第十六話 「Sランクの戦い」
鮮血と共に砂埃から現れたリーンレパード。
4本ある前足の1本が無くなっている所を見ると、爪の斬撃波で対応仕切れなかった斬空閃をガードしようとしたのか。
もしくは、更に爪の斬撃波で対応しようとしたが間に合わなかったのか。
どちらにしろ、爪の斬撃波の脅威は少しは緩和されたって事だ。
「グガァァァァァァァ」
相当頭に来てるのか、怒りに任せてグルグルと喉を鳴らし、雄叫び上げている。
そして、姿勢を屈め
いつでも突進可能な臨戦態勢を示すリーンレパード。
それを見た副団長2人も、臨戦態勢に入った。
「参る!!!」
リーンレパードの突進を合図に、副団長2人も駆け出した。
突進するや否や、サイドステップで距離を取りながら、2本の前足で爪の斬撃波を繰り出したリーンレパード。
斬撃を斬空閃で全て弾き飛ばしたラーハルトだったが、弾かれた斬撃で舞う土埃でまたも姿を見失う。
「上ですッ!いや、えッ?」
水の膜で周囲が分かる筈のアシュリーがリーンレパードを見失ったのか?
「拉致があきませんね」
空に斬空閃を飛ばし、砂埃を払ったラーハルト。
「なッ、そういう事ですか」
土埃が晴れて姿を現したリーンレパード。
しかし、その数は15、いや20には増えていたのだ。
「気を付けて下さい。あれは、動きに緩急を付けた残像です。こうも感覚と視覚が狂うとは思わなかったですけどね」
「ほう。それは、厄介な話ですな」
探知能力が高いアシュリーの水魔法で見えているものと、視覚的に視えているものが違い過ぎるのか。
どこまでの違いがあるかより、これは慣れる事に集中したいんだろうけど、その間ラーハルトは一対一での戦闘になる可能性が高い。
まぁ、魔法を解除するメリットとデメリットを天秤にかけたんだろうけど、悪手に見えても考えがあるのかもな。
「水を司る精霊ルフよ。
我が魔力を糧に
青き清流の怒りを以て
激流より生まれ落ちし龍を模した渦潮よ
我が敵を穿つ力を顕現せよ!
『タイダル・メイルストローム・トレント』」
詠唱と共に顕現された水魔法は、最上級魔法。
激しく渦を巻く水流が
まるで龍の様に大きなとぐろを巻き
アシュリーを中心に高く上昇を始めた
「確かに早過ぎて視覚では残像として20体程に視えていたとしても、僕の感知には高速で移動する点として認識出来ている」
巨大な水流は
どんどん激しさとスピードを加速させ
アシュリーのいる中心以外のフロア一面を埋め尽くそうとしている。
「あらあら、こちらにまで被害が及びますね。皆さま私に捕まって」
リンリンに促された一行は、触れた瞬間には、アシュリーのいるフロアの中心へと移動していた。
Sランクか、やっぱり伊達じゃないな。
リンリンもそうだけど、ラーハルトもアシュリーも、凄まじく強い。
何よりこの魔法は、同時詠唱だ。
探知の魔法と、水流の魔法。
この水流も、触れた瞬間には足を取られ、そのまま生きてはいられない程に激しい。
中心は球体状に守られ、水流は更に水かさを増し
終いにはもう天井にまで到達し、全てを埋め尽くしている。
大きな球体状に空気があるから、酸素は確保出来てるけど、長時間は厳しそうだな。
まぁ、この水流に飲まれて、さすがのリーンレパードも死んでしまっただろうけど。
——しかし、安心したのも束の間
「チッ。……来ます!前ですッッッ!!」
突然空気の膜は破られ
リーンレパードがラーハルトへと飛びかかってきたのだ!
更に、膜の穴からは大量の水流が流れ出し、一行に襲いかかる。
ヤバい!!
俺たちじゃ、この水流に耐えられないッッッ!!!
——しかし
水流はシグルドたちには届かず渦を巻き、リーンレパードへと襲いかかった!
「この大量の水は一つの水流。意思を持つ龍だ。逃しはしない」
水流に巻きつかれながらも、動きを止めないリーンレパードは、その鋭利な牙でラーハルトへと噛みつきにかかる!
——が、間一髪でジャンプをし
くるりと回転したラーハルトは
空中から2段ジャンプをするかの様に超加速をし
まるで落雷の様に激しく、一直線に剣撃を落とした!
「天穿撃ッッッ!!!」
「ほぉ、お見事」
二つの首の付け根へと、天穿撃が突き刺さったリーンレパードは、痙攣し、そのまま意識を手放した。
「さぁ、そのまま早くとどめを指して下さい。これ以上クエストを中断しては——」
「あーーーッッッ」
リンリンが会話を終える前にアシュリーが絶叫を上げた。
「ヤバいッッッ!!!フロアに続く道にも流れ出してた水流に、冒険者が巻き込まれたみたいだ!」
急いで魔法を解除したアシュリーは、流れ着き意識を失っている冒険者へと駆け寄った。
「うわッッッ……大怪我してるよ……急いでポーションをかけないと!」
流れ着いた3人の冒険者たちの2人は意識を取り戻したが、まだ1人は目を覚さない。
「すみ……ません」
「いや、僕のせいだからごめんね。こんなに大怪我をさせてしまって」
「いや……違うんです。私達は元々大怪我を負っていて……命からがらこの水流に飛び込んだんです……ありがとうございます……お陰で助かりました」
この3人の冒険者は魔獣に襲われていたのか?
かなり損傷が激しい。
正規の冒険者登録を済ませた人たちなら、Bランクのパーティの筈だし、相応の強さの冒険者の筈なのに。
アシュリーのせいじゃなかったみたいだけど、その傷で水に入るなんて……自殺をする様なものだ。
それだけ危険な魔獣だったんだろう。
だけど……
「残念ですが、この方は助かりませんね」
——その時
目を覚ましたリーンレパードが、瀕死の冒険者へと飛びかかり、穴の空いた腹へと顔を埋めた。
「グフッッッ」
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