第十三話 「評価」
「皆さんお見事でしたね。Fランク階層ですから、実力が発揮されないのは仕方がないです。ですが——」
にっこりと笑っていたリンリンの空気が無表情になると共に凍り付く。
「気功を途中で止めましたね?本来《気功》と《魔力》と《神聖力》は相性が悪いんですよ。だからこそ、慣れるまでは同時に扱う事は難しいのです」
そうか、だから魔法を使った時に《気》の巡りが悪くなって身体強化が解けたのか。
「それでは、防御力が疎かになってしまいます。《気》とは常に巡っているもの。寝てる時でも淀みなく身体強化の巡りを忘れてはいけません。そうすれば、魔力とも、神聖力とも併用が可能です」
魔力と神聖力と気功は相性が悪いのか。
「それなら魔力の高い俺は、気功をマスターするのはかなりハードルが高いんだな。逆に魔力低いリンリンは気功の適性が高くて、神聖力の適性が高いティナは、魔力や気功の適性が低いってことなのか?」
「ええ、ですが一つ訂正を。シグお坊ちゃま含め、皆さま気功をマスターする事は出来ません」
「なんだって!?」
「そもそも、気功の適性がない者は、初級の身体強化の熟練度をマックスに上げてようやく皆さまの言うレベルが4上がる程度でしょう。極めた私で10。更にティナ様の神聖力の身体強化も初級が限界の様ですね。なので、4までが限界です」
「そうなんだよ。同じ神聖力なのに、身体強化は初級しか覚えられないんだよねぇ。でも、みんなにも重ねがけしてあげられるから次の階層では気功の身体強化もちゃんと解かないでね」
「そうなのか!神聖力の身体強化って俺たちにまで使えるなんて、すごい便利じゃないか!有難いよ!ありがとうティナ!」
「そうか。俺は属性付与まであるから、更に大変だな」
「あら、良いじゃないの。風の属性付与はスピードが上がるんだし。まぁ土の属性付与も防御力が上がるんだし、私たちも纏っていた方が良さそうね」
「そうですね。常に3重の重ねがけをしている状態を慣れさせるのが望ましいでしょう。ここからは危険も伴いますからね」
「「土を司る精霊ラゴンよ。
橙に輝く生命の大地の恩寵を
我が魔力を糧に我が身に宿れ!
『ポゼッションサラス』」」
「女神よ、我が歌が届くなら
我が声に息吹に生命の向上の力を与え賜え
我が身は女神の御使い
聖女である我が歌を聴く者に力を!
『セイクリッドレゾナンス』」
まだ属性付与の効果が残っているカルロスを除いた人が属性付与を施し、更にティナが神聖力の身体強化を皆に施してくれた。
光る円盤に乗った一行は次のエリアへと移動した。
——視界が白んだ先には景色が一変していた。
一面橙色一色の荒野。
「ここは、Cランクのエリアですね。さぁ、頑張って下さいね」
Cランクと一括りに言っても、一律の強さじゃない。魔獣には下位から上位までいるんだ。
俺がカルロスに連れられた森で遭遇した熊の魔獣ウスベア。
あいつは、Bランクのリーンに匹敵する強さだったらしい。
そう思うと、リーンスパイダーはBランクでも上位だったのかもしれないな。
まぁ、だからってあれからレベルも上がってるんだ。周りにうじゃうじゃ殺気を放つ魔獣たちがいても、エリアボスまでは大した事はないだろう。
「さっきとは一変して、かなり広そうなエリアだな。気をつけろ。Cランク魔獣があちこちにいる。囲まれたら厄介だぞ」
「あら?囲まれても大丈夫でしょ?狩場では何度も遭遇しているわ」
「そうそう、それに今は通常レベルより、4、5レベルは上がってるしな」
「誰が一番倒せるかも良いけど、連携もしたいよね」
「ふむ、それなら——」
4人の成長と実力を楽しそうに見つめるリンリン。
その隣には、次々とCランクを倒していく4人をじっと見つめる2人の副団長。
——Cランクのエリアボスを軽々と倒した4人。
少し離れた場所で試験官の3人は品評に入る。
「4人共に良い身のこなしですな」
「本当に!特攻である唯一の近接のカルロス様!彼の強みはやはり俊敏さでしょうね!」
「同じ俊敏性に特化したアシュリーにはさすがに及ばないまでも、ギルド内でもアシュリーに継ぐ速さではないですか?」
「確かに!しかも、危機感知能力も高く、先読みが出来ているかの如く攻撃を躱し続けていますが、当たらない訳では無い、はずなんですけどね。動きによってはかわせない位置というものがありますし」
「それは、そうですな。しかし、その攻撃の軌道をずらしているのは、中衛のエイシャリア皇女ですからな」
「それが不思議なんですよ!彼女の鞭は変幻自在の動きを見せてます!本来ではあり得ない、曲がった先でまた曲がる!まるで自分の手指の様に自由自在に!しかも何故か、鞭はまた伸びてますからね!」
「そう、それは不思議ですね。最大何メールになるのかも謎ですが、至る場所であらゆる動きをしていますね。彼女は初手の一度以外、鞭を打っていないのに。魔導具の一種か特殊な武器である事には変わりないのでしょうが」
「そしてやっぱり後衛のシグルド様ですね!彼は土魔法と銃を要所要所で使い分けていますが、基本的にはトラップや防御担当ですね!」
「ですな。初手で敵の足場を崩し頭上からは土の棘が降り注ぐ。そこにカルロス様が到達するまでに銃で撃ち抜き、絶滅させた敵は数えきれませんな」
「飛んでいる敵にも無数の土の棘を生やしますからね。棘が伸び続ける為、逃れ場がなくなりますし」
「しかも、敵を貫けないにしても、土の棘は前衛の足場になりますからね!そして何より特筆すべきは魔法の発動の速さですよ!もしもの時の土の盾は常に完璧な位置に発動されてます!素晴らしいです」
「そして最後は、こちらも後衛聖女ティナ様ですな。全ての攻撃は彼女の歌から始まるのが美しい」
「神聖力でしか付与できないバフの効果を全体に重ねがけして、パーティの底上げをしていますからね!身体強化以外にも出来るなんて、皆さまいったいどれだけ強くなってるのかしら」
「でも何より驚きなのは、彼女の弓捌きですよ!弓を構えたと同時に敵が絶命している場面を幾度も見てますからね!」
「それ程の速射であの命中率。何より、弓を引く姿勢すら見せないのは凄まじいですな」
「個々の能力もさる事ながら、チームとしての相乗効果がこれ程増すとは、将来が楽しみでならないですね」
「まったく、良いパーティですな」
「本当に!!」
若い才能に感化され、犬猿の仲である立場も忘れて楽しそうに品評し合う、試験官たちであった。
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