしているシグルドにとって、目の前で人が死ぬ事のダメージは周りにいる誰よりも大きい。





 しかし、この世界では人の死が身近にある。




 そして、同時に覚悟も強くあるのだ。





 感傷への割り切り方も耐性として持っている。






「ああ、皆さまは初見ですよね。どちらもダンジョン街産なので、あまり出回ってはいないですからね。特にマジックバックはつい最近流通されだしたものですし」




「つい最近!?あぁ、それで帝都でも誰も使わなかったのか」




 確かにな。




 毎度毎度、狩りのあとに魔獣を荷馬車で運んでいたからな。





「そうですね。まだまだ冒険者の中以外での流通もされていませんね」





「大量生産は出来ないのかしら?ドワーフとかに頼んだりとか」




「それが花紋使いの方の能力なので、お一人で製作されてるのですよ」






「ああ!あの袋属性の人かな?へー!ダンジョン街で作り始めたんだ!」




「ティナは知ってるのか?」




「うん!3週間くらい前かな?寝かされてる人の中にいた人」






 つまり、狂気に犯されていた人って事か。




 花紋使いが浄化をされたら、蜘蛛の虫人みたいに消滅する訳じゃないのか……?





「その人は、危険な思想とかは無かったか?ティナは怪我とかもしてないか?いや、浄化の後なら……あり得ないか……」





「全然気さくな人だったよ?シグどうかしたの?」





「いや、ティナが大丈夫ならそれで良いんだ」






 会話を聞いていたリンリンが、シグルドに苦言を放つ。





「シグお坊ちゃま。蜘蛛の虫人は、どちらにしろ処罰されていたのですよ。もう、お忘れ下さい」






 ——確信を突かれ、ビクッと身体が強張る。





 リンリンの怒りは尤もだ。




 仲間を故郷を、最愛の人をあんな風にした敵の一味なんだから。






 それでも——





 それでも、消える直前の虫人は





 悪人じゃなかった





 それだけは、俺だけが知ってるから。





「シグルド様、僕もちゃんと覚えているから。あいつは本当に最悪な殺人犯だったけど、本当は違ったこと、僕もちゃんと知ってる。でも、その苦しみから解放されて、満足そうだったじゃないか。だから、あれがあいつの救いだったんだよ」





 そう、か。




 俺だけじゃない。





 アシュリーも、あの場所にいたんだ。




 本当のあいつをちゃんと知ってくれているんだ。





「リンリン悪いな。もう、考えない」





 救いなのか?





 そう、考えていた





 ティナの浄化なら助けられたのか





 それも頭を過ぎったけど





 あいつの最後の満足そうな顔。





 そうか





 ——それが答えなんだな。






「ありがとう、アシュリー」







 満足そうなアシュリーの顔と、心配そうに笑顔を向けるティナの顔。





 それを見て、シグルドは改めて前を向く決心をした。





 ——だが、リンリンは見抜いていた。





 シグルドの死への耐性のあまりの低さを——








 ——リーンレパードの死体をマジックバックに収納するラーハルトが、怪訝そうに呟いた。






「しかし、何故このリーンレパードは更なる進化をしなかったのでしょうな」





「ええ。通常人を食べた魔獣は凶暴化します。ダンジョンや街でも遺体をそのままにしていると、必ず人を食べに来ますからね」





「倍化した個体には影響がないとか?」





「それもだけど、瀕死の状態で動けるなら、逃げるよね?何故逃げずに人を食べに行くの?」





「そうね。死への恐怖以上の執念を感じたわ」





「奇行種だから。そう括ってしまえばそれまでだけど、奇行種が奇行種たる何かはそこにありそうだな」





「情報が無さすぎて、俺にはそれ以上はわからないなぁ。それより俺は何故あの人だけポーションが効かなかったのかの方が気になるんだがな?」





「確かにね。見る限り、3人とも同じような傷跡だったわね。深さや当たりどころの問題かしら」





「いや、3人共に腹に穴が空いていたけど、そこまで深くはなかった。というよりは、亡くなった方は一番穴が浅かったんだ」





 俺も気になって見てみたが、亡くなった人は、少なくとも内臓が見える程の深さじゃなかった。




 当たり所か、もしくは水を大量に飲んだとか……いや、まだ辛うじて意識はあった。




 意識があるならやはり、当たり所か?





「たまにあるのですよ。ポーションが効かない事が。本当に稀ですが」





「何よ、それ……初めて聞いたわ」




「それじゃあ、さっきのエルの怪我も……治らない可能性があったって事か……」





 改めて死が身近にあるのだと実感し





 恐怖で肝が冷え、青褪める一行。





「リンリン、それは、体質の問題なのか?」




「残念ながら。ただ、普段はちゃんと効果があった者にも突然効果が現れない時がある。そう聞いています」





「……なんて、事だ……」






 それはヤバすぎる。




 ポーションが効かない可能性がある?




 しかも、突然だと!?








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