↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【1万PV感謝】双極の花紋〜転生しても、君を必ず護ってみせるから〜  作者: 赤嶺 利空
第五章 「学園編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
111/113

第九話 「花紋の卵たち」

「おやおや、まだ教室にすら入ってなかったのですか? ホームルームが始まりますよ」


 突然背後に気配がしたかと思うと、ルーベルが声をかけてきた。


「え? ルーベル先生!? もう手続きは終わったんですか?」


 ルーベル先生と別れた後、少しティナと話をしていたにしても、そのまますぐこの旧校舎へと向かったのに、もう追いついて来たのか!?


 職員室は別棟にあるはずなのに、手続きまで終わらせただと!?


 さすがに、早すぎだろう!?


「おやおや。確かに、私としたことが少しはしゃいでしまいましたね」


 はしゃぐ!? なんだ? スキップでもしたから早く着きすぎたとでも!?


「ふふふ」


 能面のように表情を一切変えない人だけど、これは、楽しんでいるのか?


 掴み所がないな。まぁ、ずっと俺の担任宣言をされた以上、慣れるしかないんだろうが。


 校舎の中へ入ると、外観の印象どおり廃屋と変わらないほど酷かった。


 唯一掃除だけは行き届いているものの、木造の床は軋み、すきま風のせいで室温は屋外と変わらない。


 学校なんだから、さすがに掃除だけじゃなく、手入れくらいはして欲しいよな。


 風が吹いただけで、ヒューヒュー、ガタガタうるさいったらない。


 んー、これはいつも愛用してる砂除けのローブを羽織るしかないかもな。


 だが、教室に入ると室温は暖かかった。


 日が差し込み、すきま風もなく、ジメジメとした空気さえもない。


 あれ? なんだよ! 綺麗じゃん!


 風もないし、ちゃんと暖かい!


 教室はちゃんと勉強が出来るように完備されてるのか!


 と、いうか……狭いな。


 室内には、教卓と黒板の前に、5つの机と椅子を並べて丁度良いくらいの広さしかない。


 まぁ、隷位だからな。


 さすがに試験で成果を出せない程の生徒は、極めて稀だってことだろう。


 そもそも入学時の魔力測定の時点でマナ量を判定されてるんだ。


 一定数のマナ量以下の生徒は、入学前に除外されてる。


 それだけ隷位への配属は、稀だってことだな。


 全員が揃い、ルーベルが5人の生徒を見つめる。


「では、初めまして。私はルーベル・ウィニキートス。ここにいる皆さんは、試験結果がそぐわなかった方々です。しかし、私が担任をする以上、次の学期末試験で、全員最下級クラスから卒業して頂きますので、覚悟して下さい」


 その言葉に動揺を隠せない生徒たち。


「先生、失礼ですが、お聞きしてもよろしいでしょうか?」


「どうぞ。チェリッシュ・ヨーリンバー」


 チェリッシュ・ヨーリンバーと呼ばれた生徒は、金髪をポニーテールにした淑女らしい佇まいの少女。


 この子は確か、緑の国出身だったかな。お披露目で見たことがある。


 と、いうか、何故か机にテーブルクロスを敷いているのが、気になるんだが。


「このクラスは、花紋使いの卵の方が多いとお聞きしてますわ。まだ種降祭前で、種子も授かっていない今だからこそ、自身の属性も分かりません。そんな私たちが、魔法で成果をあげられるのでしょうか?」


 もっともな意見だな。


 だけど、カルロやエイシャリア、それに、リンリンだって、属性が分からなくても、魔法を扱えていたんだ。


 きっと、方法はあるんだろう。


「ごもっともですね。ですが、分からないなりに、属性を知る方法はあります。この中には、既に属性をご存知の方もおられるでしょうし、中には、何の属性かもあやふやなまま、能力を扱えている方もおられるでしょうが、みなさんにやって貰いましょう。目を閉じてください」


 やはりな。だけど、面白そうだ。


 ルーベルは、皆が目を閉じるのを確認すると、再び話し出した。


「あなたが一番落ち着くものを思い浮かべてください。水のせせらぎや、木漏れ日、焚き火。落ち着くものは、皆、様々です。見た目のイメージ以外でも良いですよ。柔らかいものに包まれている感触、音、匂い、なんでも大丈夫です」


 落ち着くものか


 俺にとっては何なんだろうな。


 イメージ……イメージ……


 いつもの瞑想のように、精神を集中させ心の中を覗いてみる。


 ——すると


 橙色に広がる、砂漠の景色が、リオーネの景色が一面に広がった。


 そう、か……


 逃げ出して、今ここにいるのに


 懐かしいなんてな。


 前世の景色でもなく、誰かの顔でもなく


 12年間生まれ育った地元の景色が


 俺にとっては


 一番落ち着く場所なんだな。


 生徒たちの表情を観察し、満足そうに話を続けるルーベル。


「どうやら、皆さんそれぞれ思い浮かんだらしいですね。そして、その癒されるイメージと、ご自分の未知なる魔法の属性に類似性があるはずです」


 そうか、砂、か。


 やっぱり俺にとっては、特別な繋がりがあるのかもな。


「えー? 先生ぇー! あーしはまったくもって、イメージと能力が違うかもですー」


「おやおや、珍しいですね。ですが、ラフェル。それは、あなたの使う魔法の属性や効果への認識が間違っている可能性が高い。癒しのイメージこそが、あくまでもあなたの属性のイメージになります」


 ラフェルと呼ばれた生徒は、かなりの美人だが、紫髪をショートカットにしたボーイッシュな少女。


 既に制服は着崩され、スカートなのに、大股開きで座っている。


「えー? 僕はねー、イメージどおりだったけどなー? みんな幸せそうだったしねー。癒されたよー」


 間延びして話すのが特徴的な、灰色のくせっ毛で、今にも眠りそうな程、まったく開いていない糸目が特徴の少年。


「それは良かったですね、リコシュテット。まぁ、あなたの能力だとそのイメージはピッタリでしょうね。では、このまま自己紹介も兼ねて、皆さんで話しあってください。これからこの5人がパーティになりますからお互いを知っていただくのは必須ですからね」


 そう言って、教卓にある椅子に腰掛けるルーベル。


 これから、この5人でパーティを?


 まぁ、そりゃそうか、授業内容によっては、狩猟とかもありそうだしな。


「じゃあ、自己紹介をしようか。俺は、シグルド・アトリビュート・リオーネ。まぁ、代表挨拶で知ってると思うが、これからよろしくな」


「お噂は本当だったんですね。シグルド様がまさか隷位だなんて。あ、失礼を。私はチェリッシュ・ヨーリンバーです。よろしくお願いします」


「あーしは、ラフェル! あーしは虫人だよ! よろしくな」


「虫人!? 虫人にしては、かなり人に近いんだな」


 確かによく見ると、頭の上に触覚が2つ付いている。


「ん? お兄さん虫人は初めてじゃないんだ? でもあんまり亜人のことは知らないみたいだね。あーしら虫人は、獣人と同じで変身出来るんだよ」


 変身?


 人の姿から虫の姿になれるってことか?


 獣人も変身出来るみたいだけど、話的に獣人の方が虫人よりも一般教養っぽいんだが、俺は獣人を見たことがないから、まったく分からない。


「それであの時の虫人は、見た目も蜘蛛の姿だったのか」


「あー! トレンドルでしょー! あーそっか! あいつを倒してくれたのはお兄さんか!」


「いや、名前は……知らないんだ。知り合いなのか?」


「いや、知ってるだけ。あぁなるまでに、かなり苦しんでたって。だから、救ってくれてありがとな」


「そうか……。いや、礼を言われるようなことはしていないんだ。ただ、安らかな最後だったよ……」


 トレンドル、か。


 名前が知れて良かった。


「そういえば、花紋のせいで狂人化していたって聞いてたけど、お前たちは大丈夫なのか?」


 シグルドは全員を見回し、尋ねる。


 すると、校舎前であったレイリーが俯きながら答えてくれた。


「……確かに怖いよね。まだ、種子を受け取ってないから、まだ何の影響もないけど、開花したら……どうなるかは分からないんだ。あ、僕はレイリーです。よろしくお願いします」


 その答えに皆が暗い表情を見せるが、リコシュテットは違った。


「僕はねー、リコシュテットだよー。よろー。でも今は、聖女様が浄化してくれるしー、みんな大丈夫だよー」


 ——カチャ。


 リコシュテットの声や、表情を認識した瞬間——


 心に何かが干渉するのを感じた。


 穏やかに、だが確実に心が解けていく。


 なんだ? これは


 魔法——?


 いや、それよりも


「リコシュテット! これからは、リコスって呼んで良いか? 俺はシグって呼んでくれ」


「私もチェリッシュは長いので、チェルと」


「なんでかな? リコスとは初めて会った気がしないよ」


「分かる! あーしも、旧知の友って感じがする」


 この異様な光景に誰も違和感を覚える者はいない。


 教師であるルーベルでさえも微笑ましく見つめていた。


 ——だが


「リコシュテット。それ以上はおやめなさい」


「えー、僕は何もしてないのにー」


「ええ。ですが、その無意識下での魔法に対しても、これからは指導させて頂きますからね」


 な、なにを言ってるんだ?


 皆がルーベルの言葉にきょとんとする。


「魔法? ルーベル先生! 俺たちに対して、何か魔法を使われたみたいに聞こえるんですが? リコスがそんなことする訳ありません」


 なんだ? 特に何の違和感もない


 それに、リコスが俺たちに攻撃するなんて、あり得ない。


「シグルド・アトリビュート・リオーネ。なぜ、そう思うのですか?」


「え? いや、何故って、そんなのリコスですよ? あいつがそんな事」


「その信頼はどうやって得たのですか?」


「え? だってリコスですよ? こんな優しい奴が」


「優しいとは、どこを見たのですか?」


「え? 顔とか、声……とか……」


「初対面で?」


 確かに……おかしい……


 俺が……なぜリコスに心を開いているんだ……


「リコシュテット。説明なさい」


「そうだよねー。僕は無意識に好かれるような魔法を使ってるみたいなんだよねー。ごめんねー」


 好かれる魔法?!


 チャームか!?


 それにしては、強力すぎる……


 この指輪がある以上、解毒魔法の効果がある筈なのに……


 範囲攻撃か……? いや認識したからこうなったのなら、リコスの顔や声があるからなのか?


 だが、何よりマズイのは


 リコスに対しての敵意をまったく持てていないことだ。


「でも、そのうち分かると思うんだけどね、チャームの魔法じゃないんだよー。ただ、心を開く魔法みたいなの。だから、僕に対して、なんでも肯定するとかじゃないから安心してねー」


 心を開く?


 そうか、確かにチャームなら、こう言った疑念すら抱くことがないのかもしれない。


「つまり、洗脳系の魔法ではないということか?」


「そうそう。よくて大親友に思ってくれるくらいかな? だから、ダメなことはダメって言えるし、嫌なことに従いたいとかはないから安心して良いよ」


 ……確かに、カルロたちに対して言いたいことはなんでも言い合える。


 誰もが持ってる心の壁を取っ払うみたいな魔法なのか?


「んー、それなら特に害はないんじゃない? あーしは早く仲良くなれたなら、別に構わないけどな」


「そうですね。私も問題ありませんよ」


「僕も! 僕、仲良くなるのに時間がかかるから、むしろ嬉しいよ!」


 そうだな。


 もちろん他に副作用がないのかはきっちり観察させて貰うが。


「ああ、俺も問題ない」


 その言葉を聞いて、リコシュテットは皆に笑顔を向けた。


「あー良かった! これからよろしくー! 良ければみんなの魔法も教えて欲しいなー!」

お読みいただきありがとうございます!

面白いと思ったら、ブックマークやお気に入り登録をしていただけると嬉しいです。

評価★も励みになります!続きもぜひ読んでくださいね。

この物語は日・水・金の19時台に更新します。

次回もお読み頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。