第十四話 「可能性」
瞳を輝かせながらシグルドの反応を楽しんでいる蜘蛛の花紋使いの虫人。
「……あぁ、貴方に倒されたナサンスパイダー……あの戦いでは貴方の悲鳴を奏でる事が出来ませんでしたからね……もう少し、楽しませて頂かないと……」
次々とFランク魔獣のセフスパイダーを産み出し続ける。
「土を司る精霊ラゴンよ。
橙煌めく全てを飲み込みし土壁を
我が魔力を糧に顕現せよ!
『クイックサラス』」
しかし、瞬時にセフスパイダーは、シグルドの土魔法によって隔離され、それぞれが土に押し潰されたのだ。
「共喰いをしないと進化出来ないなら、そんな事はさせないよ」
あまりにも呆気なく殺された同胞たちに、目を丸くし、理解を失う蜘蛛の花紋使い。
「……ふふ……ふふふふふ……あぁ……楽しませて頂きありがとうございます……出来るだけ長くこの時間を楽しみたかったですが……ご要望にお応えしないのは、不粋ですからね……ワタクシがお相手を致します……」
しかし、糸を出したり鋭い手の鎌で攻撃を繰り出してくるものの、全ての攻撃が軽い。それを土魔法や銃でいなしながら様子を伺うシグルド。
……ナディと同じ、花紋使いか……。さて、どうするか。幸いこいつは俺を舐めてるらしいが。遊んでいるのか?
ナディと同じなら、あの強靭的なパワーとスピード……少しも気を抜く事は出来ない。俺はこの子たちを護らないといけないんだ!
攻撃を防ぎながらも必死で光明を探すシグルドは、クラークが教えてくれた事を思い出す。
『シグルド、よく聞くのだ。残念ではあるが、土魔法の攻撃は所詮土の塊に過ぎない。だからこそ防御力特化ではあるが、その攻撃は、打撃攻撃と変わらない。ロックサラスの魔法ですら石ではなく固めた土でしかない為、攻撃力はさほど無いのだ。これが、土魔法が不遇である所以となっている』
確かに、さっきロックサラスを当てても、こいつには全く通用しなかった。しかもナサンスパイダーと違って関節にも銃は効かない。
だからと言って父様みたいに、爆裂弾も使えない俺には、攻撃手段はない。パワーとスピードに加え、防御力までなんてチートにも程があるぞ……。
攻撃をさばき続けるシグルドに、鋭い鎌を振りかざす蜘蛛の虫人。しかし、腕に装着されたガントレットで力を流し、懐からジャンプし顔面に蹴りを入れ、また距離を取る。
「……なかなかやりますね……ワタクシの攻撃をいなすとは……更には、ワタ、ワタクシのこの綺麗な顔を……あし……足蹴に……ギィィィィィィィィィ!!!」
激昂し、何度も何度も鎌で打ちつけてくるが、土魔法のプロテクトサラスで防御をするシグルド。
なぜか防御は出来ている。土魔法だし、防御特化だからと思っていけど、そもそもナディと同じ花紋使いならナディと同じあの脅威的なパワーがあるんじゃないのか?
それを防げるものなのか?
そもそもこいつも魔法少女なのか?あ、男だから魔法少年か。いや少年って歳じゃないからそもそもがおかしいのか。
何にせよ違う気がする。あの独特の衣装を着ていない。考えても埒があかない、寧ろ聞いてみるか。
「お、お前は、魔法少女なのか?」
「……魔法……少女?おやおや……貴方は私が女の子に見えているのですね……いくら虫人といっても性別の区別くらいは付きそうなものですがね……ふぅ、残念でなりませんね……貴方には芸術を見る根本的なセンスが無いのでは?……いや虫人は初見のようですしね……さすがにそれは意地悪が過ぎると言うものでしょうか……いやしかし——」
虫人の一人語りを良い事に、思考を再開するシグルド。
やはり違うのか。となるとナディの言う魔法少女ってのは花紋使い全てを指してる名前じゃないのか?それともこいつが変身前なのか。いや、口ぶりからしてそれも違うな。
そうだ……根本的な事を忘れていた。
あの時ナディは変身前にはあのパワーがあったんだ!
だとすればおかしい。さっきのブチ切れた攻撃は手加減した様には見えなかった。つまりこいつの攻撃は土魔法で防げるって事だ。
それはつまり、花紋使い=魔法少女ではないって事だ。
魔法少女は、力が強く、高い所まで飛べ、頑丈で、素早さもある。確かにナディはそう言っていたからな。
こいつは確かに硬いが、それは蜘蛛特有の外骨格だし、素早いとかジャンプに至っても同様に蜘蛛だからで片付く。
つまり、ナディが別格なだけで脅威的なパワーはない。能力は厄介だが、防ぐ事は可能。やはり必要なのは攻撃の手段か。
現状、銃も魔法も効かない相手にダメージを与える手立てがない。
防げている。これを単純に考えると、相性の違いはあれど、魔法としての『力』をみるなら土魔法が弱い訳ではないと言う事だ。
それなら土魔法をどうにか工夫出来れば、何か攻撃に転じられれば。
「……考え事が過ぎやしませんか?」
不意に、死角から糸で足を掬われ、顔面に蹴りを入れられ、地面に投げ出されるシグルド。
「……ふう……仕返しなどとエレガントさに欠けているのは存じておりますがね……許されない罪には罰を与えなくてはいけません……」
地面に投げ出され、伏しているシグルドに、ゆっくりと近付く虫人。
「やめろーーーッ!!」
子供の声と共に、カツン、と石が飛んだ。
それは、シグルドと共に逃げてきた、年長の男の子。
シグルドを護るために投げた石が虫人の脚に当たり、弾かれたのだ。
「おぉ……?」
ゆっくりと、視線が子供たちへ向く。
「元気ですねぇ……」
にたり、と笑う。
「……壊したくなる」
虫人の口から放たれた糸が、一直線に子供たちに放たれる。
「させるか——!!」
「土を司る精霊ラゴンよ——!」
「護れッッッ!!!」
土が盛り上がる、しかし、その土は、なんとも歪で、固まりきらない、崩れた土——
土魔法の衝撃は凄まじく、シグルドは地面を転がる程だった。
はぁはぁ、子供たちは!?
衝撃で同様に吹き飛ばされてはいるものの、なんとか糸から子供たちを護る事が出来たのを確認したシグルドは、深く安堵する。
はぁはぁ、ま、護れた!!防げた!!だが、なんで固まらないんだ……!?
その手を見ると、崩れた土。さらさらと、指の間から零れ落ちる。
砂……?そうだ土は砂の塊!!
土を更に固める魔法攻撃は、ただの打撃攻撃でしかないから、あの外骨格に吸収されるんだ!!
それなら、土を固めるんじゃなく、細分化した砂ならば、関節や隙間や内側に届くかも知れない!
壊せないのなら、お前の中から侵してやるッッッ!!
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