第二話 「入学式」
「魔力検査の結果から、上級、中級、下級クラスへのクラス分けがなされましたので、各クラスごとに御入場致します」
まだ直接は話したことがないけど、何度見ても歴戦の戦士みたいな出で立ちだな。それなのに、一流の執事みたいに洗練されてる。
確か、ルーベル先生だったか。
この紫がかった青色の髪を堂々と晒して生活が出来てるだけでも、青刈りの脅威をものともしない強さって事なんだろう。
それより、年齢的にも20代後半くらいだし……もしかしなくても、コバルトとは顔見知りだろうな。
そんなシグルドの視線を感じ、ルーベルはシグルドへと薄い笑みを浮かべた。
お、っと、なんだ? 全生徒の視線を浴びてるんだし、俺の視線が気になる訳もないだろうに。
——各クラスに分かれ、入場する一向。
広場の扉が開かれると同時に、楽団の奏でる美しい旋律が鳴り響く。
クラスごとに男女がペアとなり、女子生徒は男子生徒にしっかりとエスコートをされながらの入場は、貴族院としての儀礼となっている。
その為、男女比が統一されていない時は、教職員での代行で穴埋めされている。
元々、10歳の御披露目で一度顔を合わせている為ペアは本人達の自由。
もちろん、同クラスに配属となった者の中に、婚約者がいるのであれば、優先される。
——つまり、シグルドの横に立つのは、もちろんティナだった。
良かった! 同じクラスだ!
魔力検査の結果では、申し分ない評価を受けていたのに、ティナは不安そうにしてたから、俺も少しだけ不安だったけど、ひとまずは安心だな。
まぁ、ここからの魔法の修練度次第でクラスの再編成がされるから、まだ安心は出来ないけど。
共に自国の代表となる色を纏い、現状の最上位クラスである上級クラスを先導する2人が入場する。
——すると、観覧席からは騒めき立つ程の感嘆の声が上がる。
逆に、下級クラスに向けられる、冷ややかで、嘲笑するような空気は、耐えがたいものではあったが。
全員が入場を終えると、壇上に眩い一筋の光が差した。
感嘆の声が湧く中で、光の中から現れたのは白髪に白い瞳の若い男性。
白いローブを纏い、胸許に光る金色の太陽の形のブローチ以外は、真っ白な出立ちだ。
「新入生諸君、我が学園へようこそ。私は学園長のソルード。先日の訃報より、まだ久しいこの時期であっても、我が学舎へと無事新入生諸君を迎え入れられたことを嬉しく思う。この貴族院で、共に学び、友情を育み、支え合って研鑽を重ねて行って貰えることを心より願っている」
おーッ! 派手な演出だったな!
何より、神秘的な人だ。この人が学園長なのか。目も髪も白って事は、もしかすると、光の民なのかな?
しかし、御披露目会の時と同じで、この橙のジャケットに入ってる金色の太陽の刺繍じゃあ、色味が似過ぎて、相変わらずまったく映えないのと違って、あの太陽のブローチは凄い存在感だな。
まぁ、ティナの緑のドレスにも、金の刺繍はちゃんと映えてんだけどね。
ほんと、刺繍部分だけは白地にしてくれたら良いのに。やっぱり不遇のオレンジと土属性は変わらないよな。
歓声が上がり、壇上を後にする学園長を眺めながら、愚痴で頭がいっぱいになるシグルド。
「新入生代表、シグルド・アトリビュート・リオーネ」
おっと、呼ばれたか。
壇上に上がり、ボウ・アンド・スクレープで礼をするシグルド。
それを見た観覧席からは
「あれが、土の神童」
「土のワンカラー」
「橙の国を変えた天才児」
そう、口々に声が上がる。
「本日、栄えある貴族院への入学を許されましたシグルド・アトリビュート・リオーネが新入生を代表し、謹んでご挨拶申し上げます。
このような名誉ある学舎に迎え入れられましたこと、教職員の皆様をはじめ、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
我々新入生は、それぞれ異なる国、家門、そして志を胸に、この場に集いました。長年の風習や、それぞれの立場、想いもあるでしょう。
しかし、ここに集った以上、我々は皆、学びを求める同輩です。互いに切磋琢磨し、己の才を磨き、知識と見識を深めることで、家名に恥じぬ人材へと成長していく所存です。
未熟な身ではございますが、先生方のご指導を賜りながら、日々精進してまいります。
新入生一同を代表し、ここに誓い申し上げます」
「——チッ」
——歓声が上がる直前
一瞬で掻き消されはしたものの、確実にその舌打ちは、鳴り響いた。
ふう。
まぁ、軽視されてる橙の国から新入生の代表が出て、嫌な気持ちになる奴らはやっぱり多いんだろうな。
その光景が壇上からはよく見える。
たぶん、あの口髭を生やした茶髪の男だろうな。
リオーネのみんなや橙の国の貴族たちが殺意剥き出しで睨んでるよ。
まぁ、リンリンや父様母様は、氷のような微笑になってるけど。
……父様。
やっぱり……父様が帝都陥落に加担してるなんて……信じられない……
家族や領民をあれだけ大切にする父様が……
スッ、と家族から視線を逸らし、壇上を後にするシグルド。
席に戻る為歩いていると、ティナの視線に気が付いた。
今にも泣き出しそうな程に
悲しそうに笑うその笑顔が、あまりにも優しくて
溢れる感情をグッと堪え
凛とした笑みを返したのだった。
——その後、自国のスピーチを済ませた一行。壇上にそれぞれの代表3人が並んで礼をする。
現在、四大公国の青の国が滅んだことにより、赤、緑、橙の三大公国となっている為、橙の代表のシグルド、緑の代表のティナ以外に、自国の赤を纏う者が一人いた。
「——チッ」
シグルドの前を横切る時、小さく、だが明らかに敵意ある眼差しで、またしても放たれる舌打ち。
こいつ、この茶髪、さてはさっきの口髭の男の息子か?
確か、ルグニオスだったか。
へー、俺に喧嘩売ってくるなんてな。さすがにイラッと来たぞ。
今の所俺たちと同じ上級クラスみたいだが、修練度の試験で、目にもの見せてやる。
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