↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武龍伝〜貴方の世界を壊した転生者〜 魔法当たり前の世界で、先天的に魔力をあまり持っていなかった転生者、リュカの欲望と破滅への道を描いた伝記録  作者: 世奈川匠
第12章 縁と書いてエン、終焉と読みてハジマリ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

299/309

第三話 酒のことしか頭にない子

 リーゼの言葉を聞いたからか、あるいは各々も思うところがあったのか、イェンエンへの侵攻に関して、その場にいた全員が賛成の立場となった。

 勿論全面的に正しいとは思っていない。特に、レラに関しては元々は自分が住んでいた国を攻めるのであるから反対するかと多くの者は思ったのだが、実は密かにリュカが相談を持ち掛けた折、即決で許可したのだとか。

 そして後に彼女がどのような理由で国を離れたのかを聞いたときには、全員が内心で同意したという。

 ともかく、国の上層部というよりも、リュカの旅で共にすることになった仲間たちへの国襲撃の許可を

貰ったところで、だ。やはり、少女たちには懸念事項があった。

 そう、それは―――。


「うぅ……お酒ぇ……」


 その会議から十数分後、≪何故か≫元イホを代表しての会議への参加を打診されていなかったイトナの次女のセキーヌは一人森の中をさまよっていた。当然、その理由は彼女が呟いた通りである。

 彼女はもはや中毒と言ってもいいほどにお酒への執着を見せていた。禁酒生活一週目で手が震えだし、身体が酒を欲していた。故に、リュカは元イホを代表して彼女が会議に出る事を許可しなかったのである。

 イトナからも、もし生きて国に返すことがあるのならば、セキーヌの大酒のみの癖を治してから返してもらいたいという無理難題を引っ付けられているので、この辺りリュカ他何名かの悩みどころになっている。


「貴方、何をしているの?」


 と、聞いたのはトアだ。同じく元イホに所属しており、彼女の親友のような立場となっており、セキーヌがあまりにもふがいないゆえにイトナの娘達をさておいてイホの代表者となっている。

 そんな彼女は森の中でまるで部屋の中をかさかさと歩き回るソレのように矜持も何もない様子で地面に這いつくばっているセキーヌに呆れていた。まぁ、彼女がそんなことをしている理由なんて一つしかないだろう。


「お酒の材料探してた……」

「で?」

「無かった」

「でしょうね」


 酒を造るには、それなりの材料、そして技術や機械が必要となる。一応魔法を使えれば機械が無くてもいいし、そこまで言えばセキーヌがそれに関連した魔法を覚えていると容易に想像することができるだろう。

 しかし、残念ながらこの森の中にはお酒を造るための材料が全くなかったのである。あるのは木のみやちょっとだけ乱暴な獣くらい。それではお酒を造ることはできなかった。


「なんでこの国芋畑とか穀物とかお米とか、そう言うの作ってないの!?」

「確かに、それは少し問題ね……」


 特に、これからは。

 これが第一の問題。自分たちはこれから戦争に入る。そうなると協定によってニカムリバからの食料の支給が無くなるので、自分たちが籠城戦をしたときに頼りにできる食料が無いという事だ。

 勿論兵糧として幾分かはニカムリバから支給される食糧をため込んでいるそうだ。しかしそれも微々たるもの。リュカの方針で九割が国民に配給、一割を貯蔵しているのだという。

 たったそれだけで兵糧とは言えないだろう。そうトアは思っていたという。


「もし次の戦に勝てたら、畑を作りましょうか」

「勝てたら、ね」


 とセキーヌがやはり獣のように土を掘り起こしながら言った。

 既に国内では自分たちはこれからイェンエンに攻め込むのであると明かされていた。だが、まだ会議から十数分しか経っていないのでその情報が国民に伝わるまでまだまだ時間がかかるだろうと考えられていた。

 一方でセキーヌはマナゴの国攻めが終わった直後、リュカからイェンエンを攻めることを聞いていた。その時のセキーヌの言葉が。


「面白そう、私乗ったよ!!」


 である。

 いや、面白そう何て理由で一つの国攻めに参加するのはどうかと思うのだがそれはさておき。


「貴方は、勝てると思ってる?」

「と、言いますと?」

「分かっているでしょ、イェンエンがどんな国なのか。忘れてるなら」

「覚えてるって、そんな事何度も言われても」


 まるで大人と子供の喧嘩の様だ、と誰かがみたら思うのだろうか。外見的な年齢で見ると、二人の容姿が似通っていることもあって友達、親友であるようにしか見えないが、言葉だけを見るとそう思えてしまうほどに、トアがセキーヌをしかりつけている様子が印象的だった。


「私は、正直勝てないと思ってるわ」


 そう、トアが言った。

 確かにイェンエンは兵士を持たない国だ。だが、一度号令を出せば他国からの援軍が山のように押し寄せる。それに国内での食物の兵糧に関しても、おおよそが国へ対するお布施のような形で食べ物とお金が送られているそうなので、その面で見ても持久戦では不利。

 なにより、だ。トアが二番目にして最大の問題としている物があった。


「一体、どれくらいの兵が逃げるでしょうね?」

「……」


 そう、兵士の士気。これから自分たちが世界最大宗派の本拠地を襲うと聞いて、それがどれだけ恐ろしい物であるのかと、気がつけない兵士ばかりではあるまい。

 自分が上げた国を攻めるうえでの問題点を瞬時に悟り、死ぬかもしれない、奪われるかもしれない、そんなことを考えて逃げ出す兵士が複数名出るであろうこと考えて居たのである。

 相手はその国内情勢から他国からの寄せ集めの軍となる。それは、それはこの国だって同じである。いや、この国の方がまだ悪いのかもしれない。

 なにせ、この国の人間での最年長者がカインの二十五歳なのである。兵士は二十代はおろか十代の人間で半数以上が占められていて、というかこの国の長であるリュカが十七歳、いくら何でも熟練度が低すぎるし、経験値が低すぎる。

 確かにヴァルキリーという特徴を持ち、一騎当千の活躍ができる人間が何人もいるとしても、流石にその程度の優位性をもってかの国を攻め落とすことなんて、できるわけがない。

 故に、彼女は考えるのだ。逃げ出す兵士が十人、いやこの国の住人の半数を超えるという可能性も。

 だが、それと同時にトアにとってはソレが願いだったのかもしれない。それでいいのだと、自分とイホの軍時代から共に戦ってきた仲間の命が軽々しく使われるくらいなら、逃げてくれた方がいいのだと。

 できれば、目の前にいるセキーヌにも逃げてもらいたい物なのだと。

 トアはセキーヌに問うた。


「貴方は、逃げるきはないの?」

「じゃぁ、逆に聞くけど、トアは逃げないの?」

「……」


 逃げるか、逃げないか、か。考えたことはなかったとトアは言う。


「私は、この国の人間だから。もし、リュカに拾ってもらわなかったら今頃ない命……だったかもしれない」


 正直言えばこの辺りは因果関係的にはよく分からない。リュカがいて、諜報部隊のリィナ達にイホの軍にちょっかいを出してくるように指示を出したために、今この国にいるセキーヌ以外のイホの国の人間が軍を追放されるきっかけとなったし、それに彼女たちが助け出さなかったとしても、イトナの考え的には次の戦の時の手柄で免除しようと思っていたそうなので、必ずしもリュカと移動国家ヴァルキリーが彼女たちの命を救ったとはいえない。

 けど―――。


「けど、分からないこそ分かりたい……命のやり取りをする戦場の中で、確かめたいの……」

「それって、破滅願望じゃない?」

「そうとも言う……わね」


 トアははかなげな笑みを浮かべた。確かに、自分の考えはセキーヌの言う様に身の破滅を望んでいる人間のそれと同じなのかもしれない。

 けど、それでいい。元々≪あの時≫に身の破滅を考えていた。もう二度とセキーヌと一緒にはいられないと、同等の関係にはなることができないのだと覚悟していた。だからこそ、リュカや、セキーヌの母であり元上官によって、二人一緒にこの国に仕えれることになって、嬉しいのだ。

 感謝しているのだ。この国に、リュカに。その感謝を口に出すのはいけないことだけど、でも、せめて行動で指し示すことができるのであれば。


「そう言うあなたはどうなのよ、セキーヌ?」


 トアが、まるで恥ずかしげに話を逸らすかのように彼女に聞いた。

 果たして、その後に帰ってきた言葉は。


「イェンエンに酒があるのかすっごく気になる!」

「貴方に聞いた私が馬鹿だったわ」


 本当に、この子の性格を何とかしなければならない。トアは改めて使命感のようなものを感じ取ったとかなんとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。