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【7000PV感謝】いつも不遇のオレンジ色と土属性を押し付けられての貴族転生だけど、いずれ魔王を倒す〜しかも一緒に転生した子は異世界で魔法少女を望む〜  作者: 赤嶺 利空
第三章 「出会い編」

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第十五話 「来訪者」









 12歳のシグルド。




 年度が変わり、前世では、中学1年生の年であり、秋には13歳になる歳だ。




 先日、ティナと一緒に作った湯呑みと、お気に入りの緑の茶葉を送り




 出来栄えに大変喜んで貰えているとの返事の手紙を今読んでいるのだ。




 至福の時間である。





 心配していた狂気に侵された者の浄化の件も





 少しだが、減少傾向にあるとの事に胸を撫で下ろす。






 もうこの世界に来て12年




 ——あと、3年か。





 特に前世と違うのは婚約者がいる事かな





 と思いながら床に就いた所、ガタッと窓に何かが当たる音がした。





 本日は朔日。





 月の光すら無いこの日は決まってルフはいない。




 

「ハンス」





 シグルドがそう呼ぶと




 護衛執事ののハンスが




 シュッ、と部屋に入って来た。





 なんだ?





 ここは2階だぞ。





 外の警備も万全だが、狂気に侵された者達まで現れてるって話だ。





 それに、外は月の光すらないこの暗闇。






 警戒しなきゃいけない。





「窓が騒がしい。見て来てくれ」





「承知しました」





 入り口から窓に向かって歩こうとしたハンスは





 ぐらりと身体を傾け





 そのまま





 気を失った。






 ッッッ!!?





「ッハンスッッ!!!」





 慌てて駆け寄るシグルドだが、当然窓への警戒は怠りはしない。






 こんなに離れた距離から





 手練れのハンスがいきなり意識を失うなんて……





 自慢の2丁のハンドガンを窓に向ける。






「誰だッッッ!」





 威嚇すると





 クスクスと





 少女の笑い声が聞こえた。






「姿を見せろ!」






 更に威嚇すると





 なんとそこには





 見覚えのある姿が現れた。





「ごめんね、驚かせて。久しぶり、お兄ちゃん!7年ぶりだね。元気そうで嬉しいよ!会いたかったよ!」






 あ、あぁッッッ!





 思考が停止したまま





 手に持っていたハンドガンを放り投げ





 腰まで伸びたミルキーブロンドの少女へと





 一直線に駆け寄る。





 5歳の時に生き別れとなり





 そのまま音信不通となった





 心配で





 会いたくて





 何をする時でも





 心の中を占めていた






 愛すべき妹。







「ナディッッッ!!!」





 身長はエイシャリアより少し低いくらい





 ここまで背が伸びる程





 7年という時間は





 とても、長かった——





 ようやく再会を果たした兄妹は





 しばらく強く





 抱きしめ合った。





 涙でお互い言葉にならない。





 だが——





 そんなものはいらなかった。





 互いの無事を






 存在を





 確認し合えたのだから——







「大きくなったな。もっと顔をよく見せてくれ。美人になるのは分かっていたけど、本当に綺麗になったな」




 腰まで伸びたミルキーブロンドの髪に、キラキラとしたチェリーピンクの大きな瞳。




 胸元の開いた白いタイトなミニのワンピースに




 黒のニーハイソックス





 帽子とドレスの胸下からスカートに掛けてと、マント





 そして胸元に光るハート型のブローチは





 鮮やかな赤。





 母に似たのか発育の良い身体。





 もうあの幼かった面影はほとんどなくなってしまった程





 美少女に成長したナルディア。




「お兄ちゃんも、カッコよくなったね!あの時から凄い筋肉だったけど、一段と逞しくなったし!身長だってあたしよりかなり高い!もうすぐお父さんに追いついちゃうんじゃない?」




 互いの成長を喜び涙を流しながら喜び合う。




 あまりにも大声で泣く二人の声に




 何事かと従者が部屋を覗くと、大慌てでクラークとアンナを呼び




 全員で抱きしめ合い、また号泣した。




 1時間は経っただろうか。





 一様に落ち着き、ナルディアへ質問が集中したのだ。

 




「でもその前に、そろそろ俺の従者を起こしてやってくれ。やっぱり強いんだなー、これでもハンスはかなりの強者なんだぞ」




「そうなんだ。ごめんね。起こしちゃうと話が出来ないと思ったから。ユーグ、起こしてあげて」




 ナルディアが隣を見ると、少年が姿を現した。




「すみません。手荒な真似をしてしまって。僕はユグノス・ミレース。ナディと一緒にマジカルクレストをしています。ナディ、ダメじゃないか。シグルドの大切な人にこんな事をして」






 なんだ、と……?!






 ナディが





 男を連れてきた!!!






 金髪碧眼。誰もが羨む代名詞とも呼ばれるサラサラのプラチナブロンドの髪に




 碧眼と言ってもかなり濃いディープスカイブルーの瞳の少年。





 上下白の上質なスーツ





 中のシャツとマントの裏地




 そして、キラリと光る胸元の星形のブローチは





 鮮やかな青。





 絵に描いたような王子様スタイルで





 ニコッ、と爽やかなこの笑顔は





 驚きと共に





 警鐘が鳴り響く。





 皆の頭が真っ白になる中で




 クラークが意識を取り戻し詰め寄ると





 皆の思考も戻ってきた。





「ユグノス君、だったかな。娘の仲間だというが、君は何者なのかね」




「止めて!父さん!ユーグは、あたしの大切な人なんだよ!あたし、ユーグがいないと生きていけないのッ!」





 またもや一同の思考が停止する





「ほらナディ、ちゃんと話さないとややこしくなるだけだから。あ、それとこちらはご挨拶も兼ねた焼き菓子になります。お口に合えば良いんですが。どうぞ皆様でお食べ下さい」





「これはこれはご丁寧に」




「まぁ、これは!幻のピュアーラの焼き菓子」




 挨拶を交わした後頂いた焼き菓子が、巷で話題の幻のスイーツだと分かり、歓喜に震えるアンナ。




 どこから仕入れているのかすら分からない幻のスイーツで、幻の果実と呼ばれる美容成分たっぷりのピュアーラの果肉がふんだんに使用された見た目の華やかな焼き菓子である。





「ご存知頂いていて光栄です。こちらは我が国、精霊界の名産でございます」




「精霊界の!?幻のスイーツが食べられるなんて!夢のようだわ!」




「そしてこちらは閣下へ。音の魔法石です」




「な、なんと!これ程貴重で大きな魔法石を!?」




 音の魔法石はとても貴重な物で、録音、再生はもちろん、音波を飛ばして敵を気絶させたりと、様々な用途で使用が可能。




 ハンドボール程あるこの大きさなら、街一帯に轟かす拡声器としても充分であるし、砕いて加工する事で更に多機能に使えるだろう。




 顔には出さないが、クラークの瞳がキラキラとしている。とても喜んでいるのだろう。




「こちらは奥様に、ピュアーラから抽出した化粧水でございます」




「まぁ!ピ、ピュ、ピュアーラの化粧水ですって!!?」




 最近肌の乾燥を気にしていたアンナにとって、まさに喉から手が出る程の救世主に、満面の笑顔になる。




「ふふっ、喜んでくれて良かったね!ユーグ!」



 大歓喜のアンナとクラークに満足したのか、ニッコリと微笑むユグノスに、笑顔を向けるナルディア。




「あと、シグルドさんには——」




「あ、それは後にしよう。お兄ちゃん!また後で渡すね」




「あ、ああ。ありがとう」




「い、今すぐ!今すぐにお茶の用意をなさい!おもてなしをしなければ!当然、最高級茶葉を!みんなで、ピュアーラの焼き菓子を頂きましょう!!」




 深夜であるにも関わらず、欲望に負けるアンナ。




 急いで侍女がお茶の準備をしてくれ、皆でピュアーラの焼き菓子を食べる為、席に着く。





「これが一生に一度食べられるかと言われるピュアーラの焼き菓子」




 初めて目にしたピュアーラの焼き菓子は、5人の冒険者パーティの形だった。




 剣を持った男剣士、盾を持った女戦士、杖を持ったローブの魔法使い、弓を持った長髪のアーチャー、そして祈りを捧げる僧侶を模している。




 薄い皿のように敷かれたフィナンシェの上に立っている透明な造形部。




 魔法使いは青、僧侶は赤、女戦士は橙、アーチャーは緑、そして男戦士は黒。それぞれの周りにはエフェクト付きの飴細工で色が分かれていた。




 え?僧侶だよな?フードを被り、お祈りをする姿は、前世では見慣れたソレにしか見えない。でも回復魔法の存在しないこの世界で、僧侶?




「まぁ、聖女様までおられるのね」




「いえ、この方々は遥か昔に存在したとされる勇者パーティの面々です」




「勇者パーティ?」




「えぇ。創世の頃のお話ですがね」





「さぁ!頂きましょう!これ以上お待たせしたらピゥアーラに失礼だわッッッ!あぁ、美味しそう!これが噂のピュアーラなのねぇー」

 




 瞳を輝かせるアンナを横目に、不思議そうにピュアーラを眺めるシグルド。




 そんなに美味いのかな?造形は確かに独特だけど。





 そう言って、口に入れたそのあまりの甘美な味は





 グルメものの漫画のように




 オーバーリアクションをしても過分ではない程だった。






「ん、まーーーいッッッ!!!」




「この芳醇な甘味、とろける口溶け、それでいてコクのある味わい、どれをとっても最高級ッッッ!!!」




「なんと甘美なッッッ!!!甘さの中にコク、コクの中に甘味、この何層にも続く至福の連鎖は極上の一品ッッッ!!!」





「ふふっ、ご満足頂けて良かったです」





 頬がとろけて落ちてしまいそうな3人を見ながら、微笑み合うナルディアとユグノス。




 何より、心から喜ぶナルディアに、胸が熱くなるユグノス。




 そんなユグノスを見て、シグルドの警戒は薄れつつあった。




 しかし!




 それはそれ!これはこれ!




 ナディが男を連れて来て、更には




『あたしの大切な人なんだよ!あたし、ユーグがいないと生きていけないのッ!』





 な……なんて……パワーワードを……





「ちゃんと、説明して貰えますか?」




 真剣な表情で見つめるシグルドに、優しく微笑むユグノス。





「僕を信じて頂けるのでしたら、僕の力で記憶を共有します。よろしいですか?」





 やっぱりユグノスって少年は常識人のようだな。




 敵意が無い事が分かって、少し安心する。






 了承した一同の意思を受け取ると、ユグノスが指を鳴らした。





 パチンッ——





 すると





 無数の青い星の光が





 皆の頭上に降ってきたのだ。







 当然身構えはしたものの





 すぐに青い星の光が大きく弾けたかと思うと





 フワッ、と






 意識が遠くなる感覚に陥った。








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この物語は日・水・金の19時に更新します。

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