第6話 ダンジョンです。
「──あ、ジーク。言い忘れていたが、明日はダンジョンに行くからな」
「……へ?」
──いつも通り、家族のみんなで晩御飯を食べていると、いち早く食べ終わった父さんが食器を片付けながら、俺にそう言った。
・・・いや、ちょっと待って? いきなり過ぎない? 話の脈絡というか、前後の流れを一切無視して、唐突に?
本当についさっきまでキャロ姉が中庭で魔力を暴走させて周囲2~3mを爆破させたって話をしてたのに……改めて思うとキャロ姉何してるの? ちょっと危ないよ?
とりあえず父さんに一つ聞かせてもらう。
「なんで今?」
「ああ、ジークに話すタイミングを見計らっていたらすっかり忘れていてな。すまない。
・・・もしかしてダンジョンは嫌か?」
「いや、それは別にいいんだけどさ……そろそろダンジョンとかにも行ってみたかったところだし、俺の力がダンジョンの魔物相手にどこまで通用するかも調べたかったからさ」
だけど本当にいきなりすぎるでしょ……せめて前日にじゃなくて、一週間くらい前には一言言っておいて欲しかったな!
……まぁでも今言った通りどのくらいの相手に通用するかとかも知りたかったし、タイミング的にはちょうど良かったんだけどさ。
「おぉ、そうかっ。なら予定通りに明日、早速ダンジョンに向かうっ! ……あぁ武器やら道具やらの準備はもう父さんたちの方で済ませてあるからなっ。今日はもう明日に備え、早いところ眠るとしようか!」
「へーい」
・・・いや待て。既に準備は済ませてるって俺が断ったらどうするつもりだったんだ?
それよりその用意した荷物系はどこに置いてたんだ? さっきまでそれらしいもの見なかったけど?
あ、ってことはいつも通り母さんの影の中か。……今更だけど母さんのアレって容量どのくらいあんだろ? まさか無限なのかね?
……まぁ今日のところは父さんの言う通り寝る準備をさっさと済ませて早いところ眠るとしようかね。それじゃあ就寝ッ!
◇◆◇◆◇
そして翌日だ。
今日の空模様も清々しいほどに快晴で、春の暖かな風が頬をくすぐり、心身共に実に心地がいい。空気もいくらか美味しく感じる。
……などといった感想は置いといて現在の状況だが、この前のカニ討伐の時と同じく、馬車に乗ってダンジョンへと運ばれている。
ちなみに今回のメンバーは俺、父さん、母さん、マリナ達の計5人だ。オズ兄とキャロ姉は学校のため、今日は来てない。
……キャロ姉がものすごい残念がってたのが頭に残ってる。
とりあえず、つくまでの間にダンジョンについて、説明をしようと思う。
まずそもそもの話、ダンジョンがどういったものなのか だが、そこら辺はよくあるファンタジー小説とだいたい同じ感じだ。
大きな入口みたいのがあって、中に入ると洞窟や森林、海や平原、はたまた館といった空間に出される。
んでその中には多種多様なモンスターがいて宝箱とかもあり、その宝箱からは武器や防具、道具などのアイテムが出てくる。
下層に潜るか上層に登るかはダンジョンによって変わるが、大体は奥に進めば進むほどモンスターが強くなって、宝箱もいいやつが出やすくなる。
最奥にはダンジョンの稼動装置、通称ダンジョンコアがあって、これを壊すとモンスターや宝箱を生み出す機能が停止する。なお、壊してもダンジョンが崩れるわけじゃない。
ダンジョンが生み出したモンスターは通常の魔物と違って、倒したらダンジョンに吸収されて消えてしまう。
だが何も残らない訳ではなく、モンスターの代わりにそのモンスター関連の素材とか武器とかのアイテムがドロップする。
……うん、小説でよくあるやつだな。
なお、このドロップ率は戦闘の功績問わず、運……つまり、ゲームとかのステータスで言うLUCってのが関係してくる。
・・・そういえば俺、たしか運気も称号で底上げされてたよな。……もしかしてこれ、超激レアを引き当てるフラグか?
まぁとりあえず、基本的なダンジョンについてはそれくらいだな。
次に今回行くダンジョンについての説明だが、ダンジョン名は【世界樹の悪夢】っていって、これまたダンジョンの中でも上位のやつだ。ランクで表すとAランクくらい。
んでこの【世界樹の悪夢】ではそこら中にトレント系のモンスターがいて、しかもそのトレントの森の中にも狼とか猪とかの動物系モンスターが跋扈しているらしい。
一応、人型モンスターとしてゴブリン系統のやつもいるようだが、人型モンスターはこいつだけで、オークとかコボルト、オーガみたいのはいないみたいだ。
なお、モンスターの平均クラスは全体から見てC~Bクラス程度だが、一番強い奴ともなるとAクラスにまで上がるみたいだ。
・・・はぁ、なんでうちの親は子供の初ダンジョンでわざわざこんな高いやつを選ぶのかなぁ? まぁ俺の強さを知ってるから信頼してのことなんだろうけども……。
でも、普通ならもう少し手加減するもんでしょう? はぁ……
──と、俺が内心ため息をついていると、馬車が少し強く揺れた。・・・どうやら、停車したようだ。
「ん、ついたか?」
『みたいなのです~やっと着いたのです~』
『ジーク、揺れ……大丈夫、だった?』
「あぁ、耐えられないほどじゃなかったな。移動中の揺れもこの前のに比べて比較的安定してたし、今回の御者は当たりだったな」
『そうなのですか~? よかったのです~』
「ふふっ。ジークちゃんが平気そうで良かったわ。それに、確かに今回の揺れはいつもに比べてかなり安定していたわね♪」
「そうだなっと……では私は支払いをしておくから、皆は先に降りておいてくれ」
「はーい」
父さんに軽く返事をして、母さんやマリナ達と一緒に馬車をおりる。少しして父さんが支払い終わると、父さんも降りてくる。
そしてみんなで軽く手首とか足首を回したり、腰とか肩を鳴らして、体を慣らす。
「──よしっ。では早速中に入るぞっ!」
「「おぉー」」
『お~なのです~』
『おー……』
──そして、俺の初めてのダンジョン探索が開始された。
◇◆◇◆◇
──ダンジョンの中に入って早速辺りを見渡してみると、鬱蒼とした大自然が広がっており、早々に魔物の気配を感知する。
しかし、その感知する魔物の気配は、どれもが〝1階層目でいきなり現れるか?〟という強い気配のものばかりだった。
……それで、ちょっと気になって父さんたちに話を聞いてみた感じ、どうやらここは61階層目のようだ。
・・・ふぅ。一応わかってると思うが、ハッキリと宣言しておくぞ。俺はここまでの戦闘をカットしたわけでも、1~60階層の記憶が飛んでいるわけでも無い。
本当の本当に最初から、60階層以前の階層を飛ばして、いきなりここなのだ。
・・・まぁ一応、何故こうなってしまったは何となくわかっている。
実はさっき説明していなかったんだけど、ダンジョンには今まで来たことがある階層に、自由に転移できる機能があるのだ。
父さん達は既に一度ここを完全に攻略しているらしく、最上層(※80層らしい)まで自在に転移できるとのこと。
それを使って61階層目、つまり終盤に差し掛かったところまで転移したらしい。
・・・ちなみになんでさっきこの機能を説明しなかったのかと言うと、使わないと思っていたからだ。
普通、初ダンジョン攻略でAランクってだけでヤバいのに、それのさらに先に行くなんて……まず考えないだろう?
……とりあえず、いつも通り父さんたちに一言。『何してんの?』『馬鹿なの?』『死ぬの?』……あっこれじゃ三言だね! アッハッハッハッハッ…………はぁ。
……まぁ父さん達のこれも今更だな。一先ず『気配感知』にて魔物が近づいてきたのがわかったから、さっさと気持ち切り替えて戦闘シーンに場面移動だ。
「父さんっモンスターの集団が近づいてるっぽい。数は5……いや6匹。1匹がもう1匹と重なってるんだけど……なにしてんだ?」
「おぉっさすがジークだっ。この距離からでも感知できるとはな! しかも個体個体の判別もできているようだし……ジークは斥候としての能力も持っているんだなっ」
「うーん、5~6匹の集団ってことは、多分ゴブリンかしらね? それに重なってるのは……ゴブリンライダーかしら?」
「ゴブリンライダー?」
なんだそれ? ライダー……ってことは他の動物か何かに騎乗してるってことか?
ってか名前にライダーがつくと、なんかどっかのヒーローを思い出すな。
『ゴブリンライダー、は……狼とかの、動物に乗ってる……ゴブリン。ゴブリン自体は、それほど強くない。……けど、乗ってる動物によって……強さが、変わる』
ほぉ。やっぱり騎乗系モンスターなのか。
……でも乗ってるやつによって強さが変わるなんて、なんか変な感じだな。
っと、そろそろ相手さんのお出ましだな。
「お、見えた。……おぉ、本当に魔物に乗ってるんだな。それと今回は狼なのか」
……んー見た感じ、鎧とか剣とか盾を装備してるゴブリンが3匹、厳つい杖と黒いローブを装備してるゴブリンが1匹。
あと今言った狼に乗ってるゴブリンと緑色の狼の計6匹。うん、さっき調べた通りか。
「うむ。だがアレもただの狼ではないぞ? あの狼もウインドウルフという、狼の魔物だ。
そこにナイトが3体に、ウィザードが1体いる。……しかも全てCクラスの魔物だ」
『ゴブリンライダーさんも~乗っている動物さんがウインドウルフさんだと~それなりの強さになってますかね~?』
「んーなるほど」
まぁとりあえず、早速戦闘開始かな? 相手さんもグギャグギャ言いながらこっちに武器向けてきてるし。
>スキル《乗馬Ⅰ》《森生活Ⅰ》を獲得しました。
と、戦闘に入る前にスキルゲットしたわ。
……ん、あれ? 『乗馬』? ・・・『運転』とは違うやつ扱いなのか?
──ダンッ!!
「グギャッギャ!」
わっとと。余計な事考えてたらゴブリンナイトの攻撃がかすりそうになっちゃった。ふぅ危ない危ない。ちゃんと集中しないとっ。
えーと、まずは後々邪魔になるだろうし、後衛から潰していくか。
『韋駄天』『瞬間移動』『身体操作』を使って超高速でゴブリンウィザードの後ろへ移動して、『蹴脚聖術』『総合武術』『怪力無双』諸々を使用して、ゴブリンウィザードの首へと蹴りをかます。
──……ヴォンッ! ボトンッ。ボトンッ。
音が遅れて通り過ぎ、ゴブリンウィザードの首が吹っ飛んで、その正面にいたゴブリンナイトにも衝撃波が撃ち込まれ、ウィザード諸共地面へと崩れ落ちた。
>スキル《連携Ⅰ》《迷宮補正Ⅰ》を獲得しました。
>スキル熟練度が一定に達しました。スキル《狩り》《殺生》《弱点看破》《蹴脚聖術》《魔物特攻》《敵対特攻》のランクが上昇しました。
>スキル《弱点看破》のランクが上限に達しました。
>進化条件を達成。スキル《弱点看破Ⅹ》が《急所攻撃Ⅰ》に進化しました。
・・・ふうっ。やっぱり圧勝だったぜ☆ さてそれじゃあ他のやつ……も……?
「おぉっ。ジークの方も倒し終わったのか! さすが早いなっ!」
「そうねぇ。うふふ」
『・・・ママさんパパさん凄まじいのです』
『……追いつけ、なかった……』
──残党を倒そうと振り向いた先には、何故か落ち込みながら困惑してる精霊二人と、清々しい顔立ちの父さんたちがいた。
そして父さんたちの近くでは、縦に引き裂かれてるゴブリンや、頭をナイフか何かに貫通されたようなゴブリン達の亡骸があった。
……何度も言うけどさ。やっぱり俺だけじゃなくて父さん達も普通に化け物じゃん。
まぁさすがにもう慣れたから何も言わないけどさ。・・・でも改めて見ると本当に化け物感実感するなぁ。
さて、そんなことよりも。初のアイテムドロップはどうなっているかなっと……。
──今しがた倒したゴブリン達を見ると、既に粒子状態になってダンジョンに吸収されており、ゴブリン達がいた場所には目玉や牙、紫色の石や剣や杖などが転がっていた。
>スキル《幸運Ⅰ》を獲得しました。
>スキル熟練度が一定に達しました。スキル《幸運》のランクが上昇しました。
あ、また新規スキル……『幸運』か。……んー能力を見た感じ、多分『瞬間移動』とか『怪力無双』とかと同じ分類かな?
となると進化系は多分、運気の成長値を上げるスキルか。・・・強くない?
まぁ、今はそれよりもドロップ品のことなんだけど……ゴブリン達のドロップアイテムは目玉と牙、あと紫の石と武器なのか。
・・・うーん目玉がギョロってしてて、実に気持ち悪いねっ! それと牙は……あ、あれドロップ位置とかから見るに、多分ゴブリンじゃなくてウインドウルフのやつだな。
あと紫の石は……多分魔石ってやつかな? 俺も詳しいことはよくわからないけど、魔道具の電池的な役割を持つやつだったっけ。
んで最後に武器の方は・・・小鬼騎士の剣ってのと小鬼魔導師の杖ってやつか。
名前から察するに、さっき俺が倒したゴブリンナイトとゴブリンウィザードが落としたやつだろう。場所的にもそうっぽいし。
「あら、ジークちゃん早速良いアイテムがドロップしたわね? 最初から武器ドロップなんて、幸先がいいわっ」
「え? これ、レアドロップなの?」
「んー。レアとはちょっと違うかしら。でも普通のドロップの中では中々良い部類よ?」
「そうなんだ……」
・・・あ、アイテムの効果見たら威力上昇と耐久上昇ついてる。……え、マジで結構いいやつなん?
「とりあえず俺は持てないし、母さんの影の中とかに入れておいてくれる?」
「あら、それならジークちゃんにはこれを渡しとくわ。この中に入れておきなさい」
母さんはそう言いながら、影の中から一つのリュックを取り出す。ちょうど、俺が背負える大きさの小さいリュックだ。
「これは?」
「これは〝空間収納〟の効果が付与されたリュックよ。この中には無限とまでは行かないけど、かなりの量を入れられるの。
元々あげる予定だったし今渡しておくわ」
「えっ、本当? ありがとうっ。それじゃあ次からこの中に入れるようにするね」
俺はアイテムボックスを貰って年相応に喜んでいるように、見せる。
・・・たまにこういう風に幼児らしく喜んでおかないと、変な勘違いされそうだしな。
とりあえずさっきドロップした剣と杖はアイテムボックスに入れて、早速背負ってみると……うん。思った通り重さは感じない。
・・・多分だけど、普通に買ったら結構いい値段するやつじゃないかな?
まぁいいや。さて! それじゃあ気を取り直して、さっさと先に進むとしますかねっと!




