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【1万PV感謝】双極の花紋〜転生しても、君を必ず護ってみせるから〜  作者: 赤嶺 利空
第五章 「学園編」

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第六話 「明と暗」

「では、自身の持てる最高の魔法を、あの的へと放ちなさい」


 的の前に立ち、精神を集中させるシグルド。


 ……大丈夫だ。


 まだ試した訳じゃないけど、きっと俺の魔法が普通じゃないのは生成魔法じゃないからだ。


 あそこにある、他の生徒が作り出した土があるんだ。


 あれを操作すれば、いつもみたいに土魔法が使えるはずだ。


「土を司る精霊ラゴンよ。

我が魔力を糧に

橙に宿りし母なる大地に恵みし礎を以て

幾重もの深き地層に蠢く猛き生命の沸りを

我が敵を引き裂く神槍を顕現せよ!


『ジオ・レンディング・スピア』」


 ——しかし


 橙色の光は、土魔法で生成された土に一切反応を示さない。


 ——だが、何故か、顕現されたバケツ程の土の塊が槍の形を成し


 床から的へと勢いよく上昇した。


 そして、命中と同時に形を崩した土は、ベチャっと音を立て、床に落ちたのだ。


 ——ッッッ!!!


「……な、なん、で……」


 空気が一瞬止まったかと思う程の静けさの後、修練場を揺らすほどの、笑いが起きた。


「あっはっはっはっは」


「何あれ? あれが首席? マナ量だけでは何の意味もないのよ?」


「きっと、修練を怠ったんだわ」


「噂は所詮、噂でしかないのだな。さすがは土属性」


 俺の魔法は……土の操作じゃ……ないのか……?


 ……まったく魔法が使えなかったなら……まだ、少しは理解できる……


 なのに……なんだ……? あそこにある、誰かが生成した土には反応せず……この少量の土だけを……俺が生成出来たっていうのか……?


 ……じゃあ、俺は……普段から、生成魔法を使っていた……?


 ……原因は、他に……ある……のか……?


「……ふざけるなよ」


 俯き、歯を食い縛りながら、一人の生徒が呟いた。


 周りの嘲笑とは違うその声は、何故かシグルドの耳にはよく通った。


 視線を送ると、母の茶会で何度か顔を合わせていた橙の国出身の少年だった。


 確か、お披露目でティナとのダンスを喜んでくれてたな……


「……尊敬してた、のに……なんだよ……あの様(ざま)は……お前、土の神童じゃ……なかったのかよ……!!」


「そうよ! 橙の国を背負ってるんだから! 失敗なんて、許されないんだから!!」


「最ッッッ低ッッッ!!!」


「もう終わりだよ……学園生活……」


 ……なんだ……?


 俺の失敗で……なんで、そこまで?


「ぷぷ、試験前からコイツらとは賭けをしていてな? 俺とお前の国の代表同士、負けた方の国の生徒は在学中に、下僕になるってなぁー!」


「そうよ! ルグニオス様のお陰で、赤の国の勝利だわ! 所詮は土属性なんて、火属性の足元にも及ばないのよ!!」


「そうだぜ! 在学中ずっと下僕になれることを光栄に思うんだな!」


 赤の国出身の生徒たちが口々に罵る。それに対し、橙の国出身の生徒たちは拳を握り、耐えていた。


「な、なんでそんな賭けなんか!!」


「……首席の……あなたなら……負ける筈がないって……」


「……そうよ!! 私たちは、今までの英雄譚を信じただけじゃないの!! ……何負けてんのよ!!」


 ……そうか。


 首席になる程のマナ量があって、今までの俺の功績を耳にしていたから


 必ず勝てると踏んでいた、のか……


 ……確かに試験前の俺でも、誰にも負ける筈なんてないって思ってた……


 けど、こんな賭けなんて……


 在学中にずっと下僕になるなんて……


 ……バカげてるだろう……


 ——その時


 シグルドの肩に、誰かの手がそっと触れた。


「——待って!! 国の代表は私もなんだから、私にも参加権があって当然だよね? 私が、ルグニオスくんが扱えなかった最上級を使えたら、この話は無効にして欲しい」


「待ってくれ! ティナ……少しこっちで話そう」


 少し離れた場所まで移動をし、ティナを説得するシグルド。


「確かにティナは、最上級の神聖力を扱える。だけど、ティナがそんな事をする必要はないんだ」


「ダメだよ……このままだと、シグのせいにされちゃう……そんなの、私が嫌なんだよ!!」


「ティナ……それでも」


「へぇ。聞こえてるぜ? お前、神聖力ばっかりで、風魔法を覚えたてだろう? だけどな、これは魔法の査定なんだ。風魔法で試験を受けないといけないことは、分かってるよな?」


「……分かってる」


「……ティナ!!」


「シグ……大丈夫だよ。カルロの最上級魔法の練習は何度も見てたし、何より、カルロの技も直接見たもの」


「ダメだ! 最上級魔法は、そんな簡単じゃない! 見てたなら、分かってる筈だ!!」


「そう、だね……でも、私、何故か大丈夫な気がするんだよね」


 ティナの澄んだ翡翠色の瞳がエメラルドの様に輝いて見える。


 ……なんだ? こんなに、自信に満ちたティナは、初めて見る……


「見ていて」


 そう言って、歩き出すティナ。


 的へと向かうティナの周りには


 風が、吹いている——


 な、なんだ……?


 風が、ティナへと集まってるみたいだ……


「風を司る精霊アングよ。

緑艶めく神の怒りの息吹たる

鋭利なる刃を以て

全てを斬り伏せる真空を

我が魔力を糧に我が敵を細断せよ!


『ディバイン・テンペスト・ブレード』」


 目掛けた的の周りを中心に、巨大な緑色の光が包み込んだ


 その規模はあまりに大きく


 複数の的を飲み込んだ


「まずい、離れなさい! 風に巻き込まれるぞ!」


 あまりの出来事に、ルーベルが複数の生徒の手を激しく引き、避難をさせた。


 ——その瞬間


 緑の光の中では真空が起こり


 無数のかまいたちが


 全てを切り刻んでいく


 しばらくすると——


 緑の光がなくなると


 そこにあった物は


 全てが、消えていたのだ。


 ルーベルの指示がなければ、生徒複数人が巻き込まれていただろうことは


 皆が瞬時に理解し、心に恐怖を刻んだ。


 それ程までに


 何も、なくなっていたのだ。


 ——直後、くるり、とルグニオスへと向き直るティナ。


「約束、守ってくれるよね?」


「……ヒッ……わ、分かったよ……」


 恐怖を刻まれたルグニオスは、顔面を青ざめ、頷くほか、なかった。


「……ティナ……ありがとう……格好悪い所ばっかりで……ホントに……ごめん」


「シグ? 言ったでしょ? 今はそれで良いって。今は、私に寄りかかってたら良いんだよ」


「ティナは、凄いな。カッコ良すぎるよ」


「あはは、そりゃあ、シグが弱ってるなら、私がカッコ良くないとね? 良いんだよ。いつもは、シグがカッコ良すぎるくらいだもん。たまに、こういうのも良いんじゃない?」


 そう言って、ニッコリ笑うティナに、歓声が上がった。


「聖女様ー!!!」


「す、凄い……ありがとうございます!!」


 安堵し、歓声が上がる中、そんな生徒たちを横目にルグニオスたちは去っていった。


「良いんですか!? ルグニオス様、せっかく」


「……お前はバカか? ……あれは、バケモンだ……敵に回したら……殺されるぞ……まぁ、俺たちが何もしなくても、どうせあいつは——」


 ルーベルが、シグルドの前に現れた。


「シグルド・アトリビュート・リオーネ」


「覚悟は、出来てます」


「……そうですか。何かがあったのは明白です。原因究明も急務ではあります。……ですが、残念ながら、あなたは最下級クラスとなります」

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この物語は日・水・金の19時台に更新します。

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