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【9000PV感謝】双極の花紋〜転生しても、君を必ず護ってみせるから〜  作者: 赤嶺 利空
第三章 「出会い編」

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第二話 「お披露目会」







 


 

 王城に着くと門番に深く礼をされ通される。




 巨大な薔薇のアーチをくぐり



 綺麗に手入れされた薔薇の庭園の中央にある中庭に入った。




 今回ここが、会場になるそうだ。



 薔薇、薔薇、薔薇。



 確かに俺が女なら



「まぁなんと綺麗なんでしょう!!この世の物とは、思えませんわ!」




 てな言葉くらいは自然に口から出て




「感動で暫くは動けません」





 てなくらいには頬を染めて





 大はしゃぎしそうだけど。





 残念ながら俺は男だからな。





 花を愛でる趣味はないんだよなー。





 花を見ると




 どうしても





 思い出してしまうから——






 そう思い薔薇には見向きもせずにスタスタ歩いていくが、これだけ至る所に薔薇が咲いていると嫌でも視界に入る。




 見て!と訴えかけられているようで、だんだんうんざり思えてきた。




 ずっと薔薇の匂いに囲まれているしな。もうお腹いっぱいだ。




 そう思い歩いていたシグルドだが、ふと、足を止める事になる。



 美しく咲き誇る赤や白、黄色や紫やピンク。




 色取り取りの薔薇達に負けない、愛嬌のある薔薇。




 その大輪の橙色の薔薇に目が止まった。




 オレンジの薔薇、か。




 シグルドが前世で陸だった頃、小学校の同級生の松井まつい ぜん篠原しのはら あんと仲が良く、いつも一緒にいた。




「ねぇ禅くん陸くん、このガチャガチャ3人で回してみよー」




 確かあの日、どっかの店先で『あなたの心のカラーが分かる!』というガチャガチャを見つけたんだ。杏が3人でしたいって言って回したんだったな。




 杏は天真爛漫な性格で、突拍子も無い事をよく言う女の子だった。それを禅がいつも見守ってあげてたんだよな。禅はホントに優しい男の子だった。



「あー!ガチャガチャだー!いーね!やろう!何が出るか楽しみだね!」




 こういった時は決まって




「学校帰りに寄り道はダメだ」




 って制止するのに、禅もガチャガチャが好きだったから、引いたんだったな。



 それぞれが、ガチャガチャを回すと、杏は水色、禅はピンク、陸には、オレンジが出てきた。




「あはは、禅くん男の子なのにピンクなんだね!あたしも水色だし!こーゆーのって原色が出るもんじゃないの?あはは!陸くんはオレンジ色、あはは!ビタミン!あはは!あれ?オレンジの薔薇が咲いてる!薔薇って赤だけじゃないんだねー」




 小学生の頃なんてこんなもん。



 興味がある事にどんどん話がそれて行ってたな。




 そう言って笑ってた橙色の薔薇。




 あの薔薇もちゃんと見たらこんなに綺麗だったんだな。




 つい、昔の事を思い出してしまった。楽しかったな。




 あいつら元気にしてんのかな?また、会いたいな。




 無理だけど。




 そう思い眺めていると。誰かがシグルドに話しかけた。





「お好きな薔薇は見付かりまして?本日はようこそお越し下さいましたわ。わたくしは、花の国ロズベルト帝国皇女。エイシャリア・ロズベルトですわ。土の神童シグルド様。わたくし、貴殿に是非一度お会いしたかったのです。どうぞ、本日は楽しんで下さいませ」




 綺麗に手入れをされ、緩く巻かれた藤色の髪に、桔梗色の誇り高い瞳。




 10歳児にして既に綺麗なその顔は、成長すると絶世の美女になりそうな程。




 紫のドレスを身に纏い、優雅に洗礼されたカーテシーを披露する。




 確か、皇族に生まれながら、四属性の不遇の一途を辿って来た土属性を持つ姫君だな。





 確か隔世遺伝だったか。




 最近は、土の神童の噂や、土属性の娯楽も人気な事で、土属性の可能性に注目が集まっている為、世間からの風当たりは緩和されたみたいだがエイシャリア殿下の幼少期には皇族であったからこその苦い経験も当然あっただろうって話だ。




 辛かっただろうな。俺は橙の国の貴族だから優遇されて来たけど、異国ではそうもいかないだろう。




「これはこれはお初にお目にかかります。橙の国の侯爵家が嫡男。シグルド・アトリビュート・リオーネでございます。本日はお招き頂きありがとうこざいます。ここの薔薇はとても綺麗ですが、お美しい殿下の隣では、それも霞んでしまいますね」




 シグルドも綺麗に貴族の挨拶で返す。



 貴族の紳士の嗜み。女性には最初に何か褒めなければならない。




「まぁ、お上手ですわ」




 エイシャリア殿下も慣れた返事を返していた。




「貴殿があの、土の神童か。さすがは髪も瞳も橙色だな。いや、これは失礼。花の国、公爵家が長子。カルロス・コルベラーナだ。お初にお目にかかる」




 突然姫の隣にいた男に話しかけられた。



 ニカっと笑い気さくな少年は、栗色の髪に梔子色の瞳。




 まだあどけなく可愛い顔をして、暗めの黄色味の膝下まであるジャケットを羽織りピシッと決めているが、同い年にしてはかなり背が低い。




 サイズがキッチリ合っている為、不恰好では無いが、締まらないのは否めない。




 確かに俺の容姿は母様と同じ薄橙色の髪に、父様と同じ琥珀色の瞳。どちらも、土属性の色だ。




 だが顔は両親に似たというよりは、不思議な事にら前世だった陸の顔がベース。両親の綺麗さでなのか、補正がかかっている。




 元々一般的には綺麗な顔だった陸の顔が更に良くなっているのだからモテそうな顔だと言われているので満足はしている。




 普段からのトレーニングで鍛えられ、背も順調に伸びている。それでも、前世の幼馴染には負けるのだが。




「ご存知頂けていたようで、光栄にございます。だだ、噂が一人歩きしたと言いますか、私などに通り名など誠に恐縮に感じております。カルロス様のお噂も兼ね兼ね。先日、エイシャリア殿下専属の従者になられたそうで、おめでとうございます」




 公爵家にして、代々王家の宰相を務めるコルベラーナ家。



 今代は、殿下と同じ年の子が産まれたので10歳にして早々に殿下専属の従者になったのだ。いずれは彼も宰相を務めるのだろう。




 しかし、姫に近侍?男がつくのも珍しいが。




「さすがに生後8ヶ月から普通に話す程だ。聡いじゃないか。今年は、緑の聖女も参加なさるのでな、楽しむと良い。せっかくの土の神童に出会えた誼みだ、敬称は良い、カルロと呼んでくれ」




「ありがとうございます。では、私も、シグとお呼び下さい」





 なんて気さくな貴族もいたもんだ。だが、聡いのはお互い様じゃないか?



 貴族の子供だからって流暢に話すのが当たり前なのか?前世でのガチャガチャの一件はちょうど今と同い年くらいだったと思うんだがな。



 カルロスは終始笑顔で対応してくれ、最後には握手を求められた。




 固く握手を交わし




 体が近寄った時に耳元で





「今度身長の伸ばし方、教えてくれ」




 そう言ってニカッと笑い爽やかに去っていった。





 エイシャリア殿下も軽く会釈をし、カルロスに引かれ、来賓者達に挨拶周りを再開している。






 王族なのに挨拶周りをするのは、『まだ正式な社交界ではないから』らしく、これから主催者側に立った時の、俺たちへのお手本の為、との意向だそうだ。




 その時




 薔薇の庭園を少し激しい風が吹き、来賓者達に薔薇の花びらが舞う。




 息を飲む程に綺麗で色鮮やかな花びらに一同は目を奪われ感嘆の声を上げる。





 ——だがそんな中





 雰囲気にあまりにも似つかわしく無い表情が目に留まる。





 鼻の下が伸び、およそ10歳児とは思えない




 下卑た厭らしい顔だ。





 あっ、スカートか。




 みんな薔薇の花びらが舞ってるから上を見てる中で、風でスカートが捲れ上がるのを察して




 下を見て鼻の下を伸ばしてるなんて





 ……カルロ。





 爽やかな笑顔で去って行ったばかりなのに、台無しじゃないか。




 ——そんなカルロスの視界を遮る様に、





 そっと間に入り





 音もなくズンズンと近付いて





 恐ろしい笑みを浮かべる





 エイシャリア殿下に気付いた後の





 みるみる青ざめていく顔がまた面白い。





 ぷっ、友達になりたいな。また、あいつらみたいな。




 この世界に来て、初めてそう思わせてくれたのだった。






 賑わいを見せるパーティ会場。





 さすがに土の神童と呼ばれるシグルドの周りには代わる代わる令息令嬢達が挨拶をして来た。




 と言っても、土属性。





 髪や瞳を見るに、やはり同じ土属性の者が多い。




 中には全く違う色合いの者もいたが、エイシャリア殿下の件もある。一概には言えないが、土属性持ちである可能性は高そうである。



 そしてやはり




 シグルドを遠巻きに眺め




「ふーん、アレが」




 そうやってコソコソと品評している者もいる。





 聞こえてるからな。





 だが、エイシャリア殿下も土属性の為だろう。近年での橙の国の成長だけでは片付けられない程、この会場内の雰囲気は柔らかい。




 会場内での人の輪は、大きく分けて3つ。



 エイシャリア殿下とカルロ、この2人の周りと




 俺の周り





 そして残り1つはたぶん先程話題に出た




 『緑の聖女』様だろうな!




 聖女様、聖女様だ!やっとお会い出来る!実は先程名前が出た時から耳がピクピクと反応する程、俺は聖女様にお会いしたかったのだ!!!




 だからって狂信して群がるような不躾な事はしない。冷静に、完璧な初対面を演出する帰還をずっと待ってたんだ!




 確か、緑の国のメィリッヒ公爵家の令嬢だったはず。



 公国だから姫に当たられる、更に高貴なお方だ。



 つまり、当然こちら赴くのは当たり前だ。





 エイシャリア殿下達は、主催者だったので、それぞれが挨拶に出迎えてくれていたが、それは異例中の異例。




 本来は、皇族が挨拶回りなどしない。こちらから出向くのが当然である。




 子供達だけの社交界という名目だけに今回はお手本として、出迎えてくれた訳だが。




 無礼講の場ではないので、さすがに緑の聖女には、シグルドから伺わねば失礼に値する。



 聖女を神格化しているシグルドに、そんな事は関係ないのだが。




 いざ、と




 鼻息を鳴らし、自身の周りの取り巻き達に区切りを付け、緑の聖女を取り巻く人の輪の中に入る。








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この物語は日・水・金の19時に更新します。

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