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「占い」









 ——ナルディアが去った翌日。





 現在シグルドは医療従事者であるウォットの元へと足を運んでいる。





「進捗はどうかな?」







——————





 ——2年前のあの日。




 動物にはポーションが効かないのだと分かってから、魔獣や聖獣には効果があるのかとの議論の後、すぐに検証の為、リオーネの森へ向かったシグルド。





 甚振っている様で心苦しいが、最初はFランクのセフラビットの足へと麻痺効果のある弾丸の速射を放ち、動けなくなった所で捕獲した。





 ランクによって何か違いがあってもいけないので、Dランクのナサンベアも同様に捕獲。




 ただし凶暴な牙や爪、あと力も強いので申し訳ないが麻痺弾は全ての四肢に打ち込んでいる。




 更には睡眠効果のある薬品まで嗅がせてから檻に入れて運ぶ事になった。





 その後、ウォットからの知らせを受けた結果——





 ランク差に関わらず、魔獣へのポーションの効果はちゃんとある事が分かった。





 ——そして、数日間行方をくらませていたルフが帰還するやいなや




『我にも、その薬が効いたぞ』




 と教えてくれたのだ。





 度々行方をくらませて、怪我までして一体何をしてるんだ





 と問いただしたい気持ちが顔に出ていたシグルドの感情は、ルフの一声によって静止されてしまった。





『詮索は好かん』





「だからって、ルフが怪我をする程危険な事をするなんて……心配くらいさせろよ」




『フッ、その気持ちだけは貰っておこう』





 そう言って相変わらず、尻尾をパシパシと当てて来たので、それ以上の事は言えなかった。






「しかし、動物にだけポーションが効かない理由か。不思議な話だよな」




「そうですね。ポーションについて、もっと調べる必要がありそうです」





 それからウォットは、薬師ギルドへとポーション製造の為のレシピを教えて欲しいと頼んでくれているが、どうも上手くはいっていない。




 ——というのも、ポーションに限らず、レシピの公開は秘匿が当たり前。




 魔導具にしろ、料理にしろ、その職で生きていく為には必要な行為なのだ。




 更には薬師からすれば、医療を発展させたウォットは商売敵でもあるようだ。




 まぁ、全てをポーションで賄えていたものを、菌を発見し自分たちとは違う角度で人々を救ったウォットへは敵対視してしまう気持ちも分からなくはないが。




 だけど、必要な薬の調合は薬師ギルドと協力をして量産し、全てを開示してきたウォットとは仲間意識も当然芽生えているはずなのに。




 ポーションだけは頑なにレシピを教えてくれないのは如何なものか。






——————





 ——そして、現在。





「2年かけて頼み込んで、ようやく折れてくれましたよ。ちょうど今届いた所です。ポーションのレシピ」





 ドヤ顔が光る笑顔が眩しいウォット。だけどその裏には並々ならぬ苦労があったんだろうな。




『医療には薬師ギルドが欠かせません。これからもパートナーとして一緒に発展させていきましょう!』




 この言葉が決めてだったらしいけど、この7年間でウォットたち医療関係者と薬師ギルドはかなりの絆が生まれていた筈なのにな。



 まぁ、現場では熱意とか想いとかは既に伝わっていたみたいだけど、上が許可するかどうかだったって事なんだろう。





「では、こちらがレシピです」





 ——そこには、リカ草からの抽出液、活性液、水。




 実にシンプルに、それだけが書いてあった。





「なんだよ、作り方は載ってないのかよ」




「そ、そうみたいですね。しかし、リカ草が原料なのは確かに納得です!昔から塗り薬として使用されてますからね」




 リカ草——





 前世には存在しない、傷なんかに効く特別な薬草か。





「塗り薬として使用されている物は飲んでも良いのかな?」




「んー、だからこその抽出液なんでしょうかね。塗り薬の成分にはリカ草以外にも滑りを良くする為やら化膿予防やら色々入ってますからね」





 そりゃあ確かに。だからこそのリカ草の良い成分だけを抽出した液体を使うのか。



 しかも、それを活性化させる液体を混ぜる事で効果を高めると。




「んー、特別変なものは入ってなさそうなんだけど」




「そうですね、確かにシンプルです」






 単純な製造方法に呆気に取られはしたけど、知らないままだと先には進めない。




 強くなる為に必要な事か——




 やっぱりこの世界の事は、色々知っておかないといけないと思う。





 ——自分の寿命の為にも。





 後、3年半か——






 この明確な数字は、ナディが教えてくれた事だった。





——————







 ——ナルディアが来訪し、皆を寝かせた後、たわいのない会話で盛り上がり、ユグノスとも充分打ち解けていたその時





 シグルドはナルディアへの願いを伝える為に、少し緊張していた。






「ナディ、頼みがあるんだ」





 シグルドにはナルディアへの頼みが2つある。




 1つ目、青の国で出会った騎士団長コバルトの話。



 リンリンの恋人で、屍使いに殺された後、すぐさま操られ、ポーションで傷は癒えているし心臓も動いているが、生きているのに死んでいる状態で、敵を倒せば死んでしまうので、氷漬けになっている。




 2つ目、聖獣ルフの話。




 シグルドの所為で眼を斬られてしまい、視力を失った。





 この二つの件を解決できるのは、ナルディアだけである。




 意を決して、この件をナルディアに話すと快く了承してくれたのだ。





「いいよ。リンリンの特別な人と、お兄ちゃんを助けてくれた狼さんでしょ?寧ろ、助けてあげたい」






 ルフへの罪悪感と、リンリンへの心配がずっとのしかかっていたシグルドは、内心かなり心が軽くなった。





「でも、まずは診てみないと分からないよ?あと、狼さんは出かけちゃって、今いないんでしょ?それならリンリンの恋人を見に行こうよ」






 ——そう言って、リオーネ城の地下の一室へと足を運んだ一行。





 氷漬けのコバルトが安置されている。




 今ルフが不在なのは残念だけど、コバルトにまた会えるかもしれない!





 何より、リンリンの喜ぶ顔が見られるかもしれないと自然と心が跳ねる。






 しかし——





「あぁ、今は無理だね」






 ナルディアからは、少し冷たくもあるそんな一言が告げられた。





「ど、どういう事なんだ……!?」





「だって、操られてるから。このまま治しても、殺されるよ?多分そいつの能力なら、氷漬けのままでも殺せる。やるなら氷漬けのまま、敵を倒して、その後だね」




「……そういう事か……でも、良かった!ありがとうナディ。助かるんだ!!良かった……リンリンも喜ぶよ!!」






 期待していた気持ちから、もちろん残念ではあるが





 助かるか、助からないか





 そんな希望的観測でしかなかったものが





 助かる、と明確化されたのだ。





 むしろ、かなりの前進である。






 それなら話はシンプルだ。




 話に聞いていた限りだとかなり狡猾で嫌な奴らしいしな。




 姿は誰も見ていないらしいけど、声なら俺も聞いたからな。




 俺もコバルトに会いたいけど、何よりリンリンの為にも、必ず見付けてやるッ!!








「あとね、お兄ちゃん」





 誓いを立てるシグルドを、ナルディアが呼び止める。





「お兄ちゃんの寿命の話なんだけど」





 ——ドクンッ





 きた——





 シグルドにとって一番聞きたい話であったものの





 ナルディアに縋る事で





 仮にそのまま寿命を迎えた際に





 ナルディアへと、そのまま負担がのしかかる様な事は






 絶対にしたくない





 そう思うと





 自分からは到底、聞くに聞けなかったのだ——






「ごめんね。色々調べてるんだけど、まだ解決策は分からないんだ」





「……そうか。ありがとうな。俺も医療に力を入れて糸口を探してるんだが、まだまだ何も掴めてなくてさ」





 言葉に出来ない悲しみが、空気を重くさせる。




「ただ、今日お兄ちゃんを診て分かった事があるよ。前は10年くらいって言ったけど、今は残りの時間がハッキリと分かるよ」





 ——ドクンッ





 衝撃で緊張感が増し、身体が強張る。




「前世で死んじゃった時とちょうど同じくらいだと思う」





 前世で陸だった頃に死んだ時と同じ——




 って事は、——16歳の誕生日まで。





「……そっか。15歳までかと思ってたから、1年時間が増えて良かった。教えてくれてありがとうな」





 そう、強がりを見せるシグルドを、辛そうな目で見つめことしか出来ないナルディア。





「絶対、あたしがなんとかするから」




「あんまり、思い詰めちゃダメだぞ?もしダメでも、ナディのせいなんて考えるのは絶対ダメだからな」






「星占い」




『キラキラッ』





 ——そんな二人を他所に、ユグノスが部屋の天井や壁に星を映し出したのだ。





「星、占い?」




 前世で学校に向かう前に、いつもテレビで見ていたあの占い、か?




「そうだよ。まぁ、占いと言っても、多分ハズレないけどね」





「そ、そっか!ユーグの占いは100発100中なんだよ!」




「そうだね、でも、悪い占いなら回避すれば良いだけだから」




 そう言って、部屋中に散りばめられた星々は、幾度も幾度も回転し





 ——そして、ピタリと動きを止めた。





 占いを終えたユグノスは、シグルドへと向き直り、視線を向ける。




「シグ。確かに君はこのままいけば16歳の誕生日の日に生命が尽きるだろう。しかし、回避の可能性もまた同じだけ強く出ている」





「回避の、可能性……」





「強くなれ。魂の煌めきが頂へと届いた時、新たな道が開かれる」





「新たな道……」




「だけど君は一人ではなし得ない。早くその人を見付けないといけない。そして、対峙したその時、君は選択を迫られるだろう」





 ど、どういう事だ?




 一人で強くなるだけじゃダメだって事なのか?




 その人って誰の事なんだ……?





 そんなシグルドに、喜びを隠そうとしないナルディアは強く抱き付いた。





「良かったね!お兄ちゃん!とりあえず強くなる事なら、あたし達も願ったりだよ!」




「あ、ああ」






 ——強く、か。




 そうだな。




 強くなる事が最善の道なら、今まで以上に頑張れば良いのか。




 漠然と助かる道を模索していたから、取り敢えず医療方面から探っていたけど




 明確な道が分かって良かった。




 確かに強くなるって事も漠然とはしてるけど




 ——光が、見えた気がした。










お読みいただきありがとうございます!

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評価★も励みになります!続きもぜひ読んでくださいね。

この物語は通常、日・水・金の19時に更新します。

次回より、第四章の始まりです!

第4章は、仲間との成長がテーマとなってます!

バトル多めなのでバトル好きの方や2章が気に入って頂けていた方にオススメ!

次回もお読み頂けると嬉しいです!

よろしくお願いします。

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