第三話 「二人の能力」
シグルドの質問に面食らった顔の後、罰が悪そうにするエイシャリア。
なんだよ隠し事しやがって。
俺は無詠唱の事とか洗いざらい話してるのに。
まぁ、アレはバレたから話しただけだから、バレなきゃ話してないだろうけど。
そう思うと、親友の隠し事を暴いてしまった様で、だんだんシグルドも罰が悪くなる。
そして、気まずい雰囲気が流れた時カルロスが声を発した。
「隠し事してた俺達がわりぃよ。悪かったなシグ。お前が無詠唱を親に秘密にする様言われてたみたいに俺達にも秘密がある」
そんなカルロスの言葉を聞き、更に申し訳ない気持ちになってしまうシグルド。
「お前って、本当に良い奴だよな。もっと怒って良いんだぜ?親友なのに隠し事してた俺等が悪いんだし」
「いや、俺もバレなかったら、言えてなかったと思うから」
「本当はあの時、俺達も自分達の能力について話すのが対等だろうって話にもなったんだけどな。まぁ、きっと、花紋の継承で分かるだろうし、って話になってな。きっとこれはそういう能力だろうから」
——そう言った後、ほんの少しの沈黙が流れた。
会話の合間のほんの数秒。
普段の会話なら何も気にならないそんな間も
居た堪れない人にとっては
とても長く感じる。
——そう思い
ティナが突然立ち上がった。
「ご、ごめん。私がいるから言いにくいんだよね。シグの無詠唱の事とかも、私聞いちゃいけない話だよ」
「俺の話なら、大丈夫だよ。確かに、ティナには話せてなかったな。ティナは俺の婚約者だし、タイミングが無かっただけで、隠し事をする気は無いから安心して」
「そっか、ありがとう。でも、二人の能力についてはさすがに聞けないよ。私は何か秘密を明かした訳でもないし」
そう言って、席を外そうとするティナをエイシャリアが止める。
「いいのよ、ティナ。ここにいてちょうだい。わたくし達はチームですもの。自分達の能力については知っておかないといけないわ。悪かったわね、シグルド」
そういって決心を固めたエイシャリアは、自身の能力について話しだした。
「わたくしの能力は、シグルドの言った通り、物を動かしたりする、念動系の魔法よ。この魔法でどうとでもなるから、命中率はあまり気にしていないのよ。だからこそ命中率のレベルが低いままだったという所ね。まぁ、いずれバレるのだし、やはり隠すべきではなかったわね」
確かに、物を動かしたりって念動系の力は固有魔法なんだろうな。だからこそ二人が言う様に花紋由来の力に感じる。
「いや、もう何回も一緒に狩に行っても気付かない程なんだ。こんな事がない限り分からなかったよ」
「いや、チームなんだ。知っておかないといけない事だ。特に俺の能力はな」
カルロの能力か。まぁ、チームだし、弱点とか応用とか何かあるんだろうな。
確かに、知っていた方が良さそうだ。
そして、少し目を伏せて話し始めたカルロス。
「俺の能力は、先読みの力だ。たぶん」
「先読み!?しかも、たぶんってなんだよ。何か映像として分かるのか?」
「いや、映像とかではないんだが、なんて言うのか、次の動きが手に取る様に分かるんだ」
なんだそれは!?
いや、そうか。
格闘技でも足の運びや重心の動きから、次の動きの予測がつく事はある。
「カルロは、洞察力が長けてるって事か?」
「そうね。ただ、その道に長けているからこそ育つのが洞察眼だけど、カルロは初見でも予測を外さないわ」
エイシャリアの能力と違い、自身の能力への確信が持てないからなのか。
断定も出来ず不確定に話すカルロスに代わって、エイシャリアが答えてくれる。
「それじゃあ、戦闘時にはかなり心強いな!初見の魔獣相手だと、ベテラン冒険者でも全滅の可能性があるってのに」
「そうね。だからこそ、チーム戦では役に立つわ。命が惜しければ、カルロからのアドバイスだけは死んでも護りなさい。例えどんなに悪手に思えてもね」
あのエイシャリアからのこの信頼感——これは、聞いていないと絶対にいけないやつだったな!
「あと、わたくしの魔法は、触れていないと動かせないから」
「そうなのか!そこまで万能じゃないんだな。ん?そうか、だからエイシャリアの武器は鞭なんだな!」
少し、面食らった顔をするエイシャリア。
本日2度目な事もあり、眉間に皺が寄る。
「……本当に聡くて嫌になるわね。……えぇ、鞭で触れているものは効果範囲内よ」
「て事は、人を介したらどうなるんだ?」
そんなエイシャリアの表情が、驚きへと変わった。
「……どういう事よ?」
「例えば、エイシャリアとカルロスが手を繋いで、次に俺、ティナと続いてティナが触れている物には効果があるのか?」
そして、今度は少し考え込む。
今日のエイシャリアからは自然な表情が伺える。
「へー。あんた、面白い事を考えるわね。確かに知っておくべき事だわ。みんな手を出してちょうだい」
——そう言って実験を開始する事になった4人。
皆が手を繋ぎ、最後尾のティナ自身、もしくはティナが触れている物が動けば成功という簡単な実験だ。
「行くわよ」
——掛け声と共に実行されたが
動かない。
——次に、ティナが離れ、シグルドで実験。
動かない。
——次に、シグルドが離れ、カルロスで実験。
動いたッ!
カルロス自身、更にはカルロスの持っていたティーカップまでもが90度も。
「やはり、エルが直接触れてる事が肝になるんだろうな」
「いや、それだけじゃない。カルロが持っている物までが対象になるんだ!それは大きな発見だよ!」
「驚いたわ。まさか、新しい発見があるなんて思いもしなかった」
「凄いね!エイシャリアの力もカルロの力も!こんな特別な力を教えて貰えて、私凄く嬉しいよ!」
そんな3人をずっと静かに見守っていたティナだったが
想いが溢れ、満面の笑顔で
二人の手を取った。
「ありがとうね」
そして、シグルドの手も取る
「シグも、ありがとう」
4人が円になり
手を取り合い、向かい合う構図。
更にはそこに
満面の笑顔と、感謝の言葉
最初は面食らったものの
自然と、笑みが溢れた。
「何言ってるのよ、聖女の力、その神聖力にもちゃんと期待しているのだから、貴女もちゃんと気合いを入れなさいよね」
照れ隠しのいつものエイシャリア。
「そうだぜ!なんてったって、一番レベルたけーんだからな」
ニッ、と笑顔で背中を押すカルロス。
「ティナの事は俺が護るから、ティナは後ろからみんなを助けてくれたら良いよ」
愛おしそうな表情のシグルド。
「うん!最高のチームになりそうだね!」
そう言って、みんなを抱き寄せたティナの笑顔は伝染し
全員が良い笑顔を浮かべる。
「よーし、チーム結成だッッッ!!!」
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