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武龍伝〜貴方の世界を壊した転生者〜 魔法当たり前の世界で、先天的に魔力をあまり持っていなかった転生者、リュカの欲望と破滅への道を描いた伝記録  作者: 世奈川匠
第11章 絡み合う意図、黒と白の糸

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第四十五話 虚栄と本心

 元王は唖然とした表情を浮かべるだけであった。無理もない、目の前にいるリュカたちが、あの城の中に入ったのを確認したから。間違いなく、あの城の爆発に巻き込まれた、その思い込みが命取りであった。

 カルラレスタはアルベスタに飛びつくように抱き着くと、目に涙を浮かべて訴えた。


「お兄ちゃんの馬鹿! どうして私を助けに来てくれなかったの!!」

「そ、それはリュカさんからこっちに行けって言われて……」

「もう、ずっと待ってたんだから! ずっと、ずっと! なのに私の方から助けに来ることになるなんて!!」

「……ごめん、カルラレスタ」


 まるっきり別人だ。城の中での彼女の行動を知っている人間たちからすれば、そう思うのかもしれない。先ほどまでの彼女が猛々しい獣であるとするのなら、今の彼女は自分の家で飼っている小動物のように優しい[オーラ]を放っている、と言ったところか。

 そんな少女からの言葉に、ただただ謝るしかないアルベスタ。そんな彼に対して、少女はさらに続ける。


「怖かったんだから、あのリュカって人……」

「まぁ、そりゃ本気で戦ってたからねぇ」


 と言いながら頬を掻いたリュカ。その言葉を受けて、レラを含めた多くの人間が嘘をつけ、と心の中で呟いたそうな。


「馬鹿な、何故……あの爆発で生き残れるはず……」


 元王は、ただただその姿を傍観しているだけに過ぎなかった。いや、傍観せざるを得なかったと言うべきだろう。あの城の爆発、自分もみたが、あの灼熱の炎の中で生き残れる人間などいるはずがないと、そう信じている人間からすれば彼女たちの存在は幽霊が亡霊のように思えるのかもしれない。

 しかし、これにはれっきとした種があったのである。


「貴方知らないの?」

「何を、だ?」


 と言ってリュカが取り出したのは一本の木であった。彼女はそれに対して炎魔法を当てながら言う。


「フォトレスの枝は弱火で煙がたくさん出る。で、それが中火になるとゴムになる。そして、それが強火になると……」

「な……」


 最初は、チョロチョロとした火だけで、それが木に当たると小さな煙が立ち始めた。これは、彼女が持っている木が枝のように細い物であるためでもっと太い枝であったのならばさらに大きな煙が立ち込めるのである。イホの軍内部で、リィナが行ったように。

 さらに炎の火力を上げたリュカ。すると、今度は煙を上げていた木がぐにゃりと曲がっていく。そう、ゴムである。これもまた、リィナが使用していたフォトレスの性質の一つ。ニカムリバの人間たちの研究によれば、この程度の火がフォトレスの枝がゴムでいられるかどうかの限界。

 そして、さらに火力を上げると―――。


「鉄になる。これ、ニカムリバの常識らしいよ」


 と言いながら、リュカは鉄となった木の棒を天高く放ると、挑発的な[ウィンク]をした。そう、ソレがフォトレスの木の性質。そして、これが彼女たちが城の爆発から逃れることができた理由であった。元々彼女たちは≪とある理由≫があったためにフォトレスの木を持ち歩いていたのだが、それが幸いした。

 ようは、この話を具体的にする為には、あの燃え盛る城から彼女たちがどうやって逃げだしたのかの以前に、話を遡らざるを得ない。

 実は彼女たちはあの部屋に入った瞬間に勘づいていたのだ。目の前にいる少女が、本物の王ではないと言う事も、そして城の部屋のあちらこちらに魔法の罠が設置されていたことも。知らなかったのは、クラク唯一人であろう。

 だが、ソレがどの系統の魔法の魔法の罠であるのかがまだ分からなかった。火、水、土、様々な候補があったからだ。

 だから、リュカは試しに火の系統の魔法を使用してその罠を攻撃した。これは、魔法の罠にはそれぞれの系統の魔法を当てることによって発動するという性質があると言う物を利用した技術だ。すると、カルラレスタは必死でその攻撃を止めた。その時点で、彼女たちはそれが火系統、炎を巻き上がらせる魔法であることを察した。

 後は簡単だった。リュカの合図で、レラ達がその魔法の罠めがけて大量のフォトレスの木と一緒に火系統の魔法を放つだけ。フォトレスの木は、ゴム状態であればその身体を沈めることが可能であるほどにゴムが敷き詰められている。しかし鉄になればその中身が一気に≪外側≫に向けて収縮して鉄となる。

 リュカたちはその瞬間にカルラレスタの身体を含めて自分たちの周囲に薄い魔力の壁を作ることによってその鉄の球の中に入り込み、爆炎を遮った。後は城が崩れ落ちた後に鉄の球体の壁事地下を掘り進めれば脱出は可能。

 これが、リュカ曰く[マジック]の正体、大脱出の正体である。


「貴様は……」

「初めまして裸の王様。私はリュカ。移動国家ヴァルキリーのお殿様やっているの」


 と、何気なく言葉を返したリュカ。しかし、その顔には間違いなく先ほどまでの元王の男のように油断した物など何一つ存在しない。すぐにでも、臨戦態勢に入れる姿を取っていた。とはいえ、彼女は龍才開花に加えて先ほどの小さな火系統の魔法によってもう魔力量はないに等しいので、ある意味で虚栄であると言えるか。


「あ、あの……私何が起こっているのかよく分からないんですけれど、説明してもらえませんか?」

「はぁ……全く」

「フッ……」


 と言って、レラは呆れながらも、そして鉄仮面はそれこそ彼女らしいと言わんばかりにクラクに諸々の説明をし始める。今回の相手の作戦、リュカたちはカルラレスタに出会った瞬間にすべてを悟っての行動であったため、ちょっとやそっと勘の鋭い者でなければ魔法の罠にすら気がつくことはなかったので、この場合はクラクの方が正常であると言えるだろう。

 と、そんなこんなの事が後ろで起こっている間にも、である。リュカは背後での戦闘音を聞きながらアルベスタに話しかける。


「それにしても、妹さん。いい演技だったよ。女優になれるんじゃないかな?」

「……」


 というと、アレか、とアルベスタは思い浮かべていた。

 彼女、カルラレスタには一つ特技があった。それが、絵本などを読むときにその人物になりきる物である。二人は、ほぼ毎日一緒にいた。その中で、二人ができることと言えば本を読むことだけ、とは以前言ったことかもしれない。だからなのだろう、その唯一の娯楽の中にも二人は少しずつ変わり種を入れて言った。

 その成果が、カルラレスタの魔法による武器であり、そして彼女のその演技力と言ったところなのだろう。いや、どちらとも彼女の元々の才能がなせる業だったのだろう。実際アルベスタもカルラレスタと同じように演技をしながら絵本を読む、という事をしていたはずなのに、彼の方の演技力はあまりにもひどい物だった。

 故に、彼女たちはアルバスタのソレが演技であると簡単に判断することができたし、むしろ彼の演技が下手であったからこそ、彼女の演技が際立っていたのかもしれない。


「そ、そんな。私はただただ必死で……」

「だが、分かりやすかった兄に比べたら大したものだ。もし城の中に他にも兵がいれば、我々とて欺かれていたかもしれん」

「ん?」


 この言葉に、後ろで説明を受けている最中だったクラクも疑問符を浮かべた。確かに、兵はその多くが鉄仮面に倒されていたが、兵士がいなかったと言うわけではない。数多くのソレが城の中にいたはず。

 いや、考えてみると、鉄仮面が倒した後に兵士が出て来ただろうか。あのカルラレスタがいた部屋に着くまでに、兵士に出会っていたか。一人もいない。例え、そこにいたのが偽物であったとしても、何人か兵士を置いておくはずだ。もしも彼女を要らない物とした時でも、城の中に配置されていた兵士に説明がつかない。

 これは、一体どういうことなのか。その答えは、リュカの一言が物語っていた。


「そう、本物の軍人の兵隊さんがね」

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