第十二話 「ダンジョン」
ゲートを潜り光に包まれた一行。
目を開けるとそこは森の中。
「あれ?ダンジョンって洞窟じゃないの?」
「え?何言ってんだよ?穴の中に入った訳でもないのに」
「シグルドは時々変な事を言うわね」
「そうそう、階段の時とかもな」
「ちょっと2人とも!シグは変じゃないよ。実際、ダンジョン都市は魔物の溢れる大穴が多数発見されたから建設されたんだし」
「ありがとう、ティナ。なんかその話でなんとなく分かった。ダンジョンってのは階段と同じで、階層移動の手段なんだな」
「その通り。ただ、上りの白階段と下りの黒階段の様に、ダンジョンは階層を降りる、そして登るのは塔になります。塔については、まぁいずれ」
塔……そんなモノまであるのか。
「その理屈だと、帰れないじゃないか。つまり、ダンジョン内での階層の行き来は白階段と黒階段で行うって事だな」
つくづく不思議な世界だ。
階層が変わっても違和感もなく光がある。
一つの階層の広さはどれくらいなんだ?
もしかしたら、俺たちの住む花の大陸が囲まれる海の向こうには、何もないのか?
そういえば、なんだ?花の形をした大陸って。誰かが飛んで確認したのか?
まさかそこまでの魔法の使い手は——いや、ティナは神聖力で飛んでいたな。
え?なに?どういう原理で飛ぶの??
いや、まぁいいや。
前世でもそうだ。
歴史上の誰かが成し得た功績の上に、俺たちの常識が作られていた。
世界地図の形、日本の形、確認のしようもなく、そういうもの、として受け入れるしかない。
つまりは、ここでもそういう事なのだ。
「——グ、シグ」
心配そうに顔を覗き込むティナの頭を撫でるシグルド。
「シグ、考え事をし過ぎて没入するのはここではやめなてくれ。分かってるよな?俺の言葉が聞こえないんじゃ話にならねーぜ?」
『命が惜しければ、カルロからのアドバイスだけは死んでも護りなさい。例えどんなに悪手に思えてもね』
いつかのエイシャリアの言葉が思い出される。
そうだ、友人の言葉ならすんなり受け入れられる。
常識なんて土台でしかない。
信じられないなら、体感するだけだ。
「ああ。行こう」
——しばらく進むと、魔獣たちが現れた。
兎や、鷹、蛇、猪全てがFランクの魔獣であるセフばかりだ。
「つまらないな。低ランクからのスタートなのは分かるけど、一本道になってて枝分かれもしない獣道なんてな。整備されてる森なんて話にもならねぇ」
「仕方がありません。このクエストを越えれば適正ランクに飛べる様になりますよ」
「へぇ、それならさっさとクリアするしかないな」
そう言って4人は駆け出した!昨日覚えた身体強化を施されている為、かなりのスピードだ。
「女神よ、我が歌が届くなら
我に力を分け与え賜え
この身は女神と共にあり
御使いたる聖女である我に力を!
『セイクリッドラプソディー』」
神聖力には身体強化が存在する。以前同様助走と共に歌を奏でだし、超スピードで飛び立ったティナ。
「ちょっ、ずるいぞ!ティナ」
「シグ、ぐずぐずしてると置いて行っちゃうよ」
「風を司る精霊アングよ。
緑輝く吹き荒ぶ神の息吹きを
我が魔力を糧に我が身に宿れ!
『ポゼッションヒューイ』」
今度はカルロスが風の属性付与を自身に施し、駆け抜ける。
「風使いがスピードで負けちゃいられないってな」
ふむ、それなら
「土を司る精霊ラゴンよ。
橙煌めく全てを飲み込みし土壁を
我が魔力を糧に顕現せよ!
『クイックサラス』」
シグルドは土を流動させ、土壁を顕現させた。
さらにもう一発!
「土を司る精霊ラゴンよ。
橙に輝く豊穣の土を
我が魔力を糧に顕現せよ!
『プラウサラス』」
土壁の上に乗り、耕されていく土にどんどん運ばれて行く。
ん?身体強化が切れたな。
まぁ、今は土壁の上にいるんだ。関係ないだろう。
「あら、やはりなかなかのものね。走るよりかなり速いわ」
「おい、エイシャリア!いつのまに隣にいるんだよ」
声の方を見ると、シグルドの作った土壁の上に、ちゃっかりエイシャリアもいたのだ。
しかも、どこからか持ってきた丸太に腰を下ろしている。
「そんなもん、どっから拾って来たんだよ」
「あら、土の上に座れと?」
「あのな、便乗するなら少しは軽くしろって事だよ」
「まぁ、こんなに羽の様に軽いわたくしに向かって失礼な口だわ。それより、やはり試験管たちは余裕そうね」
リンリンたちは、4人をちゃんと監視出来る様に付かず離れずの距離をきっちりと保ってくれている。
「ああ。まぁ当然だろうな。それより見えたぞ。たぶんアレがボスだろう」
そこにいたのは角の生えた馬の魔獣、ルノホースだ。
「あぁ、ルノね。ボスでもEランクなのはつまらない——」
「土を司る精霊ラゴンよ。
橙煌めく全てを飲み込みし土壁を
我が魔力を糧に顕現せよ!
『クイックサラス』」
エイシャリアの言葉が終わるまでに、まだ豆粒程しか見えていなかったルノホースを土壁に閉じ込め、そのまま圧縮し、潰したのだ。
そして、ちょうど同時に、ティナの弓が土壁に突き刺さる。
——しばらくし、シグルドとエイシャリアがエリアボスであるルノホースの元へ到着した。
「悪いな。ちょっとだけ俺が速かったらしい」
「あぁ、惜しかったなー。まさかそんなに離れた所からでも届くなんて思わなかったよー」
「いやいや、遠距離とか2人ともマジで反則だろ!」
「あら、わたくしなんて何一つしてないわよ」
「あぁそうだ!丸太拾ったくらいだな」
まぁ、エイシャリアの場合、変な立ち回りをする訳にもいかないから仕方ない。
本来であれば、念動力の力で土壁を更に速く運ぶ事も出来ただろうが。
それをシグルドたちがちゃんと分かってるからこそ、エイシャリアは何も言い返さない。
ルノホースが撃退された事で、光る円盤が現れる。どうやらこれに乗れば、適性のランクの階層へと運んでくれる様だ。
「さて、次はどこのランクに飛ばされるかな」
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