第十話 「花紋の卵たち2」
「あー良かった! これからよろしくー! 良ければみんなの魔法も教えて欲しいなー!」
リコスの意見に乗せられるのも癪だけど、まぁ気になるし、続けるか。
「そういえば、ラフェルは癒しのイメージと能力が違うって言ってたよな?」
「ん? そうだなー。あーしはさ、蝶の虫人だから、やっぱり蝶に囲まれてるのが癒しなわけよ。でも、あーしの能力は、たぶん身体強化だから、何これ? って感じ」
「身体強化? あら、魔法には存在しない力ですわね。力が増したりするのですか?」
気功では身体強化が可能だが、気功自体はあまり知られていないらしいからな。
「そーそー。あとは、傷の治りが早かったりとか?」
「蜘蛛の虫人のトレンドルは、蜘蛛の花紋だったんだよ。てことは、ラフェルも蝶の花紋かもしれないな。ただ、蜘蛛の虫人は、欠損部位でも再生したし、虫人は再生するもんだと思ってたんだが、違うのか?」
「うわー、お兄さんそれ偏見だからな! 蜘蛛って、脱皮で四肢の欠損とかは再生するんだけど、トレンドルは頭のおかしな芸術家で、自分の肉体を改造してたらしいんだわ。だからそんな芸当が出来てたってわけ。普通、虫人は再生しないからな」
トレンドルは、肘から先を瞬時に再生させていたから虫人由来のものかと思ってたけど、あれは、そういうことだったんだな。
そうか。あいつは、芸術家か。
言われてみれば、それらしいことを言っていた気がする。
「そうなのか! 悪かったな。なにせ、初めての亜人がトレンドルだったから、あいつのイメージで、染められていたみたいだ。これからも間違ってたら、ちゃんと指摘してくれるとありがたい」
「あー、いや、こっちも悪かったよ。シグだっけ? そう呼んでも良いか?」
頭を掻きながら、バツが悪そうにするラフェル。
ラフェルは、さっぱりした奴みたいだな。
好感が持てる。
「あぁ、もちろんだ! みんなも気軽にそう呼んでくれると助かる。あと、リコスとチェルも愛称で良いか?」
「ええ、喜んで」
「オケー」
シグルドの言葉に、リコシュテットとチェリッシュも同意する。
「で? なんでシグはここにいるんだよ? 土の神童は有名人だから、相当な土魔法を使えるんだろ?」
まぁ、当然の疑問だよな。
これから仲間になる以上、きちんと話しておかないとな。
「確かに俺は土魔法が得意なんだが、何故か使えなくなってここにいる。だから、みんなみたいに花紋使いの卵じゃないんだ。だけど、足を引っ張るつもりはない。魔法のことも必ずなんとかするが、魔法がなくても、俺はそこそこの実力はあるからな」
「やはり。シグ様を初めてお見かけした時には、既に魔法以外でも相当な使い手として有名でしたものね。シグ様の強さに関して、疑う余地はありませんわ」
「ありがとうな。あと、チェル、敬称も敬語もいらないからな? ってか、チェルは風魔法は使えないのか?」
「ありがとうございます。ただ、私はこの口調が素なのでご容赦くださいな。それと、私は風魔法はまったく。代わりに、布を自在に操れますわ」
そういうと、テーブルクロスがシュルシュルと動き、薔薇の形へと変化したのだ。
「凄いな! 触れているだけで勝手に! これは、対人戦では万能すぎないか!?」
「あら、ご名答! なのでご安心くださいね、みなさん。何かお困りごとがあれば仰ってくださいな。隷位なんて言う輩には、いつでもお灸をすえて差し上げますので」
にっこりと微笑むチェリッシュに、苦笑いをするシグルド。
あー、貴族の女性ってやっぱり強いんだな。
それにしても、緑の国の貴族なら、風魔法を使えてもおかしくないんだが、チェルは風属性じゃないのかな?
カルロやエイシャリアも、花紋使いみたいな魔法が使えたけど、四属性も扱えたのにな。
「なーに言ってんだ! あーしは自分の敵は自分で仕留める主義だぜ!」
「僕も、大丈夫。これでも、けっこう強いからね」
「ん? レイリーだっけか? その小っこい身体で強さに自信があるのか? 能力か?」
「僕は、武器の扱いが得意なんだ。昔からどんな武器でも扱えるんだよね、へへ、それだけが得意なんだ」
気にはなっていたが、レイリーはかなりオーバーサイズの黒のローブを着ていて、背は低いが、華奢には見えない。
そして、手元すらも全てを隠している。
「——お前……」
……暗器使い、なのか?
暗器とは、殺しの道具だ。
服の中のあちこちに、様々な武器を仕込んでいる。
「凄いね、シグくん。大丈夫だよ。僕はまだプロじゃないから」
俺の視線だけで
俺が気付いたことに
気付いたのか
こいつ、思った以上にやるぞ……
「そうか……。あらゆる武器を使えるなら、例えば剣の道を極めようとかは、思わないのか?」
「んー。幸せな考え方だね。羨ましいな」
光が一切ない黒い瞳で、薄く笑うレイリー。
レイリーか……こいつ、かなり闇が深そうだな。
「なんだよ、二人で話進めてんじゃねーよ! あーしたちは仲間になんだからよ!」
「あ、うん。剣だっけ? 分かったよ。僕は剣で前衛に立つよ」
「そーじゃあねぇ! ちゃんと能力は言わなきゃ分からないだろってことだよ!」
「あ、ごめんね。でも、言った通り、僕は武器の扱いが得意なんだよ。逆に、魔法は全然ダメなんだ」
「ふーん。じゃあ、前衛は、あーしとレイリーだな。ん? チェルも前衛か?」
「私は中衛くらいが丁度良いかと。魔物は服を着てませんしね」
「確かにな。じゃあ、チェルとシグが中衛か。リコスは、戦えんのか?」
「えー? 僕はねー、後衛がいーなー。魔物と仲良くなるためには時間がいるからねー」
そうか。
ラフェルが身体強化での前衛
レイリーも剣や他の武器で前衛
チェルが布を操れるから、ある程度距離を稼げると
で、俺はもちろん中衛
リコスの能力は魔物にも効くっぽい、と
——ん?
「チームってことだけど、ダンジョンにでも行くつもりなのか?」
「おや、ご存知ありませんでしたかな? 学園の最初の授業は、黒階段から向かう、オリエンテーションですよ」
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