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【9000PV感謝】双極の花紋〜転生しても、君を必ず護ってみせるから〜  作者: 赤嶺 利空
第四章 「仲間編」

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第四話 「祖父」








 緑の大聖堂にある自室で、婚約者であるシグルドからの手紙を読んでいるティナ。






《拝啓、可憐な婚約者様へ。堅苦しい挨拶は省くから、先に褒めなきゃいけない貴族的な挨拶は抜きにしてもティナを可愛く思っているから、ちゃんと分かっていてくれたら嬉しく思うよ。最上級魔法の習得の為に、リオーネでエイシャリアが、メィリッヒでカルロがお世話になる事になった訳だけど、カルロには注意して欲しい。ティナが思ってる以上にスケベだから。



追伸。必ずすぐにマスターするから応援よろしくな。エイシャリアにもカルロにも負けないから》





 ふふっ、と嬉しそうにするティナに、カルロスが悪態を吐く。





「……なんでかな。シグの奴が良からぬ事を吹き込んでる気がする」





「そんな事ないよ!シグがカルロにお互い頑張ろうだって」




「怪しいな」




 ジト目を向けてくるカルロス。




 だが、早く訓練に入りたいらしく、浮き足立つカルロスに笑みを浮かべるティナ。





——————





 最上級魔法の使い手は少ない。




 故に、四属性全てが暮らす帝都で師を見付けるのは明らかに難航するだろう。それだけで有に半月は無駄になる。




 そんな話になった時




「じゃあ、うち来る?」




 と言う提案になったのは自然な流れだった。



 幸いな事に、エイシャリアはシグルドと同じ土属性。そして、カルロスはティナの住む緑の国と同じ風属性なのだから。




 ——しかし




「人選が悪い!」




 と、当然嘆いたのは男連中だった。




「エルを一人でシグの家になんて無理だ!ダメだ!許可出来ん!!」




「カルロがティナの家になんてダメに決まってる!常に目隠しをして、夜は縛り上げても信用ならん!!」




 と、まぁ一悶着はあったものの、無事こうして強くなる為に、各々はリオーネと、メィリッヒへと修行に赴いたのだ。




——————





 ——そして今




 今回カルロスの師として仰ぐ、ティナの祖父バルディーニの元へと向かう。





 バルディーニは、かつて、伝説の四英雄と呼ばれた一人である。




 現在は大公の地位から退き、大聖堂の教皇として日々務めを果たす、御年62歳の偉人。



 風に乗る声を聞く事が得意で、諜報活動に関して、彼の右に出る者はいない。





「教皇様。カルロが到着しました」




「入れ」





 中には緑のローブを羽織る、老齢の偉人バルディーニが紅茶を嗜んでいた。





「お初にお目にかかります。カルロス・コルベラーナです。伝説の風の英雄バルディーニ教皇にお会い出来、更にはご教授頂けるなんて光栄至極に存じます」





 きっちりとした、ボウ・アンド・スクレープで礼を尽くすカルロス。





 ——しかし




「建前は良い。最上級魔法を覚えたいとの事だったな。覚えたらすぐに帰れ」





 ある程度予想していた反応だったが、さすがにマズイと思い、ティナは慌ててフォローに回る。





「あ、あのお爺様、カルロはとっても優秀な風の魔法使いで、若くして皇女エイシャリアの側近に選ばれた程なんですよ!だからきっとお爺様も気に入られると思います」




 そんなティナの言動にため息を吐くバルディーニは、淡々と言葉を紡いでいく。





「ティナよ。よくもペラペラと口が回る様になったものだな。情報などをこの私に伝える意味も考えつかぬとは。愚かでならない。さっさと聖女としての業務に取り掛からぬか。此奴を迎える為に朝の業務も遅れているだろう」





 喝を入れられ、ビクッとするティナを横目にバルディーニは立ち上がり





 ツカツカとカルロスを連れ、部屋を後にした。





 すれ違い様に、ティナに冷たい目を向け





「祖父などと、呼ぶな」





 そう——吐き捨てて。






 ——その夜。





「ご、ごめんね、カルロ。せっかく来てくれたのに」





 大聖堂の客間のバルコニーで、夜風を浴びながら申し訳無さそうに謝罪を述べるティナ。





「いや、正直驚いたのは事実なんだけどな。あの温厚で知られるバルディーニ様が全然印象が違った訳だし。まぁ、俺は師匠なんて厳しい方が良いって思うタチだから全然良いんだが。ただ、ティナは、辛いだろうなって」





 若くして聖女として目覚めたティナは、メィリッヒ城ではなく大聖堂に住んでいる。




 もちろん公女としての淑女教育は受けた上で聖女として立派に働いている。




 だからこそ、息つく場所のないティナへと心配するカルロス。





「そっか。ありがとうね。カルロがお爺様を気に入ってくれたなら良かったな。それに……私が……悪いの。……お爺様に嫌われているのは。……お爺様は……ずっと私を気にかけて、良くして下さっていたの」






——————





 聖女として生を受けたティナは、産まれた時から言葉を理解していた節があった。




 が、理解していても興味を示さず



 返事もしない



 笑わない



 話さない




 美味しい、嬉しい、楽しい





 そういった陽の感情が欠如しているかの如く、無感情な人形そのものだった。




 失語症かと疑いたくなる




 耳は聞こえているのか?と、質問も多く飛び交っていた程だ。




 ——では何故、言葉を理解しているのかが分かるか





 それは周りの者の会話から、自律的に行動していたからである。




 教えた事もない部屋の間取り




 特定の人物やその名前



 物の在り方を




 会話を聞き、理解しているとしか言い様のない行動を当たり前にこなしていたからだ。




 しかし




 興味を持たれないので、目が合わない




 返事をしない




 笑わないだけではなく、泣きもしない




 そんなティナを、気味悪がる者たちは当然増えていった。




 それは、ティナの両親や兄姉も同じだった。



 弟か妹が産まれる。そんな待望の赤ん坊は笑いも泣きもしない何の愛想もない無表情。




 逆に、兄姉達に泣かれる事など毎日の様に続いたのだ。





 だが、そんな周りとは違い




 バルディーニだけが、いつも優しかった。




 聖女だからと言う名目で、大聖堂で育てる事を提案してくれたのもバルディーニだった。




 いつでも笑いかけ




 手を繋ぎ




 共に眠る




 感情が湧かないティナですらも、目で追う様になる程に




 共に、時を過ごした。






 ——しかし数年後





 そんなバルディーニも、ある時を境にティナを冷遇した。





 と言っても干渉をしなくなった、が正解であった。




 この頃は、今程冷たくはなかったのだが




 ティナには、それすらも分からなかった。





 ——時が経ち、ある時から何故か、自我を持った感覚があった。




 自我という程ではないのかもしれないが




 それでも明確に




 自覚が持てたのは確かだった。




 あの時、あの場所で世界が色付いたのだから。






 それからの自分が、周りの評価通り明るくなった自覚もあった。




 ただ——




 だからこそ、祖父から受けていた愛情を思い出す。





 ……私は、あれ程優しかったお祖父様に、素っ気ない態度を取っていた




 それでも、側近のメイド達がこんなにも喜んでくれているんだの!




 変われた私を、お祖父様にも見てもらいたい!





 そう、子供心に会いに行ったが




『用もないのに、会いに来るな』




 そんな、素っ気ない態度で追い返されてしまう。






 この出来事は、ティナに初めての




 傷心と後悔を与えた






 ……何故、自分はあんなに無感情だったんだろう。




 ……何故、あんなにも温かなお爺様に冷たい態度を取っていたんだろう




 ……そんな態度を取り続けたら、嫌われても仕方ない……よね。






 そう、一人で泣いた。





 ——そこからは人に気を配り、人一番愛想を良く振る舞う事が癖付くようになった。





 それでも、バルディーニとの関係は変わる事なく2年の歳月を重ねた。




 だがこの事は誰にも伝えない。




 優しかった祖父の心が、また戻って来る事を信じているから。




 それが、ティナの信念なのだから。





——————





「ふふ、でも私ね、お爺様が大好きなの!だから、いつかまた笑って貰える様に頑張るの」





 そんな、一欠片の曇りのない笑顔を向けるティナを見て




 少し驚いた後




 ニッ、と笑うカルロス。




「そうか。そうなったら、俺も嬉しいよ!」




 ——そして、数週間が経ち




 シグルド、エイシャリア、カルロスの3人は無事、最上級魔法を習得したのだった。





——————




 ——カルロスが帰路に立ったその夜





 自室で一人紅茶を嗜むバルディーニは、不意に右手袋を外した。





 ——そこには





 燭台の花紋が刻まれていた。




 すると、バルディーニの表情はみるみる変わり




 苦々しい、憎しみの籠った表情で埋め尽くされる。





「あぁ……忌々しい……あの聖獣さえいなければ、とっくに達成していたのにねぇー。……あの時から……ずっと……僕の邪魔を……するなんてね……」






 そして、数秒の沈黙の後、また男は語り出した。





「それに、あの二人組も厄介だねぇー……。毎朝わざと僕と目を合わせてから立ち去るなんてね……ふふ……ズィーブ様に言い付けてやろうかなぁー」





 ——そして、今度は





 ニタリ、と下卑た笑顔を貼り付ける。




「緑の国の調査もぉー、そろそろ終わりかなぁー」










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この物語は日・水・金の19時に更新します。

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