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転生者は異常な程に成長しました。 〜自重?そこら辺に投げ捨てたわ〜  作者: 冬桜 ライト
◇第二章 戦闘訓練ですか?
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第5話 貨幣とカニです。



 ──グレン達との初訓練から早くも2ヶ月が経過し、俺は現在、ガタガタという振動に揺られながら、家族のみんなと一緒に馬車に乗っていた。


 ……でもまぁ、やはりというかなんというか。時代が時代なために、スプリングだとかサスペンションだとかがないらしく、馬車の揺れはかなり酷い。大きく揺れた際に、俺の体が軽く浮いてしまうほどだ。

 ・・・揺れが酷すぎて、『振動耐性』とかいうのをゲットしてしまった。



「──ジークちゃん大丈夫? 腰痛くない?」

「ん。揺れても痛くならないようにするコツ掴めたから、もう平気っぽい」

「ジークはもう慣れたんだね・・・僕も何度か乗ってるはいるけど、まだまだ慣れるには無理そうかな。ちょっと腰が痛いね」

「そうなの……あともうちょっとだから我慢してね? オズも、もうちょっとの辛抱よ」

「はーい」

「うん」


 と、母さん達と今日何度目かの同じような問答を繰り返して、また父さんとの雑談に戻っていく。

 ・・・あ、俺の口調についてだが、あの訓練の時に言っていた通り、ぶりっ子と猫かぶり……もとい、幼児のフリをやめた。


 最初は父さん達になんかツッコまれるかとも思ったんだが、これが俺の素とわかるとすぐにいつも通りの反応をしてくれた。

 ・・・うん、改めて思うけどマジでこの家族に生まれてよかったな。何もかもが平和だし。



 まぁでも今そんな話は置いといて。とりあえず俺らの現状について説明をしよう。


 俺の方はさっき言っていたように馬車の揺れが酷すぎるため、ただ座るだけじゃ危険ってことで母さんの膝上で抱きかかえられた状態で座っている。

 ・・・うん。正直少し恥ずかしいけどまだ子供だし、体も軽いため、そこは致し方ないと諦めている。


 あと一応次に座席の位置だけど、父さんと母さんが向かい合うように座って、オズ兄が母さんの横に、キャロ姉が父さんの横に座っているって感じだな。


 と言ったところで、父さんが小さな声でなにやら呟く。


「ふむ、そろそろ見えてくるはずなんだが」

「……あら、あれじゃないかしら? ほらっ、みんなも見える?」


 母さんが外を指さしてそういうので、俺は母さんに釣られて、馬車の外見てみた。


「・・・お、ホントだっ。見えたっ! ……うぉーすごい絶景っ!めっちゃ綺麗っ!」

「あ、あたしも見るのだっ! ……おぉっ、本当なのだっ! すごく大きくて綺麗なのだ!」

「キャロっ、ちょっと声でかすぎ。……でも確かに、キラキラしててすごく綺麗だねっ」


 俺、オズ兄、キャロ姉の三人は馬車の中から見える──大海原の景色に目を奪われて、皆で同じような反応をしてしまう。

 既にここまで潮の匂いが舞い込んできて、やっと海についたのだと実感する。


「はっはっはっ! オズもキャロもジークも、海に見蕩れるのは構わないが、ここで遊ぶのは依頼を終わらせてからだぞー?」


 海に目を奪われていた俺たちに、父さんが笑いながらそう告げた。


 と、そうそう。そういや何故馬車に揺られてこんなところ()まで来てるかの説明を忘れてたな。・・・まぁ今の父さんの言葉で何となくわかるだろうが、軽く説明をしておこうか。


 まず今回俺らが海に来た理由は、簡単に言えば父さんが受けた討伐依頼の付き添いだ。だが付き添いと言っても、別に相手が強すぎるとか父さんじゃ相性が悪いから呼んだとか、そんなわけではない。

 むしろ相性的には父さんが十分余裕を持って倒せるくらいの相手だ。そこに母さんとか足したら……過剰戦力どころではない。


 それじゃあなんで俺らを呼んだのかと言うと……まぁただ単純に、久しぶりの海側の依頼だったから俺らも誘って旅行気分を味わいたかった、ってだけらしい。

 ……さっすが冒険者最上位ランク様は考えることが違うねぇ。普通の人だと、危ないから絶対に近づくなとか子供に言うところなのに。そんな所をリゾート気分か。


 まぁそこら辺も慢心とかじゃなくて、父さん達の実力から来るものなんだろう。さっきも言ったけど、実際にS級冒険者だしね。



 ──そして馬車がある程度進んで海岸付近までやって来ると、そこで馬車が止まった。……どうやらここまでのようだ。

 御者の方から、俺らに声がかかる。


「お客さん、ここから先は相手さんも気づいちまう。とりあえずここら辺でいいか?」

「そうか、了解した。ここまで乗せてくれて感謝する。お代はいくら払えばいい?」

「へい。距離的にはそんなに進んだって訳でもねぇし、最近話題の魔物がいる危険なところとはいえ、最後まで運べなかったことを考えると……大体72(ギル)くらいでぃ」


 父さんが御者とそうやりとりすると、手持ちの巾着袋(財布)から銀貨を一枚取り出して、御者に手渡した。

 御者がお釣りを渡そうとすると、父さんは釣りはいらないと応え、御者は威勢よく返事をする。そして、みんなが降りたタイミングで馬車を引いて来た道を戻っていった。



 ──と、本題に入る前に今更ながらこの国の貨幣について軽く説明しておこう。

 まずこの(ギル)って言うのだが、普通にお金の単位として考えてくれていい。()とか(ドル)とかと同じ感じだ。


 硬貨の種類は下から、〝銅貨〟〝大銅貨〟〝銀貨〟〝大銀貨〟〝金貨〟〝大金貨〟〝聖銀貨〟〝聖金貨〟〝神煌貨〟の計9種類となっている。


 お金の単位としては1、10、100って感じに大体十進法で上がっていって、〝聖銀貨〟からは百万がいきなり一億って感じに、百進法で上がっていく。

 ちなみにだが、円換算すると、1(ギル)が大体10円前後ってところだ。


 わかりやすくさっきのやつで表すと、御者が辻馬車(タクシー)代として720円を提示したが、父さんはそれを1000円渡し、釣りを受け取らなかった、って感じだ。


 まぁ簡単に貨幣についての説明が終わったところで、話を戻そうか。



 とりあえず馬車をおりた俺らは、そのまま海岸に向かって進み始める。……この移動の間に、馬車の疲れとかを癒しておく。



 そしてある程度あゆみ進んだところで、キャロ姉が一言呟く。


「そういえば今日はなんで海に来たのだ?」

「……父さんが受けた討伐依頼の付き添いだよ。討伐対象はキングジュエルクラブっていう硬い甲羅に包まれたカニの魔物」

「へーそうなのだ……む? オズはなんでそんなこと知っているのだ?」

「・・・はぁー。やっぱり話聞いてなかったんだね。……さっき、父さんが馬車の中であらかた説明してたからね?

 もしかしたら忘れてるかもなんて思ってたけどまさか聞いてもなかったなんてね……」


 そこまで言うと、オズ兄がまた大きくため息を吐く。普通なら完全に嫌味に取られるようなそんな仕草を前にキャロ姉は……


「ふーん……そんなことよりそのカニって魔物は美味しいのだ?」

「ねぇ『そんなことより』で流さないで? ちゃんと話聞いて? 多分美味しいだろうけど」


 全くきいていなかった。・・・あと話をスルーされたのにちゃんと答えるあたり、オズ兄やっぱり律儀だと思う。


「・・・もうキャロには何を言ってもダメなのかなぁ。いっその事諦めた方が……?」


 オズ兄、本当に疲れてんだなぁ。目を見てわかるわ。・・・たしかこの前ステータス覗いた時、オズ兄の『疲労耐性』がⅥに上がってたし……うん、マジで大丈夫?



 ──俺がオズ兄に同情していると、前を歩いていた父さんが、突如声を上げた。


「おっ。みんな、早速見つけたぞっ。……ふむ、あれはジュエルクラブか」


 父さんが指さした方向には、5~6mくらいのでっかいカニがいた。色はややキラキラしてる赤で、ハサミは両方とも体の半分くらいはある大きさだ。そして、それがそこら辺に20匹ほどいる。……いや、多くね?


「おーでけぇ。……でもキングがついてないってことは、狙ってたやつじゃないの?」

「うむ。あのジュエルクラブというのは、キングジュエルクラブ下位種だ。大きさも強さも、キングに比べると低いな」

「ほへぇー。キングジュエルクラブはあれよりもでっかいのかー。……ん、よく見ると遠くにも少し大きいカニがいない?」

「お、ジークも見えるか。それはアーマークラブだ。ジュエルクラブの下位種だな」


 アーマークラブは3~4m程度の大きさで、色はジュエルに比べると黒っぽい感じがするな。なんというか、血の色?


 んー聞いてる感じ、アーマー、ジュエル、キングジュエルの順で強さが上がっていくのかな? ……うん、確かに全部名前が硬くて強そうな感じがするな。

 ・・・まぁ正直、アーマーの方がジュエルよりも強そうって思ったのは内緒だ。


「ちなみにどれが一番おいしい?」

「ふむ、そうだな……一番はやはりキングジュエルだろう。味や香りもさることながら、中身の密度が凄まじく、かと言って味に偏りがあるわけでもない。全体的に味がしっかりと引き締まっていて、とてつもなく美味い」

「・・・そんなに美味しいんだ」

「あぁ。是非ともジーク達に食わしてやりたいほどだ。……まぁ今回の討伐対象がそれだから、実際にそうするつもりだけどな」

「おぉー。俄然やる気が湧いてきたーっ」

「はははっ。やはりジークも食べるの好きかっ! うむっ、いい子だっ! ……だが、まずはその相手を見つけてから、だな」


 それじゃあ張り切って探そうか!──と思った瞬間、何やらとてつもなくでかいものがこちらに近づくような振動を感知した。


──ッ……



「──む、なんなのだ?」


 その微かな振動に、俺に次いでキャロ姉が気づく。・・・キャロ姉のその野生動物並みの感覚ってなんなの?


「ジーク? キャロ? どうかしたのかな?」

「何かが近づいてくる振動を感じたのだっ」

「うん、右に同じく。多分、結構近い」


 俺もキャロ姉と一緒に、その微かな振動について知らせる。



──ザザッ……


「あら、本当ね。私も今感じとれたわ……本当に近くの方みたいね・・・でも、近くの見えるところにそんな大きな魔物なんか……」


 ・・・うーん。なんだろう? 近くにいる魔物といったら……アーマークラブとかジュエルクラブとかがいるが、音的にはアイツらよりも大きい感じなんだよなぁ。

 まぁだとすると、多分今回狙いのキングジュエルクラブなんだろうけど・・・でも近くにいるのに見えないってどういうこと?


 ……んん? 近くにいるのに見えない? ……でも振動が伝わる……そして相手はカニ。

 ……たしか、カニの種類の中には巣に潜むもの以外にも、土の中に潜む者がいたはず。


 っとなると、この振動の発振地は──



──ザバァッ!!


 ──俺が予想を立て終わると同時、その予想が正解かと言うように、地面の土の中からカニが飛んででてきた。


「シュアァァァァ!!!!」


 そして、一番近くにいた父さんをハサミで押し潰そうとしてきた。──が、



──ガシッ


「お、やっと相手さんのお出ましか。ほらジーク、わかるかい? これがキングジュエルクラブといって、Sクラスの魔物だ。この宝石みたいに赤くて硬い甲羅が特徴で、大体の物理攻撃や魔法攻撃に耐性を持っているんだ」


 父さんが軽く受け止めて、この魔物についての説明をしだした。

 ・・・いやいやいやいや。ちょっと待って何災害級の魔物の攻撃を軽々しく受け止めてくれちゃってるの?


 え、Sクラスってアレだよね? たしか、前見た説明で『Aランクの冒険者でも無傷じゃすまない』とか『見たら逃げるか知らせるが吉』とか書かれてた歩く災害のことだよね?


 なにそれを簡単に受け止めちゃってるの? いや、さすがに負けることは無いとか、ある程度善戦するんだろうなとは思ってたよ? でも何? この赤子の手を捻ってるような図。


「シュア?」


 相手さんも困惑してるよ? 『アレ?』ってなってるよ?


「ちなみにどのくらい硬いかと言うとだな」


 父さんがそう言いながら、手に持った剣を4回ほど振りかざす。



──ガッ、ザキンッ! ガッ、ザギンッ!


「父さんが4回も剣を刺さないと、貫通できないほどだ」


 ・・・いやいやいや。どう考えてもおかしい。おかしいって。多分、他の人だと、貫通するどころか傷つけるのも無理でしょっ?!


「だが、貫通さえできてしまえば……『汝は燃ゆる、業火なり。今一度、灼熱持ちいて顕現せよ。〝烈火焔剣(フレイムソード)〟』」


「シュルァァァ?!」


 父さんが剣に炎を灯らせると、剣が突き刺さっているカニに、その炎が燃え移る。しかし、その炎は何故かカニを焦がさず、ただただ勢いよく燃え上がる。

 そして、そのまま数分経つと……



「シュル、ルァ……ァ」


 焦げひとつないが、いい感じに熱された、まるで茹でられたようなカニがそこにいた。


 ・・・なるほどー。みんなが俺に感じる感覚ってこんなやつなのかー。……俺もみんなと同じで諦めるしかないな。うん。


「これでおしまいだ。な? 簡単だろう?」

「──あ、うん。何はともあれ、これで依頼達成だね! あと食料確保もっ」

「うむっそうだなっ。……恐らく、ジークもいつかはこのくらいは余裕でできるようになるだろうっ」


 ・・・うん? アレ? ……今思ったんだけど、そういえば俺ってスキル系が全体的に父さん以上なんだよね? それに前に比べてだいぶ力もついてきたし、レベルも同じくらいだし……。

 父さんが使ってた技も基本的に大体使えるし……もしかしてだけど、俺ってもう既に父さん以上にやべぇんじゃね?


「さて、それよりも……これを食す前に、まずは他のジュエルやアーマーなどの残党をどうにかしないとだな」

「パパ! あたし残党狩りしたいのだ!」

「・・・僕もちょっとやりたいかな? ……ストレス発散に」

「あら? こういう荒事をオズがやるなんて珍しいわねぇ。なら私もやろうかしら?」


 っと、俺が地味に落ち込んでいる間に、父さんたちが残党狩りをする流れになってたみたいだ……よしここは俺も一肌脱ぐか。


「なら俺もやるー」

「ふむ……よし。ならみんなで残党狩りをしようか! 各自、怪我のないよう始めてくれ」


 父さんがそう言うやいなや、キャロ姉が全速力でカニ達を倒しに回った。……はっや。


「あはははっ! ははっ! はははっ!」


 ・・・しかも笑いながら倒してるし……やっぱりキャロ姉は戦闘狂だったんだね。さすが称号に出るだけはあるな。


「それじゃあ僕達もぼちぼちと倒しに行こうか。キャロもみんなのことを考えてか、遠くの方から倒していってるみたいだし」


 え? 嘘っ……あ、本当だ。気づかなかったけど、マジで遠くの方から殺ってる……。

 ……そんな行動を難なくやるキャロ姉もすごいけど、オズ兄もよく気づいたねぇ。


「……よし、んじゃ俺も狩っていくか」


 とりあえず父さんや母さん、みんなの技を真似して、楽々倒していった。



◇◆◇◆◇


〜後日談〜



>スキル《狩りⅠ》《強靭Ⅰ》《殺生Ⅰ》《魔物特攻Ⅰ》《釣りⅠ》《水泳術Ⅰ》を獲得しました。

>新たに称号『クラブキラー』を獲得しました。


 ──結局あの後、ある程度まで倒したと思ったら、なぜかシェルクラブっていう下位種の増援が来やがって、最終的に百匹近い大討伐劇となってしまった。

 まぁ大変ではあったが、全部倒し終わった後は十分海を満喫できたし、食料が潤ったと考えれば収穫はあったかな。

 それにジュエルやアーマー系のカニも、キングジュエルまでとはいかずとも普通に美味しかったしな。


 あ、ちなみに今回お留守番だったマリナ達も、キングジュエルクラブの残留魔力を食べられて、元気いっぱいのニコニコ笑顔になった。


 まぁこういうのもまたいいかもな──


次回更新は3日後です。次々回は6日後の予定です

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